b>             【伝蔵荘日誌】

2006年3月25日: 中国の超大国化  T.G.

 四月号の文藝春秋を買う。 文藝春秋誌は会社員になって以来40年近く購読しているが、今までは駅の売店で買って通勤電車の中で読んだ。 今は通勤電車も駅の売店も縁がないので近くの本屋に買いに行く。 今月号の巻頭言で在イタリアの塩野七生氏が中国の超大国化について次のようなことを書いている。

『中国の躍進はいずれ止まるという意見があるが、私には中国はマイナスを周辺 にまき散らしながら大国への道を邁進していくと思えてならない。 大国とは何に よらずはた迷惑な存在だが、遠からず中国は最もはた迷惑な大国として君臨する ことになるだろう。 中国がWTOに加盟したとき、欧米先進国が作った世界貿易 のルールにこれからは中国も従うと思っていたものだが、今では日本も含めた先 進諸国の方が中国が勝手に決めたルールに従うように変わった。 グーグルを見よ。 マイクロソフトを、ヤフーを見よ』

 共産党一党独裁や経済格差や腐敗などの矛盾に耐えきれず、中国はやがて崩壊するるだろうという中国崩壊論がよく言われる。 その種の本が書店に山積みである。 中国経済が大躍進し、超大国化の道をばく進していることへの不安と反感が読者を引きつけるのだろう。 しかし北朝鮮のようなもっとおかしい国家体制がいつまでたっても崩壊しないでいるところを見ると、中国も同じなのではないかという気がしてくる。 自由平等とか民主主義などと言った先進諸国の価値観がこの国には通用しない。 不平等、不自由、非民主主義のままこの国は成長していくのだろう。 この日本に対する敵意に満ち満ちた“はた迷惑な大国”が一衣帯水の所にある。 おそらく日本の将来は暗くて陰惨なものになると言う気がしてならない。 つい70年前にもこの大石に躓いて転び、大怪我をした。

 日本もまだ経済大国であり、かつアメリカとの同盟関係があってかろうじて持ちこたえているが、そのたった二つしかないアドバンテージも今や危うい限りである。 少子化と若者の知力、気力、バイタリティ欠如で日本経済の活力の漸次低下は避けられない。 後30年、経済大国であり続けることはかなり難しいだろう。 その上普天間や岩国の米軍基地問題に見られるような脳天気な国民の反米感情と安全保障意識の欠如が、いずれアメリカとの同盟関係を壊してしまうだろう。 そうなったら日英同盟を破棄した70年前と同じように、小国日本は大国間の力学に翻弄されるだろう。 経済力もない小国日本など、大国中国の手のひらの中で意のままにされるのだろう。 その頃まで生き続けて哀れな日本を見たくない。

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