MS-1006 FET差動増幅回路によるheadphone/line amplifier [June, 2010]


 ぺるけさんが設計されたFET差動増幅回路によるheadphone ampが基板つきの本になったのを機会に作ってみることにしました。半導体は手持ち部品から選定したため、原回路とは大きく違います。

 上の写真でわかる通り、各社混在もいいところで、初段のFETは2SK130A(NEC:IDSSで選別), 足許の定電流回路は2SC829(松下:実測hFE 85), diamond bufferの初段は2SA950/2SC2120(東芝, 実測hFE 220)で、出力段が2SA1358/2SC3421(東芝、原回路通り, 実測hFE138/137)となっています。今回の製作で新規に購入したのはケースとリレーのみ。後は全部手持ち部品の活用です。
 本家でVersion 3が発表されましたが、改造を先送りしていました。やっと完了したので、上の写真も回路図も差し替えました。特に、回路図には大きな誤記があったので、古いのは残していません。他の写真は旧版のままです。改造したついでに、channel間のgainを揃える微調整を施しました。改装後の回路図はこちら
各社がdiscrete半導体を作っていた時代を偲んで、"電子立国日本の自叙伝"ampと命名しました。
 
完成した基板を示します。AC給電で、安定化電源を空き地に組み込みました。LM317には念のために放熱板をつけています。試運転の結果、放熱板がほのかに暖まるところから、つけていても邪魔ではないと判断しました。電解コンデンサは手持ち品を使ったため、少し太すぎてきれいに並びませんでした。左右で配列が違うのは、製作者の性格をよく示しているところです。  基板の裏面です。アースが少し弱い感じがしたので、配線を追加しています。電源部は既存のpatternを利用し、乗らない部品は裏付けしています。
抵抗の一部は手持ちの都合から、複数本を組合せたところがあります。
Bridge diodeの空間が気になって寸法の合う電解コンデンサを搭載しました。やりすぎですが...。
次はケース加工です。設置場所の都合上、幅200mm, 奥行250mm程度を目安に探しました。Ideal製でごく安いものです。パネルが外せるし、板が薄いので加工は簡単。前面板には透明filmで文字を入れました。filmが相当古いもののため、接着剤が劣化していて、縁が浮き上がってきています。  部品を取り付けたパネル裏面を示しています。RCA jackは絶縁型、出力のphone jackが接地形なので、自動的にケースアースは前面板のjack部になります。
Headphoneはjackにつけたままにして使う習慣に対応して、出力を切換えるswitchを設けました。
確実に金属部品を接地する事情もありますが、何より機械強度に不安があったので前面・背面ともに、パネル下面に穴を追加。ケースの底板とビスで固定できるようにしました(矢印)。部品と干渉しないように位置を決めたため、前後で穴位置が異なっています。
基板を組み込みました。電源トランスには銅帯を巻いています。あまり雑音防止に効果がないと言われていますが、習慣なので迷うことなく加工。RCA jackの後ろにあるのはrelayの基板です。前後のパネル間に信号線を往復させたくないと、ケースに入ったところで切り換えてしまう構成にしました。RelayはDC12V用で、+側の電源からdiode一個分電圧を落として使っています。
背面パネル側の配線を眺めたところ。
line amp用の負荷抵抗は出力切換えswitchに実装したので裏側は閑散としています。Relay基板とswitchの接続は4芯cordで出自は壊れたmouseから。細い線材ですが、大電流でもないし問題ありません。
 信号線はこれも習慣で、シールド線を使っています。二芯ですが、L/Rは共用せず、一芯を信号に、他芯はgroundに、外皮は片側だけgroundにつなぎます。もったいないですが、不要なloop形成を防ぐには確実な手法です。

 完成。こんな風に設置したい事情から、ケースの形状に制約がありました。もう少し頑丈なケースにすれば、他の機材と重ねても心配なく使えるでしょう。肝心の音質ですが、以前に作った真空管方式(MS-0488)に比べると少しおとなしい感じがします。仕上がり利得が適切で、音量調整が気持ちよくできます。MS-0488は利得過剰なので、いずれ直さねばなりません。
追加工事 [December, 2010]
 約半年使ってきて、不便な点を二カ所改善しました。
(1) 標準ジャックに改装: このampに常時つながっているのがAKG K701になってから、いちいち変換plugを経由するのがわずらわしくなりました。前面panelの穴を拡大して、実装しています。たまたま金メッキのしか手持ちがなくて、不必要に派手な外観になりました。

(2) 外部電源制御端子の追加: line ampの機能も持たせたくせに、電源の制御を忘れていました。このampに連動して外部電源をon/offするための接点出力をrelayで追加。
Lineに切り換えたときだけ動作すればいいので、Line/Headphone切り換えswitchを回路数の多いものに交換し、relayを連動させるように改造しています。
連動電源回路の製作 [December, 2010]
本体側の改造が終わったところで、連動する電源回路を組み上げました。古いPC用switching電源の筐体を流用しています。ACの入出力端子がそのまま使えたのが、選定要因です。  電源基板の入っていたところに、relayと駆動回路を組み込み。元の基板固定穴を使って、回路部分を実装したAl板を固定しています。放熱孔の一つを拡大してfuse holderを実装。
小型の電源トランスから出てくるAC9Vを整流して本体側の接点で12V relayをon/off。relay接点が大型のAC100V relayを動かします。
 電源の銘板。1989年製で、この時代のswitching素子はbipolar transistorでした。

 2017年11月、ときたま誤動作するようになったため制御基板を交換しました。左下が元の基板です。
 新しい基板では、電解コンデンサの容量を倍にしました。
回路図も差し換えています。
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