【伝蔵荘日誌】

2005年4月11日: 中国の反日騒動  T.G.

 朝刊を読んでいたら、元外交官の岡崎久彦氏が次のような面白いことを書いている。

「元米外交官ジョージ・ケナンが米ソ冷戦直前の1947年の論文で、
“(来る べきソ連との対決は)アメリカにとって国家の資質を試すフェアなテストだ。 ア メリカ社会に対するクレムリンの挑戦に対し不平など言う理由はない。 国民が結 束して道徳的、政治的リーダシップを担うという歴史的課題を果たせるかどうか にかかっている。 この不可避の試練をアメリカ国民に与え給うた神の摂理にやが て感謝することになろう。”
、と述べている。
 半世紀後の1989年にベルリンの壁が 崩れたとき、アメリカはこのテストに見事にパスした。 そして今、アメリカが直面する新し い挑戦が肥大化する中国だ。」

 中国は昔から実にやっかいな国だ。 大きすぎて実態がつかめず、歴代為政者の 誰一人としてきちんと全領土、全国民を統治出来なかった。 19世紀植民地時 代においても、列強のいかなる国も完全に植民地支配することが出来なかった。  現政権の中国共産党も、国家と国民を全うに掌握、統治出来ているとはとても言え ない。 その混沌はまさに累卵の危うさだ。 卵が13億個もあるから始末が悪 い。 今の反日騒動もその一つの表れだろう。 もはや一過性のものではなく、この国 の抱える混沌の一要素と知るべきだ。

 様相は異なるが、この大国の混沌と猥雑さは、清朝末期から張作霖等軍閥が跋 扈し、蒋介石、毛沢東が出現した1930年代と質的に変わっていない。 日本は地 政学的条件から不可避的にこの混乱の渦に巻き込まれ、愚行をなし、エネルギー を吸い取られ、疲弊しきって終戦を迎えた。

 今も変わらず中国はやっかいな国だ。 経済力が大きくなった分、覇権に対する 欲求も肥大化し、そのやっかいさはますます増大している。 中国は周囲の国々とってあ る種災いの源である。 タイもビルマもベトナムも、フィリピンもインドネシアもイ ンドも。 そして日本も。
 チベットやウイグル地区はその覇権主義にとっくに飲み込まれてしまい、台湾は戦 々恐々。 尖閣諸島も危うい限り。 そのうち沖縄は中国固有の領土だなどと言 い出しかねない。

 中国の現政権にとって、13億個の卵をなんとか押さえ込み、覇権主義を貫徹す ることが最優先だ。 そうしなければ再び無秩序に戻ってしまう。 そのためには反日を戦略として利用しこそすれ、日本と相 互理解を深め、友好関係を結んでいる暇もつもりもないだろう。
 我々がこのやっかいな隣国と相対するには、ジョージ・ケナンの言う“日本国民 の資質を試すために神が与えたテスト”だとほぞを固めるべきだろう。
70年前はやり方を間違えてテストに不合格だったが。

アメリカはすでにその気でいるようだ。

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