9月15日、『朝鮮戦争はなぜ終わらないのか』の著者である五味洋治さん(東京新聞論説委員)の講演会が開かれました。主催は地域・自治体研究所で約70人が参加しました。
●朝鮮戦争とは
1950年6月に北朝鮮の南侵で始まり53年7月に休戦となった。民間人を含め500万人以上が犠牲となったが数字は公表されていない。南北に別れて住まざるを得なくなった「離散家族」1000万人を生み出した。日本では戦争中に警察予備隊が誕生し、休戦翌年に自衛隊が発足—憲法解釈に大きな影響を与えた。
●朝鮮戦争は何を残したのか
韓国は軍事独裁の下で準戦時体制がとられ社会は混乱した。北朝鮮は国民に「戦争には勝利した」と教育し、金ファミリーに権力が集中した。米国は共産主義への反感が強まり、軍事費を4倍に増強し、ベトナム戦争へ向かうことになる。中国は国費の半分を軍事に費やし経済的混乱に陥る。日本だけが特需によって経済的復興を遂げたが、平和国家でありながら米軍の出撃基地を抱える矛盾した進路を歩むことに。
●朝鮮戦争が終わらない理由
朝鮮国連軍(実態は米国中心の多国籍軍)は、朝鮮半島有事の際に日本国内から出撃できる便利な存在である。この国連軍は、北朝鮮に援軍を送った現在の中国に対しても有効である。
●北朝鮮が対話を始めた動機、意図
米国からの攻撃を恐れた/今後の経済制裁の影響を懸念/伝統にとらわれず損得勘定で動くトランプ大統領の交渉スタイルに希望/韓国に北朝鮮への理解を示す政権が誕生/核放棄を自分のペースで進められる。
●朝鮮戦争が終わると何が起きるか・・
在韓米軍の必要性がなくなり大幅縮小/北朝鮮が経済発展に力を入れるようになる/南北統一が現実味を帯びてくる。ただし南北の所得格差は45倍もあり、時間がかかる/韓国で兵役がなくなる/軍事境界線帯の開発が進む。
●緊張緩和が沖縄に与える影響
沖縄の米兵の約6割が海兵隊で、彼らは朝鮮半島有事に備える部隊である。緊張緩和はその存在意義を失わせ、政府が強行している辺野古新基地も見直されるべきだ。
●浮かび上がる日本政府の本質
米朝首脳会談の実現にもかかわらず『防衛白書』は北朝鮮の核・ミサイル開発について「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」と明記し、次年度概算要求に過去最大の5兆2986億円を計上した。朝鮮半島に緊張を残して軍事費を増額し、憲法改正へつなげたいという本音がみえる。
(2018年9月16日)