暗記しちゃえこの立体

入試でわりと頻出な立体図形を並べてみました.何も知らない人が読んでもスラスラわかるようには書いていません(書いたら膨大なページ数となり効果半減)のでご了承のほどを.それから,タイトルに「ⅢC」とあるものは理系向き.「fv」マーク付きの項目は,「function view」コーナーでも見られます.

古来,「立体が苦手だ」という人はひじょうに多く,得意な人との能力差には決定的なものがあるようです.教える側にも「立体はわかるやつにしかわからん」という諦め,あるいは甘えがあり,(私自身も含めて)立体をキチンと体系的に教えることから目をそむけてきたのではないでしょうか.残念ながら今の私では経験不足で,立体を完璧に体系的に教える力はありません.しかし,何もしないよりはましかなと思い,こんなプリントを書いてみました.

たとえば入試問題文中に「正四面体の外接球」とあるとき,私自身は瞼を閉じるとそのイメージがくっきりと浮かびます.なぜでしょう?それは正直なところ,その立体をすでに知っている,もっとハッキリ言うとその立体を暗記しているからです.
人間は,外界の何かを認識するとき,必ず過去の体験・記憶をよりどころにするといいます.ある立体S1を生まれて初めて見るとき,おそらく脳は過去に見たことがあるそれとよく似た立体S0を記憶の引き出しから引っ張り出し,それとの類似点・相違点を分析して新しい立体に対するイメージを作り出すのではないでしょうか.私の勝手な思い込みかもしれませんが,よく言う「空間認識能力」とは,“原型”S0をもとに“新型”S1を再構築する力だと考えます.空間認識に長けた人は,ごく少数の原型S0から様々な新型S1を認識できるわけです.
ここで重要なのは,原型S0がゼロでは,いくら能力があってもどうにもならないということです.つまり

   (空間処理能力)=(知ってる原型S0の個数)×(S1を再構築する力).

したがって,立体が苦手な人のとるべき対策は2つあります.1つは再構築する力を磨くことですが,これはやはり生まれ持っての才能や幼少の頃からの体験の蓄積によって決まる部分が多く,受験勉強に入ってから飛躍的に伸びることはあまり期待できないと思います.そこで第2の対策.わかりますね.知っている原型S0の数を増やすのです.そうすれば新型S1を再構築する負担は軽くなるわけです.
実際のところ,入試である程度以上の頻度で出題される立体はけっこう限られています.ですから今まで学んできたそれら頻出立体図形に関する知識を整理し,記憶に定着させれば,立体が苦手な人もある程度は何とかなるものです(これは経験から確信しています).もちろん入試では,このプリントには載っていない立体だって出るでしょうが,多くはここにある“原型”をもとにして試験場で少し考えれば再構成できると思います.

というわけで,電車で立ち読みでも何でもいいのでとにかくしょっちゅう眺めて,立体のイメージを目に焼き付けて下さい.そして,ときどきプリントを真似て図を描く練習をしてみて下さい.原型S0の数が徐々に増え,「立体」に対する嫌悪感・恐怖感が少~しずつ少~しずつ(催眠術のように)薄らいで「立体そのものと向き合おう!」という勇気が沸いてくればしめたものです.(管理人も大喜びにゃん.)  
 

以下,ついでに空間図形の図示において重要なことを述べておきます.
一番大事なこと,それは大きく描くことです.立体が苦手な人ほど気持ちが逃げてしまって図が小さくなり,よけいわからなくなるという悪循環に陥りがちです.
あと,原則として定規は使わず,“フリーハンド”で描くこと.こうすると「手」の動きを「脳」がコントロールしなくてはいけないので,自然と頭が鍛えられます.(コピーとるより,写経した方がいいんです)
以上を前提に,「見取り図」「断面図」の描き方について話します.

●見取り図
プリントのA「基礎知識」(1)にも書いた通り,立体図形(3次元)そのものを紙or黒板(2次元)に描く際の(私にとっての)基本は「平行投影」,つまり立体Sに平行光線を当て,平面π上に映る影S' をそのままなぞってキャンバスに描く図法です.このとき押さえるべきポイントは「Sにおいて平行な2直線はS' においても平行」「同じ方向の線分比はSとS' とで変わらない」の2点です.
逆に言うと,その2点しかありません.Sで90°だった角がS' では50°くらいに見えたり,Sでは同じ5cmだった(方向の異なる)線分が,S' では5cmと2cmに見えてしまったり・・・.なので,「見取り図」を描く作業は,ある程度イーカゲンでかまいません,っていうかそうならざるを得ません.目標とする点とか直線とか平面とかが,立体Sの中でどのように位置づけられているかをおおまかにイメージするための図と割り切り,おおらかな気持ちでデッサンしましょう.ただし大きく!(プリントの見取り図のほとんどはTeX用描画ソフトWinTpicに数式を入力して正確に描いてありますが・・・)

●断面図
いま,たとえば立体Sの中にある線分ABの長さを知りたいとしましょう.その場合には,線分ABに関する情報をできるだけ正確に表した図が欲しいですね.その際には前述したS' の大雑把なデッサンでは不適当.そこで,立体Sの全体像・空間的イメージはS' に任せ,注目したいABを含むある平面 α を“切り出して”考えます.この断面 α 上の図形を描く際には気分一新!!平面図形を平面である紙に描くのですから,すべての「長さ」,「角」をビシッと正確に描くつもりで臨んでください.(もちろん,人間のフリーハンドでは限界がありますが,可能な範囲でね)
空間といえども,個々の目的に応じて注目すべきものはけっきょく1つの平面です.いつまでもイーカゲンな見取り図と格闘していないで,早く平面上の作業に帰着させること!空間図形が苦手は人はとくにココを意識的にやって下さい.

ふぅ~.書いてるうちにあつくなっちゃったにゃ.(しごとせにゃあ)


注意

プリント貯めても何にもならん.プリント読んでもどうにもならん.
数学脳は,手を動かさんと働かん.



ダウンロード (pdf)

トップへ