【伝蔵荘日誌】

2006年3月21日: 山の遭難のニュース  T.G.

 朝のニュースであちこちの山の遭難を報じている  一昨日からの強風による悪天候が原因らしい。  八ヶ岳の阿弥陀岳で3人死亡。  新潟の仙の倉山で7人、うち2名死亡。  谷川岳で3人遭難、救助。  いずれも吹雪による行動不能と凍傷、凍死だそうである。 年齢を見るとおおむね60歳前後の典型的中高年登山だ。 20代30代の若者は一人もいない。

 最近の登山用具の高性能化は目を見張るものがある。 我々が若い頃使っていた道具に比べると雲泥の差、まさしく月とすっぽんだ。 こんな道具が昔使えたらと思わず溜息をついてしまう。 特にウエアの進歩が素晴らしい。 ゴアテックスを使ったレインウエアやジャケットは魔法のように完璧である。 昔は高価で学生などには手が出せなかったダウンウエアが豊富に出回っている。 保温性と吸湿性のよいアンダーウエアやインナーも選り取り見取りである。 こんな素晴らしいウエアや道具を使っていたら、国内の山程度ではどう転んでも遭難しようがないと思う程だ。

 遭難したパーティは中高年ながらすべて山の経験豊富で、食料、テント、防寒具なども完璧だったとニュースでは報じる。 確かに救助ヘリから降りてくる遭難者の写真を見ても、上から下まで高価なウエアを身にまとった完璧な冬山登山スタイルである。 このままヒマラヤへ行って、サウスコルあたりまで登れそうに見える。 それなのに八ヶ岳の3人と仙の倉の2人の死因は凍死だという。 仙の倉のパーティは張ってあったテントをたたんで救助ヘリの到着を待ったらしい。 その間に2名が凍死したと言うが、いったい日本の高々2000m程度の冬山で、テントで寝泊まりしながらなぜ凍死などするのだろう。 なぜ凍死者が出そうな状況でテントを畳むような愚かなことをしたのだろう。 高性能ウエアを着込んで高性能テントの中にいたら零下19度ぐらいで凍死するはずがない。 春の嵐だ。 食料でも食べながら一日二日じっとしていれば通り過ぎる。

 昔我々が若かった頃も山の遭難はいくらもあった。 そのほとんどが技量未熟のロッククライミングか装備や食料不足の無謀登山であった。 マスコミや識者も、その無謀さ、思慮の足りなさを非難していれば済んだ。 今はそう言う非難や論評はしようがない。 もし論評するとしたら、若い頃の経験無しに中高年になって始めた趣味の登山の限界と言うべきか。  これも高齢化社会の一現象なのだろう。

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