【伝蔵荘日誌】

2008年12月11日: 麻生内閣の支持率 T.G.

 7日付の読売新聞によれば、麻生内閣の支持率が先月の世論調査に比べて半減の21%に下落したという。 支持しない理由は「政策に期待できない」32%、「首相に指導力がない」29%(前回9%)、「首相に安定感がない」25%(同13%)となっており、有権者が首相の資質に失望したことが大きな要因だと言う。 しかしこれはおかしい。 麻生内閣の掲げた政策がこの1ヶ月で変質したわけではない。 期待出来ないというなら、発足当時の高支持率は何だったのか。 唯一定額給付金の迷走問題があるが、そもそもこの政策−(政策と言えないほどひどいものではあるが)−は麻生総理の政策ではなく公明党が押しつけたものだ。

 公明党は年内総選挙を見込んで臨戦態勢を弾き、選挙対策の目玉に来年限りの2兆円減税を麻生総理に迫った。 こんないい加減なばらまき減税案を自らが会社経営者でもある麻生総理が飲めるはずがなかったが、太田代表は、「飲まなかったら選挙協力はしない」と恫喝した。 協力しないと言うことは次期総選挙で間接的に民主党に塩を送ると言うことだ。 もしかすると民主党へ寝返ると脅したのかもしれない。 公明党のレゾンデートルは政権内にいることだから、その可能性は多分にある。 もうこうなると政治理念もへったくれもない、ヤクザの世界である。 それでは惨敗することは分かっているから麻生氏は渋々飲んだ。 その後、いろいろな連中が寄ってたかって、減税ではなく給付金にしろとか、所得制限を設けろとか、いじくり廻した。 いじくり廻して麻生氏の指導力不足を演出したのは役人だろう。 役人どもは安部、福田を潰したときと同じ面従腹背で麻生イジメをしている。 こちらはヤクザではなくヌエだ。 その馬鹿騒ぎの最中、麻生総理が指導力を発揮しなかったとマスコミは煽るが、それはいささか見当違いではないか。 いやいややっているものを、ああしろこうしろと“指導力を発揮”出来るわけが無い。 麻生氏は、文句があるなら太田に言えと、喉まで出かかっているだろう。 そもそもは公明党のヤクザまがいのごり押しから始まった話なのだ。 マスコミはこの給付金を無駄金、愚策とケチを付け、麻生の失政とさかんに国民を煽るが、それならそもそもの言い出しっぺである公明党をやり玉に挙げて非難すべきだ。 彼らがこの件に関して公明党を批判した記事を読んだことがない。 公明党と創価学会がよほど怖いのだろう。 卑怯な連中だ。

 マスコミは、麻生内閣は末期的症状で、自民党内部からも造反者が出はじめ、明日にでも解散総選挙、と盛んに煽る。 8日付の隠しの見出しは、内閣支持22%」「麻生政権2カ月で急降下」(朝日)、「麻生内閣支持 激減21%」「失言、政策迷走で」(毎日)、 「内閣支持半減21%」「首相適任 小沢氏が逆転」(読売)ともうくそみそである。 同じ読売新聞の世論調査は、「民主に一度政権を取らせてもいい」が65%に達し、先月より7ポイント増えたという。 いったいこういう調査に意味があるのだろうか。 読売が麻生内閣の政策をきちんと批判した記事を読んだことがない。 国民が麻生総理の政策を理解していっているとも思えない。 振り返ってみればこの2ヶ月、麻生政権についてマスコミが報道してきたことは、やれ漢字が読めないとか、ホテルのバーで高い酒を飲んでいるとか、些細な失言だとか、どうでもいい話ばっかりだったではないか。 確かに日本国総理が踏襲を“フシュウ”、未曾有を“ミゾユウ”と読んだりするのはいただけないが、とりあえずはどうでもいい話、少なくとも政策論ではないだろう。 一国の総理が安酒場で安酒を飲んだ方がいいとでも言うのか。 とにかく日本のマスコミは次元が低い。

 安部や福田総理を寄ってたかって引きずり下ろしたときもそうだったが、日本のマスコミが内閣の政策に対し、きちんとした政策批判をしたことがない。 やれ還元水だの絆創膏だの、本質を外れた話ばっかりだった。 年金問題にしても、安部の責任では無かっただろうに。 マスコミに煽られて支持率を落とす国民も軽薄であるが、そう言う民度の低い国民を煽るマスコミの方が罪は重い。 要するに国民は政策なんて一つも見ていないのだ。 安部氏は正統的保守政治家としてそれなりの政策を掲げ、最初のうちは国民もそれを評価していたかのように見えたが、マスコミが還元水、絆創膏を煽り立てたらあっという間に手のひらを返した。 安部氏が政策を何も変えていないのに。 前述の世論調査の「政策に期待出来ない、32%」と言う数字は真っ赤な嘘だ。 国民もマスコミも、麻生内閣の政策なんて考えたこともないのに、期待はずれはないだろう。 政策に期待出来ないから支持しないというのは一種の虚構だ。 「民主党に一度政権を…」と言う65%の連中ははたして民主党の政策を理解して言っているのだろうか。 多分そうではないだろう。 時の政権の政策より野党の政策の方に通じているほど国民の政治度は高くない。

 日本はイギリスと同じ議院内閣制による間接民主主義制を採っている。 直接民主主義のアメリカや共産党一党独裁の中国とは違う。 正規の手続きで国民の負託を受けた内閣は、あやふやな世論に惑わされず、自ら掲げた政策を粛々と進めればいい。 よほどの理由がない限り、任期を待たずに解散などする必要はない。 おかしな世論調査の数字などに一喜一憂することはない。 マスコミが言う支持率など、参考にはしても、それによって政策を曲げる必要はない。 麻生氏が総理として最適任かどうかは別として、お粗末な限りの給付金問題を除いて、彼の基本政策にそう大きな異論はない。 民主党が政権を取ったところで、基本政策に大差はないだろう。 100年に一度の金融大混乱に対する麻生内閣の対処が間違っているかどうかなんて誰にも分からない。 出来うれば、これを奇貨として日本の潜在力を生かして世界をリードする政策を展開してもらいたい。 マスコミや評論家はいろいろ言うが、彼らにしたって今度の金融大混乱を誰一人予想出来なかったではないか。 彼らに大きなことを言う資格はない。 国民は些末なスキャンダルで内閣を追いつめることはやめて、よほどの政策不信がない限り、もう少し息長く政治を任せたらどうか。 自分たちが選んだ政権なのだから、少なくとも衆議院の任期は全うさせるべきだ。 このことは仮に民主党が政権を取ったにしても同じことが言える。 日本の政治はもう少し成熟すべきだ。   

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