イギリスのキングのバー《イリュージョン》に設置されているTVには、大会開催について神楽ちづるの会見が放送されていた。

 


ちづる 「・・・すでに、各種メディアにより発表はされているとは思いますが、キング・オブ・ファイターズ'97年大会を開催することを

改めてここに報告させていただきます」 


記者1 「大会の規模の方はどうなるんでしょうか?」 


ちづる 「前回より規模の方は大きくなる予定です」 


記者2 「規模が大きくなると、前回のようなハプニングが起こった場合の対処が難しくなると思うのですが、その辺どうなんでしょうか?」 


ちづる 「前回以上に警備面も強化し、安全に大会が行なわれるようにします」 


記者3 「96年大会では、決勝戦後ちづるさんも闘われていましたよね?で、巷では今大会に参加するのではないかと噂になっているのですが、

その辺はどうなんでしょうか?」 


ちづる 「それに関しましては、チーム等の詳細は決まっていませんが、参加するのは確かです」 


 ガヤガヤガヤ 


記者4 「参加目的は?」 


ちづる 「私も一応格闘家なので、力試しをしてみたいと思いまして」 


記者5 「まだ、決まってないとのことなのですが、誰と組むかの予定はありますか?」 


ちづる 「そうですね、名前はまだ申し上げられませんが、皆さんも知っている格闘家さんに交渉をする予定はあります・・・」

 


キング 「ふ−ん、神楽も参加か・・・まぁ、関係ないけどね・・・」 


 キングはカウンターからその会見の放送を見ていた。すると、ウェイトレスのサリーが、手に何か持ちながらキングの元に来た。 


サリー 「キングさん、手紙がきましたよ。はい、これ」 


キング 「あぁ、ありがとう」 


 キング宛てに届いた一通のエアメール、送り主は『不知火 舞』と書いてある。 


キング (舞から?なんだろう) 


 とりあえず、キングは中身を見ることにした。 


キング (航空チケット?) 


 中には、一通の手紙と日本行きの航空券が入っていて、その手紙は「キング・オブ・ファイターズの話があるので日本に来て下さい」というような内容であった。 


キング (・・・何か変だな。まぁいい、私も舞に話があるから行ってみるか) 

 
それから数日後、キングは日本にいた。

手紙に載っていた地図を頼りについた先は、ちょっとした喫茶店で、ガラス越しに舞が先に来て待っているのが見える。 


舞 「あ、お久しぶりです、キングさん」 


キング 「久しぶりだな」 


舞 「ところで、店の方は大丈夫なんですか?」  


キング 「あぁ、『サリー』と『エリザベス』に任してきた」 


舞 「あの双子のウェイトレスさんね。へーそうなんだ。でね、早速キング・オブ・ファイターズの話なんですけど。メンバー集まりそうにないんです」 


キング 「香澄は?」 


舞 「それが、香澄ちゃんに連絡とろうとしたんですけど、またお父さんを探しに行くとか言って出ていっちゃったらしいんです」 


キング 「・・・は、はぁ・・・そうなんだ」 


舞 「ユリちゃんは、また組めなくなっちゃったみたいだし。いろいろと他の人にもあたってみたんですけど、全然ダメだったんですよ」 


キング 「そうか」 


舞 「それでね、今回、私出場するの辞めようと思うんです」 


キング 「珍しいな。いつもはりきってメンバー集めてた舞が、諦めるなんて」 


舞 「本当は出たいんですけど、メンバー集まりそうにないですから。


今回もどうせアンディが3バカトリオで出場すると思うんで、応援しに行こうかなと」 


キング 「そうか、ちょうど良かった。私もね、今回辞めようと思うんだ」 


舞 「そうなんですか?」 


キング 「実は、夏に休暇をとってジャンと旅行に行く計画なんだ。ジャンも今までずっとああだったからさ、一度も旅行に連れて行ったことがなかったんでね。

それに、前回出場してから店が有名になっちまってさ、忙しくなったろ、だからせっかく元気になったのに、全然かまってやれなかったから・・・」 


舞 「なるほど・・・。ジャンくん喜んでるでしょ」 


キング 「いや、まだ言ってないんだ、まだ計画中なんでね」 


舞 「そっか。でも、こんなにすんなり決まるんだったら、電話の方が早かったね」 


キング 「そうだな。わざわざ飛行機のチケットまで用意してくれたのにな」 


舞 「ヘ?チケット?何それ?」 


キング 「舞からの手紙に入ってたぞ」 


舞 「手紙?キングさんからのは届いたけど・・・」 


キング 「いや、手紙なんて出してないが・・・」 


女 「私が二人をお呼びしたのです」 


舞・キング「!?」 

 
舞とキングが声の方に振り向くと、そこには数日前会見していた女性が立っていた。 


女 「お久しぶりです、キングさんと舞さん」 


キング 「あんたは・・・神楽ちづる・・・なるほど。やはりそうだったのか」 

 
と言うと、自分宛てに届いた手紙を舞に見せた。 


舞 「これは・・・」 


キング 「この手紙に飛行機のチケットが付いて送られてきた。どうも変だとは思ったんだ・・・どうせ、舞のところにも似たような手紙が届いたんだろ?」 


舞 「えぇ。私もおかしいと思ったんですよ」 


ちづる 「ごめんなさい。こうでもしないと来ていただけないと思ったんで」 


舞 「まぁ、前回は大変な目にあったし」 


キング 「もし、あんたの名前が書いてあったら来てたかどうか疑わしいのは確かだね。

またわけの分からないごたごたに巻き込まれるのは、御免だからな。でも、こうして会ってしまった・・・どうせ、会見の時の話だろ」 


舞 「あぁ、メンバーの話ね」 


ちづる 「そうです。前回見せて頂いたあなた方の力を見込んで、一緒に出て頂けないでしょうか」 


舞 「うーん・・・まぁ・・・私は別にいいんだけどね。キングさんは?」 


 と、たずねると、キングはしばらく考えていた様子であったが、次のように答えた。 


キング 「・・・他をあたってくれないかな。出たいのはやまやまなんだけど、今年はジャンにいい思いをさせてやりたいんだ」 


舞 「・・・じゃあ、キングさんが出ないのなら私も辞めておきます」 


キング 「舞・・・」 


ちづる 「そうですか・・・。一応、各会場に行くチケットは四人分用意させてもらおうとは思っているのですが・・・」 


キング 「四人分?」 


ちづる 「あなたの弟さんの分ですよ」 


キング 「ジャンの分?」 


舞 「あ、なるほど。これなら、ジャンくんと旅行を兼ねて参加出来るってことね」 


キング 「・・・でもな・・・それに、ジャンは、こんなので喜んでくれるのだろうか?」 


舞 「えぇ、闘ってるキングさんが誇りだって言ってたんでしょ?なら闘ってる姿を会場で見せてあげたら喜ぶんじゃないかな?」 


ちづる 「どうでしょう?出ていただけませんか」 


キング 「・・・」 


舞 「キングさん・・・」 


キング 「・・・あぁ・・・分かった、出場するよ。その代わり、ジャンにいろんな所見せてやるためにも、勝ち進んで全国の会場を回ってもらわないと困るけどね」 


舞 「任せといて下さいよ。目指すは優勝ですから」 


キング 「そうだな・・・。じゃあ、ちづるさんよろしく頼むな」 


舞 「よろしくね」 


ちづる 「えぇ、よろしくお願いしますね」