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ワスプが「アメリカ」に交代へ

より母艦性を増す佐世保の強襲揚陸艦

 今年の米軍佐世保基地での一番の出来事は岩国の海兵航空基地のF-35Bステルス戦闘機を運用するために強襲揚陸艦がワスプに交代配備となったことだろう。(写真)

 F-35Bは強襲揚陸艦で運用できるように短距離離陸・垂直着陸の仕様となっている。現在、これを運用できる強襲揚陸艦は3隻しかない。ワスプは1989年に就役した現役最古参の米強襲揚陸艦だが、飛行甲板を耐熱性のものに貼り替えるなどの改修工事が行われた。

 強襲揚陸艦がオスプレイに加えてF-35Bを運用することは、強力な打撃力を持つイージス駆逐艦や攻撃型原潜に頼らずとも、単独の航空戦力による「なぐり込み」が十分可能になったことを意味する。さらにこの強襲揚陸艦部隊に海上戦闘ヘリを搭載したイージス駆逐艦部隊が加わることで、空母打撃群に準じた能力を持つようになる。この「強化型遠征打撃群」の訓練が3〜4月に初めて行われた。F-35Bの本格運用もこのときが最初である。

 現在の国際状況下では海兵隊を海上から大規模投入する事態は想定し難い。その中での母艦化へのシフトではないだろうか。今年9月、F-35Bが初めて実戦投入された。もう1隻の対応工事済みの強襲揚陸艦エセックスから発艦したF-35Bがアフガニスタンでの地上掃討作戦を支援する空爆を行ったのである。

 12月に入って、ワスプが来年には帰国することが驚きを持って報道された。しかし16年2月時点で、19年中に「強襲揚陸艦アメリカ」が交代配備されることは報道されていた。従来と異なる供給電力が必要となるので米17会計年度予算に1642万ドルが計上されたのである。その後、16年10月にワスプが17年秋に交代配備となることが発表され、むしろこちらの方が「驚き」だった。岩国に配備されるF-35Bを早く運用したかったのだろう。

 最初からF-35B運用を想定した「アメリカ」は14年10月に就役した最新鋭の強襲揚陸艦で、ワスプ級より排水量を1割大きくする一方で、LCACを搭載しない構造とした。そのために格納庫が広く燃料タンクも大きくなり、20機のF-35Bに加えてオスプレイや戦闘ヘリを収納/展開できる。より航空戦力の母艦機能が強化され、侵略性がいっそう高まった。

(2018年12月10日)