史観の歴史 | 探究テーマ史 #18 |
史観とは、歴史に対する根本的な見方、考え方、捉え方である。 これによって史学史が形成される。 また歴史観には、歴史の全体の叙述を組み立てる構想力や、歴史の大きな流れをつかむ直観力のようなものもある。 歴史観の根底にはしばしば歴史哲学がある。 |
時代 | 欧 州 | 日本・アジア |
古代 | 循環史観(古代ギリシア) | |
中世 | 救済史観(キリスト教) | 権門体制論/東国国家論(日本武士社会) |
18世紀 | 進歩史観 | |
19世紀 | ヘーゲルの哲学的歴史 | 皇国史観 |
マルクスの唯物史観 | ||
ナショナリズム史観 | ||
20世紀 | ||
21世紀 |
ヘーゲルの哲学的歴史 | 史観の歴史TOP | |
提唱者 | ヘーゲル | (1770年8月27日 - 1831年11月14日) |
概要 | ヘーゲルの歴史哲学は、歴史を人類が理性によって現状を克服し、精神の自由を実現させていく過程だと見る進歩主義の歴史観である。ヘーゲルは歴史考察のパターンを三つに分類する。事実そのままを同時代的に記録した「初歩的歴史」と、個人や民族、宗教など個別的な事柄を対象にしつつ、歴史から何かの意味や教訓を引き出そうとする「反省的歴史」、そして世界史そのものを大づかみに把握して、歴史を動かした指導原理や駆動力を見出して、思弁的に考察して思想によって整合化させつつ、全体史的に普遍的な原理に再構築した「哲学的歴史」とに分類した。ヘーゲルは自身の歴史認識は「哲学的歴史」に属していると位置付けている。 ヘーゲルは、近代市民社会の興隆という時代の変革期に生き、つねに歴史に関心を持ち続けた哲学者だったといえる。歴史というものがいかにして展開されていくのかという哲学的考察は近代化を経験するヨーロッパにとって非常に重要な関心事であった。ヘーゲルは自分の歴史観を「歴史の哲学」として位置づけつつ、哲学が歴史をどのように捉えるべきなのかを示すべく、世界史の展開を哲学的に述べるのに先立ってあらかじめ自分の歴史理解のスタンスを明らかにしている。 18世紀末の歴史哲学では歴史を科学の進歩と知識の増大にともなう人道的な理想の実現だと信じられるようになっていた。ヘーゲルは理性を重視する近代的な歴史観を弁証法という哲学で表現しようとした。序文の冒頭で「理性が世界を支配し、したがって、世界の歴史も理性的に進行する」と述べている。ヘーゲルは、理性が世界史の普遍的原理として、実在の世界とその歴史的展開をつくり上げるのだというテーゼを掲げている。 また、序文において人間現象は理性の絶えざる発展の運動であると指摘している。 「理性はおのれを糧とし、自分自身を材料としてそれ(世界)に手を加える。…理性の活動や生産は、理性の内実を外に現すことにほかならず、そのあらわれが、一方では自然的宇宙であり、他方では精神的宇宙―つまり、世界史―なのである。」 世界の全ての展開が、精神の営みとして生じる葛藤、そして葛藤を克服して完成を目指していく「総合」の運動(弁証法)のなかで形成されるというのがヘーゲルの見解であった。歴史は理性によって知られる目的、つまり理念に方向付けられ、世界史的な目標に向かって理性の導きのもとに進んでいくと見ていたのである。歴史の展開は「偶然の手にゆだねられるのではなく、明晰な理念の光のうちに展開する」と語り、法則性や合目的性を重視する立場を表明している。現実の人類史を法則主義的な歴史観で描写することが自然科学的な法則を浮かび上がらせ歴史の真理を解き明かすカギであると見ていたのである。 |
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時代背景 | ヘーゲルは、近代市民社会の興隆という時代の変革期に生き、つねに歴史に関心を持ち続けた哲学者だったといえる。歴史というものがいかにして展開されていくのかという哲学的考察は近代化を経験するヨーロッパにとって非常に重要な関心事であった。 | |
著作物 | 『歴史哲学講義』;ヘーゲル(1770年8月27日 - 1831年11月14日)による歴史の講義を弟子がまとめ編集した著作 | |
参考文献・関連リンク | ヘーゲル『歴史哲学講義』(Wikipedia) |
唯物史観 | 史観の歴史TOP | |
成立・編纂者 | カール・マルクス | (1818年5月5日 - 1883年3月14日) |
概要 | 19世紀にカール・マルクスの唱えた歴史観である。その内容は「人間社会にも自然と同様に客観的な法則が存在しており、無階級社会から階級社会へ、階級社会から無階級社会へと、生産力の発展に照応して生産関係が移行していく」とする発展史観である。 ヘーゲル哲学の弁証法(矛盾から変化が起こる)を継承しており、人間社会の歴史に適用された唯物弁証法(弁証法的唯物論)とも言える。またフォイエルバッハやフランス唯物論(英語版)者たちから唯物論を継承している。 資本主義経済の仕組みを分析したカール・マルクスは「歴史はその発展段階における経済の生産力に照応する生産関係に入り、生産力と生産関係の矛盾により進歩する」という考えに基づいて、唯物史観の概念を発展させた。生産関係とは、共同狩猟と食料の採集であり、封建領主と農奴の関係であり、資本主義段階における労働者と資本家の間に結ばれる契約というような概念である。マルクスは、生産様式、搾取、剰余価値、過剰生産、物神崇拝、資本の本源的蓄積などについて分析することで、19世紀当時の資本主義の論理を厳密に考察したのち、「資本主義はその内在する矛盾から必然的に社会主義革命を引き起こし、次の段階である共産主義に移行する」と考えた。 マルクスやマルクス主義者の理論は歴史の発展過程を以下のように説明する: 1. 社会の発展は、その社会のもつ物質的条件や生産力の発展に応じて引き起こされる。 2. 社会は、その生産力により必然的に一定の生産関係[注 2]に入る。それは社会にとって最も重要な社会的関係である。 3. 生産力が何らかの要因で発展すると、従来の生産関係との間に矛盾が生じ、その矛盾が突き動かす力により生産関係が変化(発展)する。これが階級闘争を生み出し歴史を突き動かす基本的な力であると考える。 4. 生産力や生産関係は、個々の人間の意図や意志とは独立して変化する。 5. 政治的法律的上部構造は、生産関係を中心とする経済のあり方(土台=下部構造)に規定される。(下部構造が上部構造を規定する) 6. 今ある生産関係の形態がもはや生産力の発展を助けず、その足かせとなるとき、革命が起こる。 狩猟採集社会は、経済力と政治力が同じ意味を持つ組織であった。封建社会では、王や貴族たちの政治力は、農奴たちの住む村々の経済力と関係していた。農奴は、完全には分離されていない二つの力、すなわち政治力と経済力に結びつけられており、自由ではなかった。こうしたことを踏まえてマルクスは、「資本主義では経済力と政治力が完全に分離され、政府を通して限定的な関係をもつようになる」と述べた。 |
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時代背景 | ||
著作物 | 『資本論』『ヘーゲル法哲学批判序説』他 | |
参考文献・関連リンク | 唯物史観Wikipedia |
実証主義史学 | 史観の歴史TOP | |
成立・編纂者 | ||
概要 | 「私の考える実証史学のイメージは、まず、歴史事実や史料からこつこつと「史実」を復元する。次に、復元された史実をいくつも並べて、その史実たちを俯瞰する「史像」を導く。そしてそれらの史像を集めたうえで、「史観」といおう歴史の見方を生み出していく。史実から外れた史像や史観はもちろん論外だが、史実という土台がしっかりと築かれている上に表された史像や史観ならばそれは実証史学の範疇である。(『歴史学者という病』本郷和人 P174) | |
時代背景 | ||
著作物 | ||
参考文献・関連リンク | 『歴史学者という病』(本郷和人著) |