DA・M 近作紹介1 1995   Next

   

DA・M演劇公演
‘95『それは私の夢じゃない』

1995.3.25-26 EAST GALLERY(恵比寿)
1995.10.27-28 仙台市青年文化センター

不可思議な叫び、
突発的な行為、鮮な感触、
ぼんやりとした画像....
” 俳優自身による夢の記述は
日常の周縁に連なる。

この作品は、
それら正体不明のものたちとの
対話の試みであり、
そこに現れる、誘惑への悦楽、
自分への拒絶と逃避、
他者への偽り、
幻影への欲望
 

そして繰り返される中断は、
失われた生のためのレッスンである。

夢の再現でも、夢のような物語でも、 夢分析でもない。

舞台上の行為は、夢を借りて浮きだす、  
忘れられた<今>の証言である

出演  佐木美奈子  (DA・M)
佐藤照     (DA・M)
渡部美保   (DA・M)
中野耿一郎  (フリー存在感ある俳優として小劇場界にて長く活躍.)
Celine Lavoie (カナダ.ダンサー '94年よりDA・Mに参加)
小熊浩       (びい玉コレクション.'93年よりDA・M に参加.※東京公演)  
千賀ゆう子     (フリー.語りや現代劇、近年は海外公演にて活躍。※東京公演
丹下一         (フリー.迦樓羅舎主宰 ※東京公演
龍昇           (フリー .元『演劇団』.独特の個性で多数のファン を持つ※仙台公演)
金京媛            (韓国.パフォーマー.日本の現代劇の韓国語への翻訳等※仙台公演)
石井忍     (在仙劇団OCT/PASS ※仙台公演
ライブ音楽 竹田賢一  (大正琴の即興演奏で国内外で活躍.パフォーマンス、音楽評論等)、
共同テキスト 構成・演出: 大橋宏   (DA・M)
インスタレーション 鈴木淳 (美術家.物体の影をスクリーン に転写する独自の作風.個展多数)
舞台美術  吉川聡一  (アルチザン.多数の舞台美術を手掛け、現代演劇にて活躍)  
 山崎久美子 (アルチザン)
東京公演  1995.3.25-26 EAST GALLERY  (セゾン文化財団/芸術文化振興基金助成事業)
仙台公演  1995.10.27-28 仙台市青年文化センター(交流ホール)
仙台演劇祭'95招待参加公演 
     
この作品は、DA・Mが'93年〜'95年にかけてプロト・シアターを拠点に行って来まし た<「夢」を題材にした創作活動>(実験演劇シリーズvol.11-16/連作『夢』第1番〜3番)、 及び<即興行為による創作活動>(実験演劇シリーズvol.17-22)の一つの総決算であり、同時に、この作品以降に開始される他空間に向けての新たな作品創作活動の出発点になるも のです。
この一連の作業の中で私たちが意図してきましたことは、演劇がどのようにして<今、こ こでの出来事>になりうるか、ということです。

「こんな夢を見た」で始まる漱石の『夢十夜』や黒沢作品の『夢』のように、幻想的、怪奇な物語を創作したり再現するためではなく、<「夢」創作>の中で私たちは、自分たちの実際に見た夢を記述し続けながら、そこから切り取った<断片的な動き・言葉・エピソード>などの行為化を試みて来ました。日常的な論理や意味から離れた行為。それは、偶然性へ身を投じていく<即興行為>とともに、舞台を、やる者と見る者を、未知の領域へ と開いていきます。

演劇の上演が、あらかじめ用意された内容の伝達のためにあるのではなく、上演そのものが多様な内容を生みだしていく場になること、つまりそれは、やる者と見る者が予定調和的な出会いの中にとどまるのではなく、より多様な出会いの可能性に開かれていこうと欲 望しつづけることだといえます。...、 演劇が演劇という制度の中に安穏とせず、驚きの秘めた生々しい生の現場へと出かけて行 くこと望みつつ舞台は準備されます.....

※この作品の中の「歩行」のパートが[aruku]('97-'98)の作品へと発展していきました。  また、この作品での「夢」へのアプローチが、『真っ昼間の地平線』('98)『IL VULCANO』  ('99)に繋がっていきます。

     
観客が会場に入ってくるとすでに4人の俳優達が、観客席にほぼ平行な4つのライン上で、静止と行ったり来たりの反復歩行を繰り返しながら、途切れ途切れの時間の流れを創り出している。その歩行空間を挟むように、4つの椅子が観客席に向かい合うようにある間隔 で並べられている。新たに登場する4人の俳優達(from韓国、カナダ、日本)がその椅子に座ると、先ほど舞台を広く過ぎっていた断続的な足音は、舞台上手の隅に押しやられ、そこから早いリズムに乗った足音を刻み始める。時間の流れがにわかに加速する中、椅子に座る4人の俳優達が自らの「夢の記憶」を、思い思いの仕方で、思い出し始める。 動き、言葉、モノ、舞台全体に広がっていく様々な夢の断片。その夢の隙間に少しずつ押し寄せてくる歩行の波。歩き続ける4人の俳優達は時間と空間の様々なバリエーションを生みだしながら次第に距離を伸ばしていく。幾つもの歩行と夢が交錯するカオス的な時空間。見る者一人一人の内側を揺さぶり始めていく......

音楽では竹田賢一がエレキ大正琴の即興演奏で加わります。空間には美術家・鈴木淳の「モ ノの影が転写されたフィルムシート」が幾本も吊されています。

演劇性と舞踊性・音楽性、様式性と即興性、虚構と現実、そして複数言語の混在、さまざまな領域の境界線上に立つ、演劇の新たな地平を目指します。

 

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