12月6日、強襲揚陸艦アメリカが交代配備された。最初からF-35B運用を想定して設計された「アメリカ」は14年10月に就役したアメリカ級の1番艦である。2番感はまだ試験航海中であり、米海軍は佐世保に最新の強襲揚陸艦を配備したといえる。
アメリカ級は、ワスプ級より排水量を1割大きくする一方で、LCACを搭載しない構造とした。そのために格納庫が広くなり、航空機を30%多く搭載できる。MV-22オスプレイを飛行モードの状態で整備することができ、また航空機が使う弾薬・ミサイルなどの武器も30%多く搭載できる。航空燃料庫も50%増大して140万ガロン(5,300キロリットル)となるなどより多くの航空機を収納/展開できる母艦機能が大幅に強化されている。
飛行甲板は垂直離着艦する際の強いジェットの排気に耐えられるように耐熱化塗料が使用されている。
着陸スポットは9か所あり、F-35Bはどこでも着艦できるが通常は後方の7番と9番のスポットを使用する。飛行態勢をとっている時は30人から40人ほどの航空部隊の隊員が動き回り、武器などの取り付けや取り外し、航空機のメンテナンスも行う。上部の管制塔では離着艦やエアオペレーションのコントロールが行なわれる。F-35Bを運用するために、発着管制士官と呼ばれるパイロットが民間空港の管制塔とまったく同じ役割を果たしている。
襲揚陸艦部隊は海から空からの「なぐり込み」のプラットホームであり、同時に味方が受ける激しい被害を想定した戦闘維持部隊でもある。艦には2つのオペ室があり、常に3人の軍医、2人の看護師、1人の麻酔科医が配置されている。通常の病院と同じ治療や手術をすることができる。輸血用の冷凍血液も大量に積んでいる。オペ室に加えて24の集中治療室や200床の病棟がある。計300名ほどの手術や治療が同時にできる。これらはワスプ級の施設の半分の規模であり、F-35Bの運用で味方の被害を低く想定したと思われる。歯科の軍医も1人配備され、けが人を扱う治療だけでなく、常に普通のメディアルケアも行っている。実際に作戦で洋上に出る時は沖縄で海兵隊と一緒に医療チームが乗艦し、医療能力が3倍となる。
一方、12月1日に新たにドック型輸送揚陸艦ニューオリンズが配備された。グリーンベイと同型艦で、オスプレイ2機とLCAC2隻を搭載できるため、「アメリカ」配備によるLCACの運用減を補うとともにオスプレイの新たなプラットホームとなる。また一般の揚陸艦の2倍の車両を収容でき、大量の物資・弾薬・ジェット燃料を搭載できるなど、上陸部隊の展開能力も大幅に強化される。
米海軍は、「アメリカがLCACを搭載しないからニューオリンズも配備したわけではない。アメリカ単独での運用はなく、LCACは他の揚陸艦で十分運用できる。アメリカは米海軍で一番能力の高い最新型強襲揚陸艦であり、搭載するF-35Bは第5世代の戦闘機である。それらをこの地域に前方展開することに大きな意義がある」との見解を表明している。
輸送揚陸艦ニューオリンズ(手前)と同グリーンベイ(奥)
(2019年12月7日)