サウスタウン。タクマが道場を目指し歩いている。 


タクマ 「人が多いな。裏道を回るとしよう・・・!」 


 その場には不似合いな気がタクマに近づいてくる。 


タクマ 『何だ・・・?これは・・・間違いなく殺気!』 


 辺りを見回しながら歩くが、どこから気が漂ってくるのか分からない。徐々に薄れていく殺気。 


タクマ 『離れて行きよったか・・・』 


 緊張を緩めようとした瞬間、生臭い血の匂いを伴いながら、再び殺気がタクマを襲う。 


タクマ 「ぬぅッ!!」 


 思わずファイティングポーズを取るタクマ。殺気の出所らしき男がタクマのすぐ横を通り過ぎる。 


タクマ 「!!」 


 しばらくその場を動けないタクマ。我に返って見回すが、男は人込みに紛れて姿を消す。 


タクマ 「見失ったか・・・。何者だ?あれほどの殺気を持つ男、久しく見たことがない・・・」

 


 極限流道場。ロバートが車から下り、道場に入ろうとしている。 


ロバート 「さぁて、今日は弟子に稽古つけたらなあかんな。あ・・・ん?えらい静かやな。誰も来とらんのかいな?」 


 いつもなら騒がしい道場が、異様なまでの静けさを漂わせている。玄関を開けようとした瞬間、横に立てつけてある看板がミシミシと音を立てる。 


ロバート 「ん?何や?」 


 ロバートが視線を看板に移した瞬間、看板が粉々に弾け飛ぶ。 


ロバート 「!!」 


 道場の中へ急ぐロバート。道場に入るや漂ってくる血の匂い。辺りを見ると、門下生が所々で倒れている。 


ロバート 「何や?どういうことやねん?」 


 抱き起こして声をかける。死んではいないが、反応はない。そこにタクマが帰ってくる。 


タクマ 「!!ロバート!何があった!?」 


ロバート 「師匠!それが・・・ワイにもさっぱり・・・。来たらこないなザマですわ」 


タクマ 「誰が・・・!この匂い!」 


 道場に向かう途中、すれ違った男の姿が脳裏をよぎる。 


タクマ 「奴か!」 


ロバート 「奴?師匠、誰のことです?」 


 ロバートの質問には答えず、ただ立ち尽くすタクマ。

 
数日後、極限流道場。リョウがロバート、ユリの二人と向き合って正座している。 


ユリ 「お兄ちゃん、お父さんはどうしたの?」 


 目を閉じたまま、静かに答えるリョウ。 


リョウ 「道場を出た。今朝だ」 


ロバート 「道場を出たぁ?どこへ行ったんや?」 


リョウ 「分からん。一人で道場破りを探し当てるらしい」 


ロバート 「探し当てる言うたかて・・・、リョウ、お前それ聞いときながら黙って行かしたんかいな?」 


ユリ 「そうよ、私たちにも黙ってくなんてひどいよ!」 

 
静かに目を開くリョウ。 


リョウ 「何も黙って行かしたわけじゃない。俺達がこれからすべき事は聞いている」 


ロバート 「これからすべき事?」 


リョウ 「そうだ」 


 懐から封筒を取り出し、二人に差し出す。 


ユリ 「これは・・・」 


ロバート 「キング・オブ・ファイターズの招待状やないか!」 


リョウ 「そうだ。残された俺達はキング・オブ・ファイターズに出場する。そして大会優勝を果たし、極限流の威信を回復する!

これが親父から出された指示だ」 


ユリ 「極限流の威信回復・・・」 


ロバート 「そういうことか・・・。しかし、大丈夫やろか?師匠一人でどこのどいつかも分からん奴を探すやなんて・・・。何か手がかりでもあるんかいな?」 


リョウ 「細かいことは言わなかったが、それらしき男の姿を一瞬だけ見たらしい。ダウンタウンにでも潜り込んで探す気だろう」 


ユリ 「うまく行けばいいけど・・・」 


リョウ 「大丈夫だ。親父ならうまくやるさ。それより今は俺達だ。どうする?大会出場は?」 


ユリ 「私は構わないよ」 


ロバート 「ワイもええで。それが師匠の言いつけやったらなおさらや」 


リョウ 「よし、改めて確認するぞ。リョウ・サカザキ、ロバート・ガルシア、ユリ・サカザキの三名は極限流館長、タクマ・サカザキの命を受け

キング・オブ・ファイターズに出場、大会優勝を果たし、極限流の威信回復を図る。

なお、館長不在の間は師範代リョウ・サカザキ、ロバート・ガルシアの両名が館長代理を務め、道場運営の一切を取り仕切る。いいな!」 


ユリ・ロバート「押忍!!」