『平和新聞ながさき版』コラム
2015年 2016年
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(2016年12月25日) この国のマスメディアのあり方・方向性が心配です。例えば沖縄の辺野古や高江のたたかいをネットやフェイスブックで見ながら、何故マスメディアには載らないのかというじれったさをずっと感じてきました▼もうマスメディアの取り込みは終盤あたりなのかも知れません。権力を監視する役目は危機的状況です。それくらい安倍政権の新聞・テレビなどのマスコミ対策が徹底して行われているということでしょう▼各社新聞の2面の下段付近に「首相動静」みたいな安倍首相のスケジュール欄があります。財界・経済界や大企業のトップとの会食は当たり前、さらにマスコミ各社のトップたちが並びます。こんな日程でいろんなトップたちと語り合っている。これじゃあ一般国民の生活なんて見えないでしょうね▼ずいぶん前に「放送禁止歌」という、当時世に出なかった不遇の歌の存在を知り、マスメディアの自主規制や忖度という、日本独特のシステムを知りました。権力を監視し、批判する眼を失うとどうなるのか。間違いを繰り返してはならない。(H) |
(2016年12月15日) 師走に入り2016年も残すところあとわずかとなった。一年を振り返ると今年も様々な出来事があったと思う▼夏はリオ五輪が開催された。次の五輪は4年後の2020年。本当に東京を開催地としていいのか。誘致が決まっても次々と現れる問題を前にして反対する人の声は多い。経済的な理由によりハンブルクやローマといった都市が次々と誘致を断念している▼五輪開催で経済発展を目指す…ロス五輪以降オリンピックの商業主義化が進んだ。オリンピックが発展するきっかけになったことは確かだが、本来のスポーツ競技大会としての意味が見失なわれているのではないだろうか。東京都には五輪開催より優先すべきことがあるのではないだろうか▼流行語大賞でトップ10入りした「保育所落ちた。日本死ね」が表すように子育てや福祉に五輪のための税金を回すべきではないのか。五輪開催に疑問を抱く都民はどれくらいいるのだろう。スタジアム建設や福島でのソフトボール競技など、まだまだ問題山積みだ。(み) |
(2016年11月25日) トランプ米大統領が誕生する。評論家ではないので根拠をもった評価はできないが、小泉劇場、民主党政権誕生と重なって見える▼貧困、格差社会、失業等閉塞感からの光を求めた先にトランプがいた。あれだけの暴言を吐いても支持を受けるという満身創痍の国に映る。暴言と強気発言は、「今よりましで、何かやってくれそうな期待感」であり、小泉劇場に似ているし、民主党政権(当時)を誕生させた不満、閉塞感と類似している▼ただ、心配なのはトランプ発言の憶測から、稲田防衛大臣の「自らの国は、自らの力で守る」という、軍事力強化、核保有の正当性を加速させることではないか。マスコミも政府に首根っこをつかまれているため、批判どころか推進役を果たす危険性を感じる。南スーダン派兵、誰が見ても無謀と思えるTPPの採決強行。数の勢いだけで「民意」を踏みつけながら暴走するダンプカーそのもの▼軍事力強化と憲法9条改悪の口実を与えないためにも、各種の戦いを結合させた幹の太い戦いを作り上げないといけない。(筆) |
(2016年11月5日) 被爆者の声を聴こうと国立原爆死没者追悼平和祈念館にでかけた。その人の写真を見ながら、被爆者の想いと当時の様子を垣間見ることができる。わずか数行のささやかな訴えもあれば、尽くせない溢れるような言葉も伝わってくる。その場にわが身をおいて想いを巡らすと、犠牲になった一人ひとりの暮らしと叫びが聴こえてくる▼国連で核兵器廃絶条約締結への交渉開始を求める決議が、123カ国(70%)の賛成で採択された。「ヒバクシャ国際署名」も全世界に広がっている▼しかし日本はこの決議に「反対」を表明した。唯一の被爆国でありながら「核抑止力が壊れる」というすでに破たんした理由で、核兵器廃絶への確かな流れに敵対する態度を鮮明にしたのだ▼自衛隊が名実ともに「軍隊」となる動きが顕著になっている今、その旗を振る政治家たちはこの日本政府の態度に何も感じないのか。国が自ら建立した広島・長崎の追悼平和祈念館で犠牲者たちの叫びに耳を傾けるべきだ。核兵器廃絶に中立という態度はない。(☆) |
(2016年10月15日) 五島に来て2年目になります。この秋二度目の「福江みなとまつり」を見てきました▼見どころは二日目の夕方になって繰り出す「ねぶた」です。まつり自体は1957年に第一回が始まり、77年に青森から導入された「ねぶた」が加わったそうです。私も始めて見る「ねぶた」に圧倒され、写真を撮りまくりました▼市内の企業や学校から出され、それぞれに五島の歴史や民話を物語るような意匠が凝らされています。今回は商店街に吊られた提灯越しの撮影と、「炎上太鼓」と呼ばれる太鼓衆をどんな風に撮ろうかといろいろ考えながら追いかけてきました▼その「ねぶた」の由来は、除災行事の「眠り流し」や七夕まつり、お盆の灯篭流しなど様々なものから影響を受けて、今の山車の姿となったようです。長崎の精霊流しも独特なものですが、全国各地でいろんな形の行事が続いていくことは大事なことだと思ったまつり見物でした。(H) |
(2016年9月25日) 9月にアップル社からiPhone7が発売された。いまや日本人の半数以上がスマートフォンを所有している。電話やメールだけでなくパソコンやテレビの機能を兼ね備えているため、仕事の必需品と化している人も多いのではないだろうか▼スマホは便利だが依存性がある。母親のスマホ依存により子どもに愛着障害が現れるスマホネグレクト。10代の子たちがSNSに溺れていじめや事件に発展する現象。いつしか生活の中心がスマホになり、人生を振り回されてしまう危険があるのではないだろうか▼最近では位置情報とカメラ機能を利用したゲームが世界中で話題となった。運転中の使用を防ぐ標示が道路で目立つようになってきた。それ以上の危険は新感覚ゲームの皮を被った動く監視カメラという実態である▼SNSに写真を投稿して場所や一緒にいる人をタグ付けすることも安易に行いたくない。いつ、どこに、誰といたのかを知らせることになる。公開制限をしているから果たして安全だろうか。過去に政府が情報開示請求をした例もある。子どもの顔写真を投稿するときによく考えてほしい。(み) |
(2016年8月25日) 「ヒバクシャ国際署名」が始まって4カ月。原水爆禁止2016年世界大会は、「日本の原水爆禁止運動と世界の反核平和の力が新たな前進を生み出している」と、「国際署名」のいっそうの強化を呼びかけた。「来年の国連総会で核兵器廃絶条約の交渉開始を」との作業部会勧告が百カ国を超える賛成で決まった▼世界大会・長崎では、ケロイドで覆われた写真をかざし「私の身体を見てください…」と訴えた故・山口仙二さんの激しい生きざまと、核廃絶への決意をつづった合唱組曲「ノーモア・ヒバクシャ」が演奏された。「太陽よりも激しい光が、あらゆる存在を破壊し」、絶望と怒りの日々が続いた。「それでも生きようと決意し歩んできた」と▼核兵器の非人道性を全世界に伝える「語り部」の伝承活動はさまざまな形で確実に広がっている。こうした世界の大きな流れに抗う安倍首相は、オバマ米大統領が検討している「核兵器の先制不使用」宣言にすら、「抑止力を弱める」と反対した▼先の戦争への反省を欠落させた改憲策動に加え、戦争法を強行。核兵器をもつことさえ否定しない安倍暴走政治に未来はない。(☆) |
(2016年7月25日) 先の参院選で改憲勢力が2/3以上になった。政府は真摯な審議をせず戦争法をゴリ押ししたように、国民の審判は我にありと、憲法9条に手を掛けてくるだろう▼辺野古の埋め立てに関しても、県民の民意を無視し、国は再び県を提訴する。高江のヘリパット建設では着工を強行するために全国から機動隊400人を投入するなど、なりふり構わぬ暴挙の限りを尽くしている▼今回の選挙では、TPP反対の東北、基地はいらないの沖縄から2人の現職大臣が落選した(落選させた)。「いのちと暮らし」を守ろうという統一の力が勝ったのだ。力を合わせれば、巨大な敵であっても倒すことができるという確信になったと言える▼政府、自民党は、「統一と団結の力」に大きな焦りと不安を抱き、このような強圧的な施策を取らざるを得なくなっているのだろう。今、憲法9条を守ろうの世論を大きく広めることは、戦争法を廃止させ、日本の良識を世界に届けられる絶好のチャンスだ▼原水禁大会、平和大会と続くが、我々の底力を発揮し、必ず成功させよう。(筆) |
(2016年6月25日) 19日に開催された沖縄県民大会。自民党や公明党は、あくまで事件に対する抗議と被害者の慰霊が主体だとして、政治的な課題がかかった大会への参加をしませんでした▼不参加の理由として一定の考え方は整理されていますが、政治に踏み込まなければ解決しない問題がこの事件の根源にあると思います。長崎・広島への原爆投下もそうです。祈念式典は被爆者の鎮魂・慰霊でもありますが、核兵器廃絶という政治的なテーマは抜きにできません▼沖縄に米軍基地があるからこそ、さらに事件が起こっても日米地位協定に閉ざされて、あくまで米軍の「好意的考慮」でしか事件の解決が及ばないことなど、普通の犯罪事件とは違った面が顕著に出ています。米軍新兵教育の内容なども暴露されました。特権的な視点、差別的な扱いが象徴的ですらあります▼先日の報道番組。米兵士から被害に遭った女性が語った「(こういった事件は)沖縄だけの問題じゃない。日本全体の問題」という言葉が残りました。この事件が持つ本質が示されていると思います。(よ) |
(2016年5月25日) 太っている、背が低い、薄毛である…自分の容姿を滑稽に自虐ネタとして笑いを取るお笑い芸人。他国では身体的特徴は笑いに繋がらない。むしろ差別に繋がるという▼差別はどこの世界にも必ず存在する。長く閉鎖的であった島国日本では民族や人種への差別が際立つ。恥ずかしいことに今現在も先進国としてあるまじき差別が続いているのだ▼川崎市桜本を標的にしたヘイトスピーチが今年の2月話題になった。古くから在日韓国人の町であるこの地域にヘイトデモ隊が進入を試みた。ヘイトスピーチをやめろ、桜本に入るな、と地域の人々やそれを支える人々が立ち塞がり、身体を張った抵抗で未然に進入を防ぐ事ができた▼子供やお年寄りがいてもお構いなしのヘイトデモ。これを何度も容認した事に国内外から批判の声が高まった。5月12日参院法務委員会でヘイトスピーチ対策法が可決された。まだまだ検討が加えられる必要ありだが、ここにきてやっと日本は多民族国家であると政府が認めた感である。(み) |
(2016年5月15日) 去る4月27日、「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」運動が日本被団協の呼びかけでスタートした。被爆者の平均年齢は80歳を超えた。「後世の人々が生き地獄を体験しないように、生きている間に何としても核兵器のない世界を実現したい」というのが、被爆者の切なる願いであり、被爆者が訴えてきた筆舌に尽くしがたい体験は、日本と世界の反核平和運動の原動力となっている▼政府が強引に推し進める戦争する国作りを阻止する力は、平和を願う国民の共同する運動の結集、発展しかない。今回の国際署名は、1950年の「原子兵器の絶対禁止」を求め世界で5億、日本でも645万筆に達したストックホルム・アピールに匹敵する署名を集め切ろうと取り組まれている▼核兵器廃絶、沖縄基地返還、辺野古新基地反対、原発なくせ、戦争法廃止等、今まさに根っ子を同じにするこれらの運動と力を合わせるならば、2倍、3倍の大きな世論が形成される。胸を張って訴え続けよう。(筆) |
(2016年4月15日) 4月12日、沖縄の普天間基地返還合意から20年が経過した。1995年9月4日の少女暴行事件をきっかけに沖縄で巻き起こった基地撤去の世論の高まりはすさまじく、まさしく県民一丸となった思いが実った返還合意であった▼しかし、この20年で起こったことは、「返還」ではなく「基地機能拡充」との闘いだったと感じる。そして闘いの相手がアメリカではなく日本政府だということが歯がゆい▼司法の場に闘いを移していた辺野古の新基地問題では、夏の参院選をにらんで、和解を受け入れた安倍政権。露骨な選挙対策に惑わされず、95年の事件や基地があるがゆえに奪われた多くの命があることに立ち返り、「基地は沖縄でなければいけないのか」「なぜ米軍基地が日本にあるのか」「基地は必要なのか」と考えてほしい。安保法が施行された今、沖縄県民だけでなく日本中で本来は関心を高めなければいけないと、あらためて強く思った▼ながさき平和委員会が取り組むジュゴンアクションの重要性を再認識。(香) |
(2016年3月25日) 東日本大震災より3月で5年を迎えた。多くの人が命を落とし、家族を家を失った。5年経ても復興は道半ば、未だに多くの人が苦しんでいるという状況だ▼ただの自然災害だけではなく、原発事故を招いた。放射能の影響で苦しんでいる人が多くいる。長崎に自主避難してきた方とも出会った。放射能の恐怖の下で暮らさざるを得ない人もいる▼福島での小児甲状腺癌が全国の罹患率の数十倍近い値に達した。チェルノブイリ原発事故でも4~5年後に患者数が増えている。福島では子供たちに突然の癌告知をした例が多く見られるという。そのうえ放射能の影響は考えにくいとされた。相談する間もなく手術を受け、体調がすぐれぬまま精神的不安に苛まれている子供と親の気持ちは計り知れない。3月15日に家族の会が発足した▼「風評被害」のため放射能に言及することがどこより福島でタブーになっている現状。デリケートな問題ではあれ、過去に原爆被害を受けた長崎から放射能について伝えられることがあるのではないだろうか。(み) |
(2016年3月15日) 「大震災と原発事故から5年」。復興への5年間の歩みと現状の総括が求められている。被災地の石巻市を訪れた際、「妻と妹を亡くした。街が消え、全てがなくなった」とつぶやく男性と出会った。津波で流された自宅跡に改造した車で焼きそば屋を営み懸命にがんばっている姿を今も忘れることができない▼先日、長与町で「『3・11を忘れない』元気にうたう集い」が開かれ130人が参加。被災地の生々しい声が紹介されていた。参加した女性は「被災者への思いは同じ。忘れないことが大事だから毎回参加しています」と話した▼大津地裁が関電高浜原発3・4号機の停止を求める仮処分決定を下した。「事故発生時の責任が不明確」「規制基準合格で安全とは言えず、証明が不十分」などと具体的でわかりやすい。それでも政府と電力各社は「再稼働ありきだ」▼5年を経てなお深刻化する被災地の実態や、原発への政府の対応をみるとき、必要なのは「3・11を忘れない」こと「被災者の声、原発いらないの声」を全国であげ続けることだ。主権者は国民なのだ。(☆) |
(2016年2月25日) 欧州諸国で導入を検討されているベーシックインカム▼所得の大小に関わらず全ての国民が最低限の生活を送れるのに必要な金額を無償で提供されるという制度である。日本の生活保護制度と異なり、ややこしい申請や審査を必要としないので受け取りが容易らしい。労働意欲を失わせる悪制度という批判の声もあるが、果たしてそうだろうか▼先日、「保育所落ちた、日本死ね」という匿名のブログが話題になった。「不倫も賄賂もいいから保育所増やせ」という働く母親の怒りの声が日本政府に向けてぶちまけられている。出産してからも女性が働きに出なければいけないにも拘わらず、保育所が足りない。日本の福祉制度は欧州に比すると絶望的で、とても少子化対策を講じているとは思えない▼ベーシックインカム導入を日本に期待することは天地がひっくり返ってもあり得なそうだが、働く母親たちを助けることはできる。路頭に迷ってネットカフェで暮らす親子を救うこともできる。安倍政治への怒りは沸点に達している。(み) |
(2016年2月15日) 「安全」とは何か? 安全には、それが安全であると満たす「安全基準」というものがあるのか? そして、それは誰がつくるのか…?▼「安全神話」という言葉は、分かりやすい。つまりは、「嘘」を言い換えた言葉。例として一つ。「原発の『安全神話(嘘)』は許せない」▼住宅密集地に隣接する長崎大学医学部に設置が計画されているBSL?4(バイオセーフティレベル4)問題。住宅密集地なのに、日本には存在しないエボラウイルスなど「超危険な病原体」を扱う。針刺し事故などによる漏出もあれば、誤って(あるいは意図的に)持ち出すなどの事件も起こり得る。戦争法も絡めば、テロの標的だってなり得る▼原発はどうか? 当然、テロの標的になり得る。ちょっとした危機意識と想像力があれば、それは想定できるはずだ。想定できないのであれば、どこかで思考停止している▼安全とは何か? それは、危険に脅かされることがないということ。今の社会に安全な現実を構築しなければ。嘘はもう、いらない。(む) |
(2016年1月25日) 諫早湾干拓問題で長崎地裁の「和解勧告」に耳を疑った。「有明海再生は排水門の開放抜きにあり得ない」という漁業者側の主張は、農業者や市民も共感しうる説得力のあるものだった。しかし「勧告」は、開門しないことを前提にした対処療法的漁場対策とカネの力による解決。国の姿勢の蒸し返しだ▼諫早湾閉め切り直後から顕著になった漁業被害の進行に、農水省は再生事業と称して「覆砂」や「海底耕運」を実施したが、再生どころか調整池の水質悪化対策など、税金のムダ使いを上乗せした▼一方、二〇〇二年の短期開門調査は、開門の方法を考慮すれば中長期の開門も可能で、漁場再生の道も開けることを示した。国と県はこの歴史的事実に背を向け、干拓地造成の既成事実をつくり「開門は予測できない被害を生む」と繰り返すだけだった▼これまでの経過を少しでも理解して有明海再生を考えるならば、開門抜きの和解があり得ないことは明らかだ。漁業被害と開門に伴う諸問題の両立は可能であり、その努力こそ裁判所に求められている。(☆) |
2015年 2016年
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