【伝蔵荘日誌】

2005年12月28日: 男女共同参画と少子化対策  T.G.

 今日の朝刊を読んでいたら、政府が前日の閣議で「第二次男女共同参画基本計画」を決定したとある。 何でも「20年までに指導的地位に女性が占める割合を30%に引き上げる」ことが目標なのだそうな。 担当大臣は猪口男女共同参画担当相だが、彼女は確か少子化担当相でもある。 女性の社会進出の是非はともかくとして、女性の指導的地位と少子化対策は明らかに二律背反の問題である。 人気取りとは言えおかしな国務大臣を作ったものだ。

 しばらく前から少子化対策の重要性が叫ばれている。 テレビに出てくる女性評論家や政治家は「子供を増やすには安心して子供が産める社会環境が重要」と馬鹿の一つ覚えのようにいう。 そう言う連中の提案を聞くと、やれ託児所を作れだの育児休暇を増やせだのと、まるで人ごとである。 そんなことで子供の数が増えるわけがない。

 少し考えれば分かることだが、社会環境と出生率はまったく関係がない。 むしろ逆比例している。 日本最大のベビーブームは終戦直後、食うや食わずの劣悪な社会環境下で起こった。 世界を見渡しても、出生率の高い国はいずれも社会環境の良くない発展途上国である。 逆に所得と生活レベルが向上し、女性の社会進出が始まると、途端に出生率が下がるのは世界共通の現象である。 女性の社会進出を促進しながら出生率を高めようと言うのはどだい無理な話だ。

 もし国家としてどうしても子供を増やしたいと言うなら、少し前のように、男が外で稼いで女は家庭で育児に専念する社会に戻すのがいちばん簡単だ。 キャリアウーマンや女性評論家達が大騒ぎして潰した専業主婦向けの配偶者特別控除も復活させる必要がある。 子供を増やすに託児所も育児休暇も要らない。 我々の頃のように、お父さんの給料だけで子供を産み育てられる給与体系に戻せば済むことだ。

 その反対に社会指導者の30%を女性にして出生率が上がるわけがない。 こういうことを言うと袋だたきに遭いそうだが、そもそも女性が育児や子育てを犠牲にして社会進出すると、本当に良い社会になるのかと言う“素朴な”疑問もある。 しかし子供を減らしてでも社会進出したいと女性が望むなら、それも一幅の絵ではある。 何と言っても人口の半分は女性なのだから。

 そもそも少子化とそれによって引き起こされる人口減少はそんなに悪いことなのだろうか。 我々の子供の頃、社会科で日本の人口は8千万人と教えられた。 今の3分の2である。 ほんの数十年前のことだ。
 よく覚えているが、今に比べてそれほど悪い時代ではなかった。 国中貧乏で、食糧難で就職難だったが、みんな精一杯に生きていた。 子供もたくさん産んだ。 仕事がなければ誰も文句を言わず百姓をやったし、集団就職で町工場の工員さんにもなった。 やりたいことが見つからないなんて甘ったれたニートもいなかったし、引きこもりもいなかった。 そんな甘いことを言っていたら飢え死にしたから。 正社員などというとってつけたような物言いもなかった。
 悪くてもその時代に戻るだけのことである。どうと言うことはない。今より贅沢は出来なくても、穏やかに毎日が過ごせる社会を作るのも悪くはない。 ヨーロッパがその方向にある。 どうしても女性の社会進出が善だというなら、国として少子化対策などと言う二律背反に無駄なエネルギーを費やさず、そう言う成熟社会を目指すのが筋だろう。

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