1月13日、長崎大学核兵器廃絶研究センターはノーベル平和賞受賞記念特別市民セミナー「核兵器禁止条約をどう活かすか?」を開催し、約300人が参加しました。
ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)事務局長のベアトリス・フィンさんが基調講演を行い、「人類史上最悪の経験を語り続けた被爆者の協力なくして核兵器禁止条約はあり得なかった」と述べ、被爆者と長崎市民が果たした功績を強調しました。
そして核兵器には、「破壊によって平和をもたらすという大きな矛盾がある。その均衡を保つことは非常に危険で永続性はない」と指摘しました。さらに日本政府について、「核兵器がもたらす結果がどのようなものか知っているにもかかわらず、米国の『核の傘』の下にあろうとして条約に参加していない。核兵器の悪行を繰り返してもいいと考えているのか」と厳しく批判しました。
また、「被爆地の価値観と日本政府の政策にある大きなギャップを埋める必要がある。日本は核軍縮のリーダーでなければならず、禁止条約に参加しなければならない」と述べ、国民の声を一つにして訴えれば、政府は無視できないと呼びかけました。
そして核抑止は神話だと述べ、現実をみれば北朝鮮の核開発は阻止できなかったし、むしろ加速させた。解決策は禁止条約だ。核兵器は違法だという新たなフレームワークができ、世界では大手の金融機関などが核兵器を製造する企業に投資をしないという流れになってきたことを紹介しました。そして「核兵器は力の象徴ではなく恥ずべき事の象徴。核の傘の下で暮らす国々を孤立させ、核保有国に汚名を着せなければならない」とも。
フィンさんは小型核の開発を進めようとする米国の新核戦略にも言及し、「小型核は躊躇なく使用される危険性が高まる。小型といっても被害甚大で、まさにナガサキの事実を広く伝えていくことが求められる」と述べました。
一方、講演後のパネル討論で登壇した今西靖治さん(外務省軍備管理軍縮課長)は、北朝鮮の挑発活動を念頭に「厳しい安全保障環境の下、条約に日本が参加すれば、核保有国による核抑止力の正当性が失われ、国民の生命・財産を危険にさらす」と主張しました。
これに対してフィンさんは「条約に参加しても日米同盟のダメージにはならない。条約に向き合い、どのような未来があるか議論して欲しい」と述べ、「政治家に圧力をかけ参加せざるを得ない状況に追い込んでください」と参加者に呼びかけました。
(2018年1月14日)