【伝蔵荘日誌】

2006年4月26日: 鶴ヶ城の桜  T.G.

 引き受けていた仕事が一段落したので、東北の桜を見に行く。 前日に三春の滝桜を見て白布温泉に泊まり、翌日会津の鶴ヶ城へ廻る。 ちょうど桜が満開で、お城が桜に埋まっている。 天守台に登って下を見下ろすと桜の絨毯である。 南関東に比べると2週間ほど遅い。 山一つ越えた米沢の上杉神社の桜はまだ蕾だった。 東北の桜は今からが見頃なのだろう。

 鶴ヶ城は戊辰戦争で打ち壊されてしまったから今建っているのはコンクリート製の複製であるが、土台の石組みは昔のままという。 城の中は会津藩にかかわるいろいろな資料が展示してある。 中でも多いのはもちろん戊辰戦争にかかわるもので、有名な白虎隊少年隊士の肖像画が来歴とともに並んでいる。 いずれも行年16〜17歳、満で言えば15〜16歳。 今の中学3年から高校の1年生に当たる年齢である。 肖像画だから多分に脚色も含まれるのだろうが、いずれも眉濃く、大人びたりりしい顔立ちに描かれている。 今時の腑抜けた子供とは顔立ちも心構えもずいぶん違うと痛感する。

 最近テレビや新聞で伝えられる岐阜中津川の少女殺人事件は、詳報を知るほどその内容のひどさに暗然とする。 それまでに起きた年少児に対する事件は大方異常性愛者とか変質者の仕業で、あに図らんやと思うだけだが、この事件は普通に生活する少年少女達の乱脈な日常生活そのものである。 12歳から15歳までの、ちょうど白虎隊と同じ年齢の少年少女達が、子供らしい男女交際の域を超え、子供らしい遊びや勉強もせず、乱れたセックス三昧の生活に浸っていたらしい。 その挙げ句に、12歳で妊娠させ、子供まで生ませているという。 そういう乱れた男女相関の果てに相手の少女の一人を殺した。 まるで性欲の権化のような子供達である。 どのように育てたらこのような子供に育つのだろう。

 ヒマラヤ登山の初期、イギリスの登山隊は「現地住民は性欲と食欲しかない。人間ではなく獣と同じだ」と雇ったポーターに賃金を手渡さず、地べたに投げて拾わせたと京都大学チョゴリザ遠征隊の桑原武夫が書いている。 その伝で言えば、この子供達の生態はまさに食欲と性欲しかない獣並である。 おそらく彼らの親たちが同じレベルの男女関係、性行為の場面を日常的に子供達に見せていたのだろう。 そうでなくては12や13の子供達がこのように淫猥な男女の仲を自然に覚えるわけがない。 この事件は中津川だけに限ったものではないのだろう。こういう風潮が一般家庭にに広がっているとすると、日本の社会の危うさ、将来がいささか心配になる。 爛熟期に起こったローマの滅亡と同じように。

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