真夏の幾何
現場の先生の間でもっとも評判が良い“定番モノ”の参考書といえば,おそらく「理解しやすい数学○○」シリーズだろう.その著編者である藤田宏先生が,前記シリーズ「Ⅰ+A」の中で,日本初のノーベル化学賞受賞者であらせられる福井謙一氏の言葉を引用されている.ここで,その言葉をさらに引用させていただく.
「科学者になろうとする者が若いうちに熱心に数学を勉強すれば頭がよくなる.それも単純な計算に励むのではなくて,幾何の証明問題や作図問題などで,長時間一心不乱に考えることが大切である.その挙げ句,ヒラメキがあって解けた時には,大脳が進歩するであろう.
(筆者注:たとえ解けなくても,である.)あたかも,電極にかける電圧を上げて行って臨界値に達したときスパークが飛ぶ,そのスパークが飛ぶごとに電極自身が成長するようなものである.」
私も同感である.そこで,次の問題を,汗だらだら流しながら「長時間一心不乱に考え」て欲しい.解けるまで,各問最低1時間は粘るように.(ほんとはもっともっと粘って欲しいが・・・)
何回も同じことを考え,何回も同じところで行き詰まり,そのうち何が仮定(既知)でなにが結論(未知)かが混乱してきて,それを1から整理しなおして・・・.そうこうしているうちに,いつの間にかこの問題の“スペシャリスト”になっている自分を発見することだろう.とても手に負えそうになかった問題が,長時間,繰り返し考え続けることによって,たとえ解けていなくても手触りを感じられるものへと変貌しているという・・・そうした実体験こそが,数学を学ぼうとする意欲,あるいは今後出会うであろう様々な困難に立ち向かう勇気の源泉となる.
それでは,電極からスパークが飛ぶことを祈る.
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←解答が目に入ってしまわないよう注意.(全3ページ.解答は2・3枚目)