伝蔵荘HP アンナプルナBC

【アンナプルナBCへ】その1 ナヤプルよりシヌワまで

  • メンバー:松木、佐藤、後藤(3期)、及川(4期)、渋川(5期)
  • 期間:2003年10月5日〜23日
  • 行程:ナヤプル→ニューブリッジ経由アンナプルナBC往復→オーストリアンキャンプ→カーレ
  •  10月8日、カトマンズより小さなコミュータ機に乗り、約1時間でポカラ着。シャングリラホテルにて1泊。なかなか洒落たホテルである。シャワー、レストランでの食事、ビール、ワインなど、文明はここでお終い。

     ホテルの窓からアンナプルナ連峰を一望できる。左はアンナプルナサウス(7219m)、その右奧に主峰アンナプルナT峰(8091m)、右の鋭峰は絵はがきでよく見るマチャプチャレ(6997m)。雲がなければはるか左方にダウラギリが見えるはず。アンナプルナに初登頂した1950年のフランス隊は、ポカラを通らず西側のカリガンダキを遡行したのでこの景色を見ていない。アンナプルナそのものを見つけるのに1ヶ月近くかかっている。今ではホテルの窓から観光客でも見ることが出来る。ホテルのレストランでの夕食の際、運悪く中国人観光客ご一行と一緒になった。彼らの騒がしさにはほとほと参った。大声でわめき散らすので、食事中こちらの会話が聞こえない。

     10月9日、ポカラからトレッキングの出発地ナヤプルまで、バスで1時間。このあたりは標高1000mの亜熱帯地域である。とにかく暑い。このおんぼろバスに、我々のほかシェルパ、ポーター、コックなど総勢24名と2週間分の食料、装備など一切合切が乗っている。ナヤプルからもう少し先まで、現地の連中がハイウェーと呼ぶお粗末な道路が伸びているが、その先には車が走れる道はない。首都カトマンズとポカラ近辺をのぞくと、ネパールにはほとんど車が走れる道路がない。電気もない。もちろん鉄道も空港もない。アジア最貧国の一つである。この辺りまでは観光客もタクシーで来られる。ポーター達の荷造りを待って、最初の宿泊地シャウレバザールに向けて出発。

     10月10日。 前日の宿泊地シャウレバザールを出発してニューブリッジに向かう。途中は亜熱帯の谷間で、バナナなど熱帯の植物が見られる。やがてモディ・コーラの高巻きがはじまると、はるか前方にアンナプルナサウスやマチャプチャレなど、目的地の山々が見えてくる。中央に見えるヒウンチュリ(6434m)の向こう側に、目的地のアンナプルナBCがある。まだまだ遠い。このあたりはまだ標高は2000mにも満たない低地で、緩やかな斜面に棚田が広がっている。作物は米、粟、稗、蕎麦など。一昔前の日本の山村風景である。

     10月11日。前泊地ニューブリッジを出てチョムロンまで。途中チヌーダンダの近くの農家の庭先で休憩。マチャプチャレがさらに近づき、“Fish tail”と呼ばれる魚の尾の形に見えてくる。この山は標高はさほどでもないが、秀麗な山容がポカラから間近に見えるのでよく知られている。ヒマラヤの絵はがきには必ず使われる。ヒマラヤで最も有名な山の一つである。アプローチが短くて形姿が良い。登頂意欲がかき立てられる山容だが、宗教的聖地として登山が禁止されている。

     チョムロンの手前の農家の軒先を借りてしばし休憩。農婦が繕い物をしてる。この辺り、モディコーラの右岸の住民はチベット系のグルン族が多い。顔立ちや体つきが日本人にそっくりである。少し汚い身なりだと、地元民と間違えられる。それに引き替え左岸のランドルン辺りはインド系住民が多い。彫りの深い整った顔立ちで、子供でもピアスをはめている。さほどの距離ではないが、ネパールが多民族国家であることを実感する。この後、急坂を登って、標高2000mのチョムロンに至り、民家の庭先を借りて幕営。

     10月12日。トレッキングを開始して今日で三日目である。チョムロンを出て、今日の宿泊地ドバンに向かう。途中シヌワの手前でチョムロン村を振り返る。チョムロンはこの辺りで一番大きな村で、電気も引かれているし、郵便局や学校もある。電気は下の谷に設置された小さな水力発電機から送られてくる。ほとんどが日本のODAだという。村は左上方から右下方まで標高差350mの斜面に広がっている。小さい子供も毎日350mの上り下りをして、遠くから学校に通う。こちらの連中には大して苦にならないらしく、子供でも大きな荷物を持って飛ぶように歩く。まだ標高は2200mほどで、とにかく暑い。

     シヌワの見晴らしがいいロッジで休憩。この谷のロッジは何処もなかなか清潔で、水利がよく、トイレも“水洗”である。谷筋から流れ落ちる水に流すだけだが、肥だめと埃とゾッキョの糞だらけのエベレスト街道とはかなり趣が違う。このあたりまで来るとモディ・コーラの最深部が見え始める。最奥のピークはガンガプルナ(7454m)。その右にアンナプルナV峰(7555m)が顔を覗かせる。遙か彼方、谷奧左から下る尾根の下が標高2600mの今日の幕営地ドバンである。

     進むに連れてマチャプチャレがますます近くなる。ポカラからは1つに見えた山頂が二つに分かれた魚の尾(Fish Tail)に見え始める。いよいよアンナプルナの核心部に近づく。これから先、展望のきかない密林の谷の右岸を、上り下りを繰り返しながら延々と歩かねばならない。まだ植生は亜熱帯である。ヒマラヤが緯度的に熱帯に属することを実感する。この辺りはシャクナゲが多いらしく、地図にも"Rhododendron and Oak Forest"と記されている。

        (写真はクリックで拡大出来ます)

    【続く】