【伝蔵荘日誌】

2008年9月9日: 韓国の経済危機 T.G.

 三大新聞やテレビはまったく報道しないが、韓国経済が危機的状況にあるらしい。 「9月危機」がまことしやかに噂されている。 9月中に償還期限が来る67億ドルの国債が償還出来ず、デフォルトに陥るという筋書きだ。 97年の通貨危機と同じである。 あの時はIMFを通じた日本の多額の援助で何とか乗り切れたが、銀行はIMF管理下に置かれ、財閥解体など独立国の体をなさない状況に陥った。 このときの日本の支援については韓国政府も国民もまったく知らぬ顔で、やれ竹島だ靖国だと、呑気に反日騒ぎを続けている。 困った国だ。 9月危機の半分は流言飛語の類であろうが、問題の本質はより深刻な状況にある。 

 最近になって韓国政府は、「97年当時と違い外貨準備高が十分(2460億ドル)なので危機にはならない」と打ち消しに躍起であるが、大方は眉に唾をつけている。 9月危機が風説だとしても、67億ドルとは別に400億ドルのドル建て短期債があり、その返済資金調達の見込みがつかないらしい。 国債が償還出来ないと言うことは国家のデフォルト(破産)を意味する。 9月はともかく、近い将来97年以上の致命的危機が訪れる可能性はきわめて大きいのだ。

 経済大国日本と違い、韓国経済はきわめて脆弱である。 日本も多額の借金(国債)を抱えているが、ほぼ100%国内からの借り入れである上に、それを上回る国民の金融資産がある。 それに対し韓国の借金はほとんど外国からの純債務。 1ドルでも焦げ付いたらデフォルトだ。 外貨準備は国債償還だけに当てられるものではなく、最近のウォン安防衛のためのドル売り、IMFが定めた貿易決済のための準備金など、多額のドルが必要になる。 それらを合わせると、現在でも800億ドル近い外貨が不足しているのだという。 さらに、サムスンなど世界的に競争力の高い優良企業がありながら、貿易赤字が増えつつある。 8月の輸出は373億ドル、輸入は406億ドル、差し引き月間ベースで32億ドルの貿易収支赤字が積み上がっている。 この傾向は改まりそうにない。 韓国経済を牽引している電子機器など二次加工産業は、基本技術や部材をほとんど日本に依存しており、作れば作るほど輸入が増え赤字が嵩む体質になっているからだ。 経済のいいとこ取りをして、日本のように歯を食いしばって基礎技術開発をしてこなかったことのツケが来ている。 このことは現在絶好調の中国経済にも当てはまる。 一朝一夕には改まらない。 

 さらに深刻な問題は歴代韓国政府が採ってきた金融政策にある。 国債は国の借金であるが、韓国の場合、中央銀行である韓国銀行が発行した通貨安定証券という“闇証券”である。 97年のIMF管理で韓国は国債の発行を禁じられた。 破産したら借金出来ないのは当然のことだ。 このとき韓国政府は苦し紛れに中央銀行に借金をさせるという、世界中何処の国もやらない禁じ手を使った。 中央銀行は原理的に紙幣を印刷すればいくらでも資金調達出来る銀行だから赤字になることなどありえないが、民間と同じく借金で資金調達した韓国銀行は利払い分赤字経営になる。 もうメチャクチャというか、前代未聞の話だ。 最近発売された前FRB議長グリーンスパンの回顧録によれば、97年当時韓国は公表されていた外貨を準備出来ていなかったという。 現在の外貨準備にもその疑いがもたれている。 つまり国際的に信用がないのだ。 さらにその外貨保有の大部分が、サブプライムで大問題になっているファーニーメイとフレディマック社の債権であり、換金性に問題があるのだという。 昨日アメリカ政府がこの2社を政府管理下に置いたことで一応米政府の保証が得れ、株価も一時的に上昇したが、世界中を混乱に陥れている絵に描いたような不良債権であることには違いない。

 この問題は対岸の火事ではない。 日本にとっての危機でもある。 一つは、もし問題が起きたら、世界中日本以外に助ける国がない、と言うことだ。 一昔前と違い、韓国は米中双方にとって最早どうでもいい国だから、金を出す意志も動機もない。 97年危機の時も、IMF経由で日本は100億ドルを負担させられた。 この債務は現在も63億ドルが未返済である。 にもかかわらず歴代韓国政府は「97年危機は日本が招いたもので、これからの回復は韓国が独力で成し遂げた」と真っ赤な嘘を国民に吹聴している。 非難ばかりで、まったく感謝していない。 2006年、谷垣禎一財務大臣のときに日韓通貨スワップ協定を取り結ばされた。 この協定は日韓双方のいずれかに危機があったとき、日本は100億ドル、韓国は50億ドルを支援するという内容である。 金額差も問題だが、近未来に日本がクラッシュすることなどあり得ない。 日本人のほとんどがあずかり知らぬ不平等条約である。 きわめて蓋然性が高い事態に、無条件で100億ドルもの資金提供をさせられる。 年金や医療など金詰まりの日本が、やれ竹島だ靖国だと反日一辺倒の国に100億ドルもつぎ込むことを、はたして国民感情が許すだろうか。 韓国政府はしらっとした顔で条約履行を迫るに違いないが。 しかしながら97年の債務が完済されていないので、IMF経由の新たな追加融資はルール上出来ないという話もある。 そうなったら韓国は完全にクラッシュする。 こういう客観情勢にありながら、牛肉反米デモ、竹島反日デモに明け暮れる韓国政府、国民は、いったい何を考えているのだろう。

 もう一つのさらに憂鬱な問題は、禁治産国になった韓国に政情不穏、社会不穏が起き、大量の経済難民が対馬海峡を渡って押し寄せてくることだ。 破産国家からの難民だから気持ちも荒み、倫理観も道徳も薄れているに違いない。 日本の社会秩序に多大な悪影響を与えるだろう。 その上戦前と同じで、勝手に出稼ぎに来ておいて、やれ強制連行だ不当労働だとあらぬ罵詈雑言を浴びせられることを想像すると、なおさら憂鬱になる。 その頃は北朝鮮も完全に破綻してるだろうから、合わせてこの半島が日本の安全保障に与えるリスクは下手な戦争より大きなものになるだろう。 100年前の韓国併合直前の混乱状況に似た、まさに“今そこにある危機”である。 あの時はロシアの南下を防ぐため、やむなく日本が併合し、大金をつぎ込んで支えたが、今の時代、もうそんな乱暴なことは出来ない。 ただ金をむしり取られるだけだ。 感謝もされずに。

 ノー天気な総裁選騒ぎをしている自民党、民主党の政治家達は、この問題をどう考えているのだろう。 多分何も考えていまい。 そのことも大いに心配だ。     

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