電気式ボイラー#2
蒸気調整バルブ断面
9
13
1
リレー
ヒータ
上板と下板をロウ付け
手軽に蒸気エンジンの運転が楽しめるようにと電気式ボイラーを作製しました。 電気式ボイラーについては当初、そのパワーに懐疑的でしたが試作した結果、シリンダー径が十数ミリの小型エンジンにおいては充分なパワーを発揮することが分かり、蒸気エンジンのテスト環境としても有効であることから試作機をベースに2号機を作りました。
試作ボイラーは「はんだ付け」で簡易的に作りましたが、いくつかの問題点が顕在化しました。 すなわち、水が少なくなり、空焚き状態になるとはんだが溶融し危険な状態となること、箱型のボイラーでは圧力で箱が膨らみ、変形することで接合部に力がかかり、水が滲み出ることがあったこと、空焚き防止のサーモスタットの過熱検出がうまく動作しなかったこと等が問題として挙げられます。 今回は、これらの問題を考慮し、ボイラー本体は圧力に強い円柱型で銀ロウ付けで作り、空焚きを防止の為には時限タイマーを組み込むこととしました。 完成した電気式ボイラー#2の外観を図1に、外形図を図2示します。
完成した電気式ボイラーの性能を調べるにあたって、「2気筒複動式エンジン#3:ボア12mm ストローク12mm」を接続し、運転時間と発生蒸気圧を測定しました。 ボイラー容量は550ccですがテストでは常温水350ccを注入し、時間経過にともない圧力計の値を記録したものです。 図7にボイラーにエンジンを接続したテストの様子を図8にテスト結果(時間と蒸気圧の推移)を示しています。
時間経過(分)
運転状況の動画
クリックすると動画サイトにジャンプします2気筒複動式エンジン#3接続のテスト運転状況の動画を下記サイトでご覧ください。
25
20
15
10
5
0
発生蒸気圧
水消費量:350cc
ヒータOFF
エンジン回転
0
0.5
1.5
1
蒸気圧
(≒気圧)
接続エンジン仕様
2気筒複動式(ピストンバルブ式)
ボア:12mm ストローク:12mm
2気筒複動式
ピストンバルブエンジン
接続負荷:
スイッチを入れると4、5分後には、0.5気圧を示し、エンジンはゆっくり回転を開始、10分後には1気圧、12分後に最大値1.2気圧を示し飽和状態となり、20分経過後に蒸気圧は下降を開始しました。 これは、ボイラー内の水量が減少しヒータが水面に出はじめ、空焚きになり始めの状態かと思われます。 これまで、過去に製作したアルコール式ボイラーでは蒸気圧は1気圧に至らなかったことを考えると、今回の電気式ボイラーは充分な能力があると考えています。 テスト運転では2気筒複動式(4気筒相当)エンジンが充分な力で運転できることを示しており、ボアとストロークが10数ミリ程度の小型蒸気エンジンにおいては、充分なパワーを発揮することが確認できました。 電気式ボイラーは手軽に、どこでも蒸気エンジンの運転を楽しむことが出来る環境として最適であると考えています。
製作結果
蒸気口
安全バルブ
蒸気調整バルブ
蒸気
ボール
ベアリング
バネ
安全バルブ断面
蒸気入口
蒸気出口
ハンドル
空気抜き口
注水口
蒸気圧計
ボイラーの天板に、供給蒸気量を調整する蒸気調整バルブ、ボイラー内の蒸気圧の過剰上昇時に蒸気を排出する安全バルブ、ボイラー内の蒸気圧を示す圧力計、水の注入口と空気抜き口が実装されています。 空気抜き口はボイラー内の残り水を捨てる時の空気抜きの役割と、注水時にフロート(釣りの浮き)を入れて水レベルを知る為のものです。 図6にボイラー上部の様子を示します。
時限タイマ 設定ダイヤル
ネオン管
スイッチ
電源コネクター
ヒューズ
ネオン管
時限タイマー
ヒータに接続
スイッチ
14
5
500Wシーズヒータ
時限タイマー
PW15
Panasonic ADX11144
AC 100V
ネオン管
スイッチ
ヒューズ
コネクタ
ボイラーの過熱対策について、試作機ではサーモスタットを使い、過熱時に電気を切断する仕組みとしましたがうまく作動しなかったことから、今回は時限タイマーを使用して電源投入後自動的に、例えば25分でヒータ電源を切断する形としました。 なお、このタイマーはパナソニック製で電源を入れるとあらかじめ設定した時間にリレーが作動するもので、接点容量も125V-7A流せる為、直接ヒータ(500W)電圧をかけることが可能です。
回路図を図4に示します。 電気系統を収容するボックスの構成、配線の様子、操作面の様子を図5に示します。
下面
上面
ロウ付け後、旋盤で上面を切削
底板にヒータ取り付け
底板の下側
上面
下面
ボイラー本体断面
500Wシーズヒータ
底板 3mm
(3mm厚)
89mmΦパイプ
上板(天板取り
付け板)
シリコンゴム
天板 2mm
3mmビス止め
雌ネジをロウ付け
天板取り付け板
天板とパッキング
ボイラー本体は圧力に対応する為に、直径89mm(厚さ3mm)の真鍮パイプに円形の上板と底板(厚さ3mm)を銀ロウ付けで塞ぐ構造としました。 熱源は水加熱用の500Wシーズヒータをボイラー内に取り付けます。 ロウ付け後にボイラー内にヒーターを取り付けますが、ボイラーの上板にはヒータが入る穴を設け、ボイラー本体完成後にこの取り付け口を天板で塞ぐことになります。 このため、ボイラー内の機密をはかる為には天板と上板との接触面は平面を出すことが必要となり、天板取り付け部と天板はロウ付けの際の熱で曲がらないように慎重に銀ロウ付けを行なうことがポイントとなります。 どうしても、熱による歪で曲がったり、余分なロウが付着してしまいますが、曲がった部分はハンマーで修正し、上板(天板との密着部)に付着したロウは旋盤で切削し平にします。(この為にも、上板は厚めの板を使用しました)。 図3にボイラー本体の構造を示します。
水
(約550cc)ヒータON