エベレスト街道トレッキング

【エベレスト街道:その1 トレッキング開始】

 ・メンバー:松木、佐藤、後藤(3期)、及川(4期)
 ・期間:2002年10月24日〜11月3日
 ・行程:ルクラ→ナムチェバザール→タンボチェ→ルクラ

 カトマンズから標高2800mのルクラまでコミュータ機で飛び、そこからナムチェバザールを経て標高3900mのタンボチェまでの、いわゆるエベレスト街道を歩いた。 初めてのヒマラヤである。 本当はエベレストBCのある標高5500mのカラパタールまで行きたかったが、まだ4人とも宮仕えの身、2週間しか休暇が取れず断念した。 いつか行こうと念じつつ。


 10月25日。 カトマンズ空港の国内線、ルクラまでの小型コミュータ機は17人乗り。 我々以外はすべてヨーロッパのトレッカー。 ぎゅうぎゅう詰めの満席である。 英語はあまり聞こえない。 フランス、ドイツ、北欧あたりが多いか。 狭くてやることもないのに、民族衣装のスチュワーデスが乗っている。 さんざん待たされてやっと出発。


 離陸するとすぐにヒマラヤの峰々が機窓に見え始める。 初めて見るヒマラヤの光景に気分が高揚する。 エベレストを探すが、なかなか見つからない。 機長があれだと指さしてくれるが、見慣れない山容に判然としない。 この写真に写っているのは多分7000m程度の山だろう。 名前は分からない。

 この後我々の乗った小型機は3000mほどの尾根を幾つかかすめて、ドウドゥ・コシの谷に入り、急傾斜の尾根の中腹にへばりつくように作られたルクラの飛行場に着陸する。

 ルクラは標高2800m。 切り立った尾根の斜面に滑走路が作られている。 長さはたったの500m。 着陸直前の飛行機から見ると、ちょっとした岩棚程度にしか見えない。 分かっていても着陸はなかなかスリリングである。 無事着陸すると乗客全員から歓声と拍手が上がる。
 前方に見える山はヌプラ(5885m)。 南面なので雪はないが、ここから西方に延びるコン・デリ連峰は反対側のナムチェバザールから見るとなかなかの山容である。

 出迎えてくれたシェルパのサーダー、ラクパの案内でルクラの街並みを抜け、今日の目的地パクディンに向けトレッキング開始。 狭い通りは大勢のトレッカーとシェルパやポーター達でごった返している。
 なかなか大きな村である。 電気も来ている。 電気がある村はネパールの山岳地では少ないと言う。 登山用品店があり、大概のものを売っている。 ここで装備を仕入れてトレッキングする連中がいると言うことだろう。

 ルクラを出て、道は一端ドウドゥ・コシの谷底までだらだらと300mほど下る。 その先2時間ほどで今日の宿泊地パクディンに到る。 帰途この登り返しはけっこううんざりした。

 この谷の住民はほとんどがチベット仏教徒で、いたるところにチベット仏教の祈願旗、タルチョがはためいている。 有名なシェルパ族はこの谷の上、ナムチェバザールを中心に住む少数民族で、言語もネパール語とまったく異なる。 カトマンズでは通じないとラクパは言う。 ちなみにラクパは英語が達者で、コミュニケーションに困らない。 どこで習ったのか聞くと、ルクラのヒラリースクールだという。 我々の英語よりよほど上等である。

 我々の荷を運ぶゾッキョ4頭。 ゾッキョは牛とヤクを掛け合わせた一代雑種。 この谷特有の家畜で、力があってヤクよりおとなしい。 荷運びに最適である。 ほかの谷では荷物はすべてポーターが背負って運ぶが、この谷では標高5000mのエベレストBCまで、大方ゾッキョに運ばせる。 大変便利な動物である。

 パクディンの手前3km。 支流のタドコシ・コーラ(谷の意)の奧にクスムカングル(6370m)が顔を出す。 歩き出して初めて見るヒマラヤの高峰である。

 辿りつつある本流のドウドゥ・コシはシェルパ語で“ミルクの川”を意味する。 雲母を含む鉱物で流れが白濁して見えるのでその名が付いた。 この含有鉱物のため、生水をそのまま飲むと腹をこわすと言う。 必ず湧かして飲めと言われるが、湧かして雲母がどうかなるものだろうか。

 チベット経の大きなマニ石。 いちめんにお経が書いてある。 通過するときは必ず左側を通らねばならない。 こういうマニ石やタルチョ(祈願旗)はこの谷の至る所にある。 実に敬虔な仏教徒達である。

 ルクラより200m下がった標高2600m。 夕食前にパクディン村を散歩する。 そろそろ冷え込んできて、フリースを着込んでも寒い。
 遊んでいる子供達は日本の子供に比べて身なりは粗末だが、活発で屈託がない。小さな赤ん坊が石だらけの道を走り回っていても誰も止めない。 危なっかしそうに見える赤ん坊もまったく転ばない。 日本だったら母親の金切り声が飛んでくるところだ。 日本のように手をかけられていないが、より可愛がられて育っている感じを受ける。

【その2へ続く】