【伝蔵荘日誌】

2008年9月14日: 事故米と日雇い派遣 T.G.

 朝刊に事故米と日雇い派遣法改正に関する記事が載っている。 内容を読むとまたぞろ役人のでたらめな仕事ぶりに憤りが湧いてくる。 どちらも現在世間の関心が高い問題である。

 記事によれば、農林省が検疫でミニマムアクセス米に汚染米が見つかった場合、輸出国に返品し、国内に流通させない方針を固めたという。 当たり前の話ではないか。 今さら何を言っているのかと呆れるばかりだ。 どこの国に高い金を出して不良品を買わされる馬鹿がいる。 商品に問題があれば返品するか、それが駄目なら以後取引をやめるのが常道だろう。 これが民間の食料輸入ならこのような馬鹿なことは起きなかった。 農水省の役人はこんな愚かな米輸入を過去何十年も続けている。

 ミニマムアクセスとはウルグアイラウンドで決められた最低量の低関税輸入のことである。 輸入量は義務づけられていない。 アメリカや韓国は形ばかり輸入しているだけだが、日本の場合、米に関しては律儀に国内流通量の4〜8%、70万トン以上を輸入している。 輸入量が多いほど農水省の権益拡大につながるからだ。 いくら貿易協定上の輸入と言っても、品質検査もせず、相手国に言われるがママに汚染米を輸入しなければならないわけではない。 民間の取引と同じく、商品を吟味し、ちゃんと食べられるものだけを買えばいい。 メタミドホス汚染米など突っ返せばいい。 要するに農水省の役人どもは自分たちの権益確保のために、食べられもしない米を大量に買っていたことになる。 当時ウルグアイラウンド対策費として6兆円を超える予算が大盤振る舞いされた。 その中には、例えば道の駅のようなおよそ農業支援とは無関係の使い方もされている。 国内農業保護と言う錦の御旗の下で、この事故米購入も含めてどれだけの税金がドブに金を捨てられてきたのだろう。 何たる不見識。 役人の無駄遣いの最たるものだ。

 同じ記事で、汚染米の国内流通を禁じる方針だとも言う。 これも今さら何をである。 今回の事故米も工業糊用に払い下げたと言うが、それならなぜ三笠フーズという食品会社に売ったのか。 初めから工業糊業者に払い下げればいい話だ。 そうしなかったのは何かしらの作為、意図があったと思わざるを得ない。 業績の良くない零細食品会社に安値で払い下げたら、間違いが起きることは誰でも想像出来る。 刑法で言う未必の故意に当たる犯罪だ。 工業用糊業界によれば、工業用糊の原料は小麦が主で、米は使わないという。 また払い下げられた事故米7000トンに見合うほどの生産量はないとも言う。 こうなると、農水省の役人がよほどの不勉強か、馬鹿なのか、悪辣なのか、いずれかである。 今回の問題でマスコミは三笠フーズの非難に終始しているが、もっとも責められるべきは農水省の役人だろう。

 同じ紙面で、厚労省が日雇い派遣を原則禁止する労働者派遣法改正案をまとめたという記事が載っている。 改正案では通訳など18の例外業務が盛り込まれている。 その中にソフトウエア開発、機械設計、研究開発の3項目が入っているのを見て目を疑った。 厚労省の役人はソフトウエア開発や研究開発がどんな仕事で、実際どのように行われているか考えたことがあるのだろうか。 日雇い派遣で出来る仕事とでも思っているのだろうか。 こうなると悪名高いわたしのしごと館は彼らのためにこそ必要なのかも知れない。 おそらくそうではなく、分かっていて恣意的に含めたに違いない。 この案は民間を含めた諮問機関が審議しているが、おそらく業界の強い要請に迎合したのだろう。 この役所はどちらを向いて仕事をしているのだろうか。 労働法の基本理念は労働者の権利保護にある。

 秋葉原事件直後、人材派遣に世間の非難が集中した。 桝添厚労大臣がただちに日雇い派遣見直しを言いだしたが、そのときからこの大臣はよほどの馬鹿か、お調子者だと感じている。 現在騒がれている派遣法の問題は日雇い派遣にあるわけではない。 単純労働の日雇いは昔からあって、最下辺にいる最低賃金労働者の生命線である。 これを禁じたら世の中がおかしくなる。 禁ずべきは日雇い派遣ではなく、一般製造業、流通業現場への労働者派遣だ。 2004年小泉内閣の時、規制緩和と称してそれまで禁じられていた製造業への派遣が拡大された。 これが秋葉原事件を含めて、今の格差や諸々の社会問題を生んでいる。 桝添氏がまず取り組むべきはこちらの問題だろう。 農水省擁護の太田大臣と言い、こういう役所べったりの大臣を見ていると、やはり自民党では駄目なのかという気持ちが強くなる。        

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