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米国が1年に3回の未臨界核実験

核弾頭の近代化路線を着々と


Nightshade で使用された容器

 米国が21会計年度(20年10月〜21年9月)に3回の未臨界核実験を行っていたことが共同通信社の報道で明らかとなった。すでにトランプ政権下の20年11月に、Nightshade Aという実験が行われていた。これに続く「B」と「C」がバイデン政権下でそれぞれ21年6月22日、同年11月16日に行われた。他にローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)で予定していた「L」は、期待されるデータが得られそうにないとして早い段階で取りやめとなっていた。

 4月12日の共同通信社の配信は全国のマスコミが取り上げ、10紙ほどが1面に掲載した(中國新聞はトップ)という。報道を受けて被爆者をはじめ多くの自治体も抗議の声をあげた。

 1992年を最後に核爆発実験を凍結している米国にとって未臨界核実験は、既存核弾頭の性能と安全性を維持し、さらに改良や新機能を加えた核弾頭の近代化計画に不可欠のものである。

 開発を担っているのはエネルギー省傘下の国家核安全保障局(NNSA)。すでに堅牢な標的を効率的に破壊可能とする潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)弾頭W76-1と、トランプ政権が開発を求めた低爆発力のW76-2はすべての生産が完了。また改良型のSLBM弾頭W-88 Alt 370と爆撃機に搭載する精密誘導核爆弾B61-12も昨年から生産が開始されている。

 現在、本格的な開発が進められているのは新型の長距離巡航ミサイル用の弾頭W80-4と新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)用の弾頭W87-1である。NNSAの資料では、未臨界実験は「W80-4の設計の検証」「W87-1の設計概念の取得」が行えるとしている。W80-4とリンクする未臨界核実験は下表の前半4つで、W87-1が容器を大型化した後半の4つに対応すると思われる。

 米国は2080年代まで運用可能な戦略原潜、SLBM、ICBM、爆撃機、巡航ミサイル、それらに搭載する核弾頭を一新する計画を進めている。共和党政権であれ民主党政権であれ基本的には変わらない。核兵器禁止条約で包囲していこう。

米国の核弾頭近代化計画。
ALCM:空中発射巡航ミサイル。
FY:会計年度。M$:百万ドル(約1.2 億円)。
運搬手段 近代化弾頭 対象 生産開始 費用(M$)
SLBM W76-1 W76 FY08 3,500
W76-2 W76-1 FY19 75
W88 Alt 370 W-88 FY22 2,800
爆撃機 B61-12 B61s FY22 8,300
ALCM W80-4 W80-1 FY25 11,000
ICBM W87-1 W87 FY30 13,800
SLBM W93 - FY35 18,200

 

ロスアラモス国立研究所(LANL)の未臨界実験で使用する容器についての報告書(17年9月)によれば計8回の未臨界核実験が計画されていた。後半の4つは新型容器での実施となる。
機関 シリーズ名 実験名 予定時期
LANL Red Sage Nightshade A 19年12月
LANL Nightshade B 20年03月
LANL Nightshade C 20年06月
LLNL Nightshade L 20年12月
LLNL Sierra Nevada II Tuolumne 21年12月
LLNL Sierra Nevada III Owens Lake A 23年12月
LLNL Owens Lake B 24年03月
LLNL Owens Lake C 24年16月

 

(2022年4月20日)