Title9-3.GIF (2758 バイト) ローマ人の物語XII         

[ 参考書籍 ]      

〜 読書記録(目次、概略、感想) 〜

『ローマ人の物語XII 迷走する帝国 』

塩野 七生 著

新潮社 2003年12月15日発刊

目 次

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第一部 ローマ帝国・三世紀前半

  第一章(紀元211年〜218年)

皇帝カラカラ/誰でもローマ市民/「既得権」と「取得権」/「取得権」の「既得権」化による影響/帝国防衛/ローマのインフレ/パルティア戦役/機動部隊/メソポタミアへ/謀殺/皇帝マクリヌス/撤退/シリアの女/帝位奪還

  第二章(紀元218年〜235年)

皇帝ヘラガバルス/皇帝アレクサンデル・セヴェルス/法学者ウルピアヌス/六年の平和/忠臣失脚/歴史家ディオ/ササン朝ペルシア/再興の旗印/ペルシア戦役(I)/兵士たちのストライキ/第一戦/ゲルマン対策/ライン河畔

  第三章(紀元235年〜260年)

皇帝マクシミヌス・トラクス/実力と正統性/元老院の反撃/一年に五人の皇帝/実務家ティメジテウス/東方遠征/古代の地政学/皇帝フィリップス・アラブス/ローマ建国一千年祭/皇帝デキウス/キリスト教弾圧(1)/蛮族の大侵入/ゴート族/石棺/蛮族との講和/ゲルマン民族、はじめて地中海へ/皇帝ヴァレリアヌス/キリスト教弾圧(2)

 

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第二部 ローマ帝国・三世紀後半

  第一章(紀元260年〜270年)

ペルシア王シャプール/皇帝捕囚/ペルシアでのインフラ工事/皇帝ガリエヌス/未曾有の困難/ガリア帝国/パルミラ/帝国三分/一つの法律/「防衛線」の歴史的変容/軍の構造改革/スタグフレーション/“タンス貯金”?/不信任/皇帝クラウディウス・ゴティクス/ゴート族来襲

  第二章(紀元270年〜284年)

皇帝アウレリアヌス/反攻開始/通貨の発行権/「アウレリアヌス城壁」/ダキア放棄/女王ゼノビア/第一線/第二戦/パルミラ攻防/ガリア再復/凱旋式(triumphus)/帝国再統合/皇帝空位/皇帝タキトゥス/皇帝プロブス/蛮族同化政策/皇帝カルス/ペルシア戦役(2)/落雷

  第三章 ローマ帝国とキリスト教

 

概 略

 1世紀(前後128年)には9人の皇帝、2世紀(前後113年)で6人の皇帝が在位した。それに対し、本書の対象である3世紀(73年)で22人の皇帝が廃立した。 内部的な混乱に加え、パルティアに代わったササン朝ペルシアがアレクサンドロス以前のアケメネス朝の領土回復を旗印にローマ帝国領土への侵略を始めた。弱体化したところへガリア帝国、パルミラが分離独立的な動きをするなど、さらに混乱した。

 通貨価値の下落、ゲルマン人侵略による地方の荒廃などに対して、政治、軍事、経済における体制立て直しを行った。しかし、それは順調に改革ができたわけではなく、次第に迷走の様相を呈していく。

感 想

国家的な危機を何度も乗り越えてきたローマであったが、3世紀の混迷にあたっての対策は、軍事面の実績は挙げたものの、国家体制の面ではむしろ結果的に弱体化への選択になった。 カラカラ帝の属州民へのローマ市民権付与がその一つ。平等化で上へ這い上がろうとする活力もなくなり、上に立つものの責任感も失ってしまった、という視点は塩野七生らしい分析である。

2004.4 読了


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