長崎県母親大会が10月9日が開かれ、会場83人、オンライン約30人の参加がありました。
運動交流の部では、新婦人が、生理用品の学校設置の取り組みを行い、時津町が予算化したこと、学校の校則や長崎市幹部職員による性暴力被害裁判支援などを報告しました。民商は、家族労働者56条問題での署名など女性の地位向上を求める取り組みや、コロナ禍で分納せざるを得ない人が増えている消費税の問題など指摘しました。自治労連は、病院勤務者がコロナ感染を恐れながら家庭を犠牲にして働くなど疲弊した状況を語りました。また男性職員の育児休暇取得の事例を紹介し、育児休暇は「母親のサポートではなく、父親として育児をする」ことの認識が広がることが大切だと述べました。
記念講演は「ジェンダー平等~なぜ変わらない日本社会~」をテーマに地元の大西由紀子弁護士が講師を務めました。はじめに、日本のジェンダーギャップ指数について、21年には153か国中121位と最低レベルだが、特に政治、経済分野で低い水準となっている。政治は国会議員·大臣に占める女性の割合が10%程度のため、経済は管理職の割合が低く、女性のパートタイムの割合が男性の2倍で、平均所得が男性より43.7%低いことによる、と紹介しました。
つづいて、裁判例や法制度における日本のジェンダー・バイアスを解説。未就学の女の子が死亡した時の損害賠償の金額が、女性労働者の平均賃金で算定されるのはおかしいとの訴えに対して、2001年9月大阪高裁は「少なくとも中学生までの女子の逸失利益の算定には、男子を含む全労働者の全年齢平均賃金を用いる」とした。地方公務員である妻が死亡した場合、夫は60歳以上でないと遺族年金がもらえないのは憲法14条違反であるとの訴えに対し、15年6月の大阪高裁は、「一般に独力で生計を維持することが困難である」から妻には受給年齢要件を設けず、夫にのみ受給年齢要件を設けることは合理性があるとした。夫婦同氏制と選択的夫婦別姓制度に関する15年12月最高裁判決での合憲10人·違憲5人の意見と、5年経過し選択的夫婦別姓が期待された今年6月の最高裁でも15年判決が維持された現状、などが紹介されました。
ジェンダーギャップ解消には賃金を上げ、女性の管理職や政治家を増やすべきだが、社会で能力の判断基準が男性視点になっている、女性のモデルが少ないので人生の選択肢として思い描けないなどの背景がある。男性も声を上げること、議論を続けること、法律改正だけでなく運用改正も必要と強調しました。
(2021年10月10日)