MS-0488 ECC88 headphone amplifier [December, 2004]

 Morgan Jones著 "Valve amplifers"は、何度も改版を重ねて充実した内容の参考書になっています。
 ここで紹介されているWhite cathode followerを応用したheadphone amplifierは、追試する人が多くWeb siteでもいくつかの製作例があります。
 たまたま、この時期自宅を離れて暮らす必要があったため、手持ち部品の在庫消化と短期間でまとまる工作のテーマにしてみました。

リンク: Morgan Jones amplifier
 概要: ECC88は別名の6DJ8を含めると手持ちが30本ほどありました。ここからTV-7Dで特性の揃った球を抽出し、Philips ECG製に決定。他の製作例と大きく違うのは電源部で、heater/高圧とも半導体式の定電圧電源にして、雑音管理に努めました。電源トランスはジャンク出身と在庫のあった中国製(香港の電気街で購入)の組合せです。
 工作は自宅で行い、完成したら一人住まいに持って行くため、小型にまとめる必要がありました。もっとも、headphone ampがかさばるようでは、いささか本末転倒です。
回路図
(クリックで拡大)
回路図: 増幅部は他の方の作品とほとんど違いません。回路定数が手持ち部品の都合で変更になっている程度です。
電源部はheaterを直列でDC点火。これは、高圧電源の整流出力電圧が期待したほど上がらなかったのを受けて、多少なりともかさ上げする必要があったのと、他に使い道のない電源トランスがジャンク箱から発掘されたことによります。
高圧電源の安定化回路はJA9TTT/1 加藤さんがsiteで紹介されていたFETとLM317の組合せの応用回路です。
完成したアンプ[クリックで拡大]
左が前面で増幅部が入っています。右手前の基板の下にheater電源のトランスが隠れています。基板の奥が高圧電源の安定化回路を乗せた平ラグ。シャーシの縁についているのは、後から追加した高圧整流部の電解コンデンサ。右に二つ並んでいるトランスが、高圧用の中国製。容量が12VAしかないため、二個を並列運転。銅帯を巻いて、多少なりともシールドしたつもり。 
増幅部の拡大。と言っても部品が重なり合っていてほとんど見えないので、下にサブシャーシの写真を載せます。
反対側から[クリックで拡大]
スペース的には、これでぎりぎりです。

アンプ部のサブシャーシ。ソケット周辺に立ラグを設け、立体的に配線。大型の電解コンデンサはシャーシに接着しています。gmの高い球なので、グリッド周りの処理が重要です。安易に引き回すと簡単に発振器に化けます。
高圧電源の安定化回路。当初、ユニヴァーサル基板で組んだのですが、期待した電圧が得られず、完成を急いだため、平ラグで作り直しました。後日、最初の基板をチェックしたところ、抵抗の誤実装(値を二桁間違えた)を発見。手直しして正常に動作するようになりました。
この回路で、整流出力228Vを208Vに安定化しています。
負荷電流はステレオ分で41.6mAでした。

高圧用の電源トランスは、本来220Vから110Vに降圧する用途のもので、これを一次巻線と二次巻線をひっくり返して昇圧に使っています。効率が下がってしまうため、220V巻線に現れる交流電圧は170-180V程度で、これを整流しても220Vくらいにしかなりません。

この作品では、heater点火用にAC17Vを整流した分をかさ上げしたうえ、少しでも整流出力を上げるために、平滑用のコンデンサを増量しています。200uFを二個追加することで、10Vほど稼げました。
あまり見せたくありませんが、上の基板の裏面です。一部の部品が回り込んでいます。
アンプの前面。文字は透明フィルムにプリンタで出力したものを貼り付けました。この作品が初めての試みです。
出力のジャックがシャーシに落ちる構造のため、ここをシャーシへの一点アース点にしています。電源を安定化した効果もあって、雑音は全く聞こえません。
 
こちらが背面。信号がこのアンプに寄り道して抜けていけるように、端子が二組ついています(内部で並列接続)。
一人住まいでの設置状態。使い勝手から、つまみが変更されています。
自宅に戻り、DATに録音した信号の処理(最後はPC用digital data)に動員されたときの集合写真。
機材は見事なまでに寄せ集めですが、目的は十分に果たせました。
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