チームストーリー



 国際線機内。何やら楽しげなジョー。それとは対照的に憂うつな表情のアンデイ。 


ジョー 「ん?どうした?浮かないツラして」 


アンディ 「どうしたもこうしたも・・・。僕はいいんだ。父さんの墓参りっていう目的があるからね。

けど、お前は違うだろ?何の目的もなしにどうして僕についてくるんだ?」 


ジョー 「何の目的って、つれねぇなぁ。一緒に出ようぜ、キング・オブ・ファイターズによ」 


アンディ 「嫌だ。次の大会ではシングル出場して、世界に俺の名前を知らしめるって息巻いてたじゃないか。あれは何だったんだよ?」 


ジョー 「いやいや、あれは嘘じゃないんだぜ!?俺としてはそうしたかった。だがな、世の中にはうまくいく事とそうでない事があるんだ。

今回はたまたま後者だったってことさ。俺としてはそういった何ての?運命・・・ま、なんでもいいや。

とにかくそういったことにはあんまり逆らわんことにしてんのよ。かと言ってだな、最初に立てた目的がスタートからつまずいたと言って全てを諦めてしまう。

これはこれで前向きとは言えない、そうだろ?」  

 
溜め息をつくアンディ。 


アンディ 「おまえの言うことはいちいちもっともだと思うよ。それはそれでいいだろう。

けどな、その"前向き"って奴をどう考えたら、僕達がおまえとチーム出場するっていうことにすり替わるんだよ?」 


ジョー 「出場するにはチームじゃないと駄目なんだ。シングル出場は叶わない。でも出たい!それを前向きに捉えたらこういう結果が出てくるのは当然だろ?

何も無理に闘えって言ってんじゃないんだぜ。いやならいいんだよ。俺が全部片づけちゃうからよ。

とにかくメンバーがいなくちゃ話になんないんだよ、分かるだろ?」 


アンディ 「僕は承諾した覚えはないぞ!兄さんだってそうだ。それに・・・!」 

 
アンディの口を塞ぎシートベルトを着用させようとするジョー。 


アンディ 「おい・・・!ジョー!」 


ジョー 「静かにしろよ。もうすぐ着陸だぜ。他のお客様の迷惑も考えろってーの」 


 辺りを見回すアンディ。他の乗客がアンディに注目している。ばつが悪そうに黙り込むアンディ。

 

 墓地。テリーが父、ジェフ・ボガードの墓の前で祈りを捧げている。テリーに近づいてくる足音。女性が声をかけてくる。 


マリー 「どうしたの?こんなとこで」 

 
静かに目を開き、マリーの方に体を向ける。 


テリー 「なんだマリーか。久しぶりだな。おまえこそどうしたんだ。こんな所で?」 


マリー 「たまたま通りがかったのよ。そうしたら珍しい顔があるじゃない。声をかけたってわけ。なに?誰かのお墓参り?」 


テリー 「ああ、親父の命日でな。ところでこっちにはいつ?仕事か?」 


マリー 「昨日の夜に。今日は仕事の話でこっちに来たのよ」 


テリー 「こっちで仕事か。忙しくて結構なことだな」 


マリー 「忙しくて結構か・・・。ま、そうでもないんだけどね」 


テリー 「なんだ?そんなに厄介なのか、今度の仕事は?」 


マリー 「まぁね。あなたのところにも届いているんじゃないかしら?これ」 


 言いながら封筒をテリーの方に差し出すマリー。 


テリー 「キング・オブ・ファイターズか。いや、俺にはまだだ。で、出場するのか?」 


マリー 「ええ。けど、出場するのが目的じゃないのよ。今回は一緒にチームを組む奴の調査」 


テリー 「チームメイトの調査?穏やかじゃないな。誰だい、その相手は?」 


マリー 「驚くわよ」 


テリー 「?」 


マリー 「山崎竜二・・・」 


テリー 「山崎!?よりにもよってか?」 


マリー 「どこに潜伏してるか分かんない奴よ。それを追っかけ回すなんて考えただけでも気が遠くなるわ。

そうしてるところにクライアントから情報が回ってきたの。山崎がビリーとチームを組みそうだって」 


テリー 「ビリー!?ビリー・カーンか?」 


マリー 「そう。ビリー・カーン。その情報が正しければ、そこに潜り込んだほうが手っ取り早いって考えたわけ。まあ、事は思ったよりうまく運んだわ」 


テリー 「組めたのか、チームを?」 


マリー 「ええ。結構すんなりと」 


テリー 「山崎にビリー・・・。何かキナ臭いな」 


マリー 「そう、そこなのよ。私もどうもそこが気になってるの。いつもはクライアントの素性なんて関心持たないんだけど、今回だけは・・・ね。

何か大きな組織が絡んでるんじゃないかなんて・・・、例えば・・・」 


テリー 「ギース!」 


 黙ってうなずくマリー。 


テリー 「ギースは出場するのか?」 


マリー 「いいえ。今回は出場しないわ。その代わりにビリーを出してきた、と考えられないかしら?」 


テリー 「目的は?」 


マリー 「それが分かればいいんだけど、今は何とも言えないわね」 


テリー 「ギースが裏で手を引くものなら、俺も探りを入れたほうがいいかも知れないな・・・?」 


 気が付くとマリーがいない。振り返ると、墓地の入り口に停めていたバイクにまたがってエンジンをかけている。 


マリー 「とりあえず大会に出場して様子を見ることにするわ。それじゃ・・・今度は大会で会うことになるのかしら?」 


テリー 「ああ、多分な。あんまり無理をするなよ。相手が相手だからな」 


マリー 「ありがとう。あなたこそ途中敗退なんてことのないようにね!」 


 墓地を去るマリー。テリーもその場を離れようとする。背中越しにテリーを呼ぶ声。 


ジョー 「おーい、テリー!」 


テリー 「ジョーか!どういう風のふきまわしだ?」 


 ジョーを追い抜いてアンディが叫ぶ。 


アンディ 「兄さん!駄目だよ!こいつの言うことに取り合っちゃ!」 


 ようやくテリーの所にたどり着く二人。アンディを制して、ジョーが話を切り出す。 


ジョー 「テリー、出ようぜ。キング・オブ・ファイターズに!」 


アンディ 「駄目だ。動機が不純すぎるんだよ、お前は!」 


ジョー 「何を細かいこと言ってんだよ?舞ちゃんに嫌われるぜ?」 


アンディ 「舞のことを言うな!」 


ジョー 「なっ、いいだろ?テリー?」 


アンディ 「駄目だよ!兄さん!!」 


テリー 「乗ったぜ、その話」 


ジョー・アンディ「えっ!?」 


テリー 「出よう。キング・オブ・ファイターズに!」 


ジョー 「ヨッシャア!話が分かるぜ兄貴はよぉ!」 


アンディ 「何なんだよ・・・兄さんまで」 


テリー 「アンディ、まぁ、そう言うな。ところで、お前達腹減ってんじゃないのか?パオパオカフェでランチといこうぜ。細かいことはそこでゆっくり話すからさ」 


ジョー 「よーし、行こう行こう。ほら、アンディ!行くぞ!」 


アンディ 「全くどうかしてるよ。ジョーも兄さんも・・・」