【伝蔵荘日誌】

2008年6月21日: 朝日と毎日のおかしな報道 T.G.

 この数日、朝日新聞と毎日新聞のおかしな報道が話題になっている。 初めのうち知らぬふりを決め込んだ二大新聞も、そう言うわけにはいかなくなって渋々釈明や弁解に応じた。 その釈明がまた的はずれでふるっている。 話題になっていると言っても、天下の二大新聞のスキャンダルだから、仰々しく報道されているわけではない。 同業者と言うことで、他の新聞テレビも見て見ぬふりをしている。 もっぱら2チャンネルやWebサイト上の話題である。 これらのネットメディアがなければ、この二つの怪しげな新聞報道も闇に葬られていただろう。 この国のジャーナリズムは2チャンネルのような“素性の知れない裏メディア”で補完されている。 
  
 朝日の問題報道は、例の「鳩山法相、死に神」記事である。 18日、同紙の夕刊1面の名物コラム「素粒子」で、宮崎死刑囚の死刑執行に同意した鳩山法相を“死に神”と揶揄した。 正確な文面は次のようである。

   「永世死刑執行人 鳩山法相。
    自信と責任に胸を張り、
    2カ月間隔でゴーサイン出して新記録達成。
    またの名、死に神。 」(18日夕刊素粒子)

 さすがに世間もこれはおかしいと騒ぎ出したら、慌てて「鳩山氏に対する中傷意図はない」と釈明した。 しかしこれが釈明だろうか。 誰が見てもこの文面は“個人に対する中傷”以外の何物でもない。 これが中傷でなかったら、世の中に中傷など存在しない。 中傷でないとするなら、“永世死刑執行人”とか“死に神”などという三流週刊誌並のおどろおどろしい表現を用いた意図は何なのだろう。 大新聞のコラム記者の品性とボキャブラリが疑われる。

 光市事件裁判報道の時もそうだったが、この新聞はどうやら死刑反対の立場らしい。 “らしい”というのは、そのような旗幟鮮明な主張をこの新聞で目にしたことがないからだ。 賛否いろいろあるが、死刑制度反対はそれなりに立派な見識である。 世界を二分している主張の一つだ。  それならそうと、死刑反対と明確に主張すればいいではないか。 このような下品な文章で、犬の遠吠えまがいの捨てぜりふを書く必要はない。

 毎日新聞の場合はもう少し手が込んでいる。 毎日新聞の英語版ニュースサイト「Mainichi Daily News」の「WaiWai」というコーナーで、ニュースソースの明らかでない、日本社会を誹謗中傷するおかしな記事が過去何度も繰り返し掲載された。 曰く、「六本木のレストランで豚を獣姦し、その後料理して食べた」、曰く、「ファーストフードで女子高生が性的狂乱状態」、曰く、 「日本の母親は息子の勉強前に性処理をする」、等々である。  世界に向けてこんな怪しげな報道が日本を代表するクォリティペーパーによってなされているなどと、Web新聞J-CASTが6月20日付けのニュースで報道するまで、ほとんどの日本人が知らなかった。 外国人向けの英文記事だったからだ。 いったい毎日新聞は何を考え、何が目的で、このような馬鹿げた報道をするのだろう。

 記事内容のひどさも問題だが、このようないかがわしい、日本を貶める以外の何物でもない報道が繰り返されたことを、J-CAST以外のマスコミがまったく追求しなかったことも問題だ。 張本人の毎日はともかく、朝日、読売、産経、日経もまったく報道していない。 テレビも同じである。 日本のジャーナリズムはここまで劣化したのかと、目を覆いたくなる。

 記事によれば、毎日新聞社はJ-CASTの報道に対して、「ご批判は謙虚に受け止め、ご指摘の英文記事は削除する措置を取りました」と弁明している。 しかしこれでは釈明にも弁解にもなっていない。 いったんネット上に曝された情報は、発信者の手を離れて世界中を駆けめぐり、もはや“削除”などと言う生やさしい対処ではどうにもならないことを誰でも知っている。 そう言うネットの問題を、この新聞だって自らのコラム、「ネット君臨」で声高に非難していたはずだ。

 この英文コーナー記事を巡っては「まとめサイト」まで登場し、前述の『ネット君臨』という書籍の一文を引いて、次のような主張が展開されていると言う。

  「毎日新聞が『ネット君臨』にも書いている通り、『ネットによって一度つけられた傷は簡単には回復しない』のだ。日本国全体に与えられた謂われ無き不名誉、汚名に対し、いったい毎日新聞はどのような責任を取るつもりなのだろう」

 既存大新聞と新興Webジャーナリズムとの戦いが始まっているようだが、このような、志を欠く、劣化報道をしているようでは大新聞に勝ち目は無かろう。  

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