【伝蔵荘日誌】

2007年12月22日: 薬害肝炎訴訟に関する報道 T.G.

 一昨日から薬害肝炎訴訟のニュースで新聞もテレビも持ちきりである。 おおむね、と言うより例外なく原告団の主張に肩入れし、政府を非難する姿勢に偏っている。 何にでも三分の理はある。 それなのにマスコミは、なぜ政府が原告らが頑なに主張する一律救済を認められないのか、その理由にまったく触れようとしない。 ひたすらお涙頂戴の情緒的報道で大衆を扇動する。 このマスコミの総攻撃は、安部内閣の時の絆創膏報道と同じで、近い将来福田内閣に引導を渡すことになるだろう。 マスコミ暗黒時代が到来しているのだろうか。

 マスコミ報道の典型が下記の毎日新聞ニュースである。

「被害者の全員救済」という願いは、かなわなかった。 国側が最後まで救済範囲を限定する姿勢を崩さなかったことに、薬害C型肝炎訴訟の原告たちは失望し、和解協議打ち切りを宣言した。 20日午前、厚生労働省で会見した全国原告団代表の山口美智子さんは、(51)「私たちが全面解決という最後の山を登ろうとしているのを、福田康夫首相は突き落とした。舛添要一厚労相も握っていた手を放した」と怒りで体を振るわせた。……(中略)……
 大阪訴訟原告の桑田智子さん(47)は「次の世代に薬害を残したくない。 私たちで終わりにしたい。 それだけの思いで、原告は命や家族、すべてを犠牲にして闘ってきた。 なぜ当たり前の願いがかなわないのか、本当に悲しい」と語った。 東京訴訟原告の浅倉美津子さん(57)は「フィブリノゲンを投与されたことは今でも覚えている。 冷たいものが体を駆け抜けたが、その感覚をまた味わっている」と話し、東京訴訟の仲間の名前を挙げ「力が足りなかった。 ごめんね」と涙声で叫んだ。
 舛添厚労相はこの朝、東京地裁が国などの法的責任を認めた期間から外れる被害者に対し、創設する基金を積み増す案を示した。 全国弁護団の鈴木利広代表は「全員一律救済の理念を理解しておられないようだ。 札束でほおをたたくような案で、『要は金だろう』と(問題を)矮小化している」と痛烈に批判した。


 福田首相と桝添厚労相をさも人非人のように罵り、政府案の中身と根拠についてはまったく触れようとしない。 これがまともな報道と言えるだろうか。
 下記はこのニュースに関する2チャンネルの書き込みである。 客観的に見てこの方がはるかに内実を伝え、バランスが取れているように思える。 少なくともマスコミはこのような情報を一切伝えようとしない。 2チャンネルは有識者からゲテモノwebとして忌み嫌われるが、バランス感覚と切り口の鋭さは一考に値する。

▼『FDAですら規制していなかった以前の肝炎まで全て一律救済しろ』は、さすがに無理。
▼『薬害を批判していながら、未承認薬の認証を早く求める矛盾…。』 マスゴミはこの事は指摘しない。 さらに問題は、今回の「FDAの規制以前の患者まで一律救済しろ」を認めたら、一切、新薬を認証できなくなる。 他の病気の患者が、最新の薬が使えなくなる。 話題の万能細胞の治療も、将来日本だけ普及できなくなるおそれがある。
▼政府は、FDA規制以前の患者に金を出さないとは言っていない。 和解金とは違い、基金から金をきちんと支給すると言っている。  ただ、「FDA規制以前の患者まで国の責任にするな、これから医療行政が動かなくなるから」ということ。
▼ハンセン病は、裁判所の和解案に従った。 今回も政府案は裁判所の和解骨子案に従っている。 患者団体側の主張「FDA規制以前の患者まで一律救済」が飛躍している。  マスゴミは印象操作して、政府がおかしいと言っているが、政府は法治国家の三権分立に従っているだけ。 批判するなら、そういう和解骨子案を出した裁判所のはず。
 どう駄々こねても、裁判所の和解案から大きく外れ飛躍するわけにはいかない。 首相の一存でそんなことができたら、それこそ法治国家ではなくなる。
▼「薬害かどうか認定が困難なので、C型肝炎全員を薬害認定し、すべて国に謝罪と賠償して…。」 という、司法判断を越えた政治決断を一度でもやったら、前例となって国は動かなくなる。 因みにハンセン病は裁判所の和解案に従っただけ。 司法を無視した政治決断をしてしまうと、戦後補償など他のケースで大変な事態を誘発することになり、国家財政破綻は破綻する。  予算がいくらあっても、税金をいくら上げても足りない。  マスゴミは、前例になった場合の危険性、国の将来の危機を一切報道しようとしない。
▼裁判の和解交渉の最中に政治決断を求めるというのは、「左手で殴りながら、右手で握手を求める」ようなもの。


 新聞よりはるかに冷静な筆致である。 内容からして当事者であるお役人の書き込みの可能性大だが、このような場所でしか発言する機会が与えられないとしたら問題だ。 この書き込みの最後は次のようなコメントで締めくくられている。 少なくともNHKは耳を傾けるべきだろう。

▼放送法では、双方の意見を報道するよう求めている。  

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