【伝蔵荘日誌】

2005年8月14日: 郵政解散 T.G.

 遅い朝食を済ませて田原総一朗のサンデープロジェクトを見る。 各党幹部が出てきて郵政解散選挙についてこもごも主張を述べるが、郵政解散直後の小泉首相の記者会見に比べて今ひとつ迫力がない。
 特に民主党を初め野党党首の言い分はまったく説得力がない。 国民を無視した暴挙だとか、郵政民営化は大した問題ではないとか、抽象的批判のオンパレードである。 もう少しきちんとした政策上の主張をしゃべれないものか。
 自民党反対派領袖の言い分も同様だ。 小泉のやり方が気にくわないとか、独裁政治はよくないとか、負けた恨み辛みを言いつのるだけ。 せっかく全国網のテレビ放送時間枠を与えられたのだから、もう少し国民向けに自分たちの主義主張をきちんと述べたらいい。 絶好の選挙活動の機会を与えられたのに、それを生かそうとしない。 所詮、負け戦とはこういうものなのだろう。

 郵政民営化について賛否両論を公平に総括すれば次のようになるだろう。

「参」については:
・小さな政府実現には最大の官業である郵政民営化が最大の関門である。 これなくしての行政改革は画餅である。
・郵貯、簡保という巨大金融機関が国営であることは、我が国の自由主義経済の健全発展を大いに阻害している。
・340兆円になんなんとする巨大金融資産が、国の事業や特殊法人だけに流れていることが経済成長の妨げになり、国民の不利益につながっている。
・小さな政府の眼目である公務員削減について、国家公務員の4分の1を占める27万人の準公務員である郵便局員の非公務員化は必須である。
・世界的にも、今後郵便事業は縮小衰退の方向に向かう。 ユニバーサルサービスを維持する施策を講じた上で、早急に民営化し事業効率を上げねばならない。

「否」については:
・郵政事業民営化を国民は望んでいない。 諸問題山積の今の時期に、政治の空白を作るべきではない。
・百歩譲って民営化が必要としても、年金問題や景気対策などほかにもっと重要な課題が沢山ある。 郵政民営化を選挙の争点にするのは誤り。
・郵便事業の根幹はユニバーサルサービスにある。 民営化して効率を上げれば必ずや過疎地のサービスが低下し、地方の弱者やお年寄りを困らせる。
・民営化すると、340兆円という国民の大切な金融資産が外国のハゲタカファンドに食い荒らされる。 国の管理下においてこれを防ぐべき。
・郵政事業は黒字経営である。 税金は一文も使っていないし国民に迷惑も掛けていない。 膨大な赤字を抱えたかっての国鉄や道路公団民営化と一緒に論じるべきでない。

 言い分だけを聞くといずれがアヤメ、カキツバタ、双方もっともである。 。
 しかし後者が幾分現状維持のための屁理屈に聞こえるのは、言い分の正否は別にして、未来に対する展望を何一つ含んでいないからだろう。 民営化するとハゲタカファンドの食い物にされるという主張も、にわかには肯けない。 日本の経営者の経営力はそれほどだらしないものなのだろうか。 民では外国企業に対抗出来なくて、官なら出来るとでも言うのだろうか。
 こういう古くさいペシミスティックな国家観にもいささか抵抗を感じる。  

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