2008年2月19日: イージス艦の衝突事故 ![]() 各紙の報道、論調を見ると、 「海難事故の原因究明に詳しい松井孝之弁護士は、「双方は横切り関係にあり、海自艦が漁船を右にみる関係だった可能性が高いのではないか。 海自艦が漁船を避けなければならないのに、この大きな義務を怠っていた可能性も考えられる」と話した。 」(朝日新聞) 「防衛相は閣議後の記者会見で、「(自衛隊から)内部部局に連絡が入ったのが5時。 そこから(秘書官を通じ)私に入るのに約40分かかった。 とりあえずの第一報は、もっと早く大臣に入るべきだった」と語り、防衛省内の連絡体制の不備を認めた。 その上で、「危機管理上からもっと短縮できるはず。 その体制は本日から、即座に改める」と述べた。」(読売新聞) 「あたごの右舷前方に損傷があることが判明し、事故当時、あたご側に回避責任があった可能性が浮上した。」(産経新聞) 「共産党の穀田恵二国会対策委員長は国会内で記者団に「軍艦が民間の漁船に衝突するというのはあってはならないことで厳しく抗議する。 連絡を一刻も早くやるのが当然なので、防衛相への報告が遅れたのは驚く。 真相究明が今は最大の責任だ」と強調した。」(毎日新聞) 要するに、「どちらに責任があったのか」、とか、「報告が遅い」とか、どうでもいいことばかりに終始し、国防の最先端がこんなことでどうする、という肝心な話しがどこかへすっ飛んでしまっている。 まさに平和ボケとしか言いようがない。 日本の現在の防衛体制は冷戦時に確立されたもので、装備も作戦も仮想敵国ソ連の正規軍による侵攻を想定して作られている。 北海道から裏日本一帯にかけかけて、まずソ連の最新鋭戦闘機による第一波攻撃があり、それに続く戦略爆撃機の第二波攻撃がある。 その後日本海を越えて上陸用舟艇が押し寄せ、戦車を中心とする機甲師団が上陸、内部に侵攻してくる、と言う想定ですべての兵器、装備が用意されている。 航空自衛隊の航空管制システム、バッジは、そう言うソ連の航空攻撃を水際で防御するためだけの目的で、膨大な予算をかけ、裏日本の一帯の海岸線に巨大なレーダー網を配置している。 陸上自衛隊が誇る90式戦車は世界でもっとも高価な戦車であるが、北海道の平野でソ連軍戦車と渡り合うことを目的に開発された。 しかしながらソ連が崩壊した今日現在、そのようなロシア正規軍の正面攻撃はもはやあり得ない。 その意味で自衛隊の装備や作戦は、性能はともかく、目的に照らせば時代遅れの過去の遺物と言える。 これからの時代、日本に限らず、正規軍同士が最新鋭の兵器で戦う“まともな戦争”はまず起こらないだろう。 ほとんどが姿が見えないテロリストや非正規軍との泥仕合だろう。 今のイラクやアフガンがまさにその典型だ。 こういう戦いにはイージス艦や弾道ミサイルやバッジシステムや90式戦車はあまり役に立たない。 そのことは最新鋭兵器を擁したアメリカ軍が、イラクの爆弾テロで手こずっていることで証明されている。 前述のバッジシステムも北朝鮮の改造小型漁船の接近を未然に防ぐことは出来なかった。 重すぎて日本の道路をまともに走れない90式戦車は、国内の対テロリスト作戦には無用の長物である。 今度のイージス艦も小型漁船を衝突直前まで発見出来なかった。 まさに宝の持ち腐れ以外の何物でもない。 百歩譲って仮想敵国への抑止力は認めるにしても、費用対効果は低い。 マスコミは書かないし政府も言わないが、今日の日本の現実的な仮想敵はロシアではなく、中国、北朝鮮である。 もしかすると韓国も加えるべきかもしれない。 その場合、”正規軍による真っ当な正面攻撃”の可能性は小さい。 特に最大の脅威である北朝鮮はそうだ。 おそらく形を変えた非正規テロ攻撃の繰り返しになるだろう。 そう言う戦いにテクノロジーの塊であるイージス艦があまり役に立たないことを、今度の事件が図らずも証明した。 レーダーの原理は電磁調理器と同じである。 民間船が犇めく日本近海ではイージス艦ご自慢の高出力レーダーは危険すぎて訓練にすら使えない。 近距離の小型船を捕捉するための監視機能は、そもそもの目的外だからないに等しい。 だから今回の事故が起きた。 つまり戦闘が想定される日本近海では役に立たないのだ。 政府やマスコミや、もちろん国民も、そのことの方を問題視すべきだ。 これを書いているうちに、海上保安庁の捜査員35人が家宅捜索のためにイージス艦に乗り込んだというニュースが流れた。 交通事故の捜査ではあるまいし、軍事機密の塊のような最新鋭軍艦に警察が乗り込むなんて平和な国は、世界中探しても日本以外にはないだろう。 ただただ慨嘆! |