イラク戦争から3年
「イラクの今」を語る

 3月19日、米軍の無法なイラク攻撃から3年を迎えるのを前にワールドピースナウ・ナガサキが講演会を開き、約100名が参加して平和への思いを新たにしました。
 アジアプレス所属のジャーナリストで被爆二世の玉本英子さんが「『イラクの今』を語る」と題して現地の映像を交えながら取材体験を語りました。

 01年9月以降、現地取材を5回行っている玉本さんはスンニ派武装勢力「バクダッドの獅子」への単独インタビューをはじめ、昨年12月の国民議会選挙や北部クルド自治区の移民児童の教育風景、“自爆攻撃”の被害者家族の実態などの映像を紹介しました。

 比較的治安の良い北部クルド自治区のアルビルには各地から逃れてきた人たちが集まっています。玉本さんはある小学校を取材しました。もともと200人の生徒だったものがこの2年間で580人に増え、校舎が足らないので午前と午後に分けて2つの学校が使うという事態になっています。元気そうに見えても親友が身代金目的に誘拐されて殺害されたり、父親が米国の協力者と決めつけられて武装勢力に射殺されたりなど心の傷を持った子どもがたくさんいます。小学6年の学級50人中、友人や親類が誘拐された経験を持つもの7人、殺された経験は11人にも上っていました。

 イラク警察は武装集団から米軍の協力者と見られており、脅迫状が家に貼られたりして夜にアルビルに逃れた人もいるそうです。そのアルビルの警察官採用の面接会場で“自爆攻撃”が発生し、約60人が亡くなり、約100人が負傷しました。マスコミは“自爆攻撃”の死傷者数は報道しても、残された家族の苦しみは扱っていません。
 玉本さんは、この3年で3万人とも10万人とも言われる死者数を日本にあてはめると長崎市の人口に相当する人々が殺されたことになり、この状況は普通ではないと述べました。

 治安悪化によって取材のためにはイラク軍についていかなければならず、そのために一般市民の声を聞くことができなくなり「葛藤」を感じたそうです。そしてフセイン政権崩壊後、市民は悪口を言って捕まったり、拷問を受けたりすることはなくなった。携帯電話を使ったり衛星テレビを見たりする自由は生まれたがそれが市民の幸せには結び付いていないこと、それが日本には伝えられていないことを指摘しました。

 以前であれば武装勢力はレジスタンスの意味合いもありましたが、今は“自爆テロ”に過ぎなくなっているそうです。イラク人の貧しいものどうしによる殺し合いが始まるなど、治安は悪化しています。誰でも米軍には出ていって欲しいけれども。治安を押さえるために皮肉にも米軍が必要とされている現実があります。「ただ時間の過ぎるのを待つだけ」というのが一般市民の声だそうです。それだけにアメリカの犯した罪は大きい。