福江島分屯基地 | 航空自衛隊:五島市三井楽町嶽郷 |
土地 145,894 m2:建物 13,437 m2 |
五島列島・福江島にある五島市三井楽町。ここはかつて遣唐使の泊港として栄え、その名は万葉集にも詠まれている。今は航空自衛隊第15警戒隊がおかれ、文字通り本土最西端の基地となっている。
15年度からここに「地上電波測定装置」=スパイレーダーが稼働を始め、大陸側の広範囲の電波情報を収集している。
三井楽町京ノ岳山頂にある4種類、7基の航空用レーダー・アンテナ群
【前史】1941年の対米開戦にともない、旧陸軍は、国土防衛の一環として防空体制の強化の必要上から、西部方面の最西端の適地として、三井楽町の行楽の中心であった京ノ岳(標高182メートル)に対空電波小隊の基地の設置を決めた。建設作業は人海戦術で終戦になるまで続けられたが対空電波基地の規模・機能は貧弱なものだった。
アジアの流動的な情勢のもとで米軍は49年1月この地を接収し、超高度の技術を駆使した最新式のレーダー基地の建設を進め、米兵80名が常駐した。
54年11月、ここに西部訓練航空警戒隊(9042部隊)が配備され、米軍との連絡に当たっていた。その後、米軍は漸次福岡県の板付基地に引き揚げ59年6月には完全に航空自衛隊に移管され、61年に「第15警戒群福江島分屯基地」となった。2003年3月に「第15警戒隊」に変更された。
航空自衛隊は日本周辺に広大な監視区域「防空識別圏」を設け、全国28ヶ所のレーダー・サイトで監視を行っている。これが「警戒群/警戒隊」で、九州には西部航空警戒管制団のもと5つのサイトがあり、うち長崎県にあるのが上対馬の海栗島と五島の福江島の2つである。データは福岡県春日基地の防空指令所に集められ、識別が行われる。領空侵犯の疑いのある飛行物体が接近すると戦闘機が緊急発進できる態勢がとられる。警戒群はこの戦闘機基地の近くに設けられている。九州では築城基地-第43警戒群(背振山)、新田原基地-第13警戒群(高畠山)の2ヶ所である。
異様な形状の「地上電波測定装置」
「地上電波測定装置」の中心は電波を収集するレーダーが張り巡らされている窓のない多角形状の建物で、北東から北西にかけた270度の範囲をカバーできるものと思われる。
「地上電波測定装置」は(1)中国や北朝鮮の軍事情報を収集するスパイレーダーであり、(2)国民の携帯電話や航空機、船舶の交信なども収集する、「戦争する国づくり」と一体のものといえる。
福江島分屯基地には背振山・宮古島と同じく航空総隊作戦情報隊第4収集隊が新たに配備された。その本部は米軍横田基地内に同居する空自横田基地にあり、情報は米軍に筒抜けと考えられる。
一方、航空用のレーダーは計7基。3次元レーダーのドームが2基、2種類のパラボラアンテナが2基ずつ、対空通信アンテナが1基。パラボラアンテナは極超短波を使用する多重通信装置で、レーダーサイト間を結んでいる。2基が佐賀県背振山(第43警戒群)、残りの2基が海栗島(第19警戒隊)を向いていると見られる。燭台にロウソクがたくさん立っているように見えるのは、対空通信用アンテナでスクランブル(緊急発進)などで飛行する航空機に命令や誘導、その他の通信を行うものという。
レーダーを風雨氷雪の妨害から防ぐ硬質レドーム(直径17m住友電工製)。
中には瞬時に方位、距離、高度を自動測定できる固定式3次元レーダーが入っている。三菱電機製。
背振山を向く2基の多重通信パラボラ。日本電気製。
対馬を向く最新多重通信パラボラ。これも日本電気製。
2003年6月、福江島分屯基地に福江島総合訓練場が完成した。
この総合訓練場は戦闘機などの航空部隊と対空高射、移動レーダーなどの地上部隊が連携して訓練できる初の施設である。実際に飛行する敵機役の空自機を移動式の高性能レーダーで捕捉、味方役の戦闘機と連携して、地対空誘導ミサイル「パトリオット」で「撃墜」するという実戦的訓練を行うもの。
敷地は分屯基地に隣接する長さ約250m、最大幅約80mの楕円形(約2万2千m2)で、民間から山林を購入したもの。97年から整備を始め、費用は約1億9千万円。
3ヶ月ごとに約100名の隊員が訓練のために来島しており、沖縄、関東方面からも自衛隊関係者が視察に訪れるという。
この総合訓練所には宿泊所がないことをきっかけに05年12月、五島市議会は陸自駐屯地の誘致、総合訓練場にかかる宿泊施設建設及び福江島分屯基地のさらなる整備拡充を強く望む請願を採択、国へ意見書を提出した。
玉之浦町へ向かう道路沿いに福江島着陸場(土地78,599m2)がある。立ち入り禁止の看板がかかっているが、現在は使われていない。三井楽の基地マップはこちら。
福江島着陸場:幅50m、長さ900mの滑走路。
三井楽町浜ノ畔郷(玉之浦町へ向かう道路沿い)にある。