このはなさくや図鑑 ~美しい日本の桜~

桜の種・品種名(五十音順)

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このはなさくや図鑑 桜の系統と品種の特徴について

(桜の系統)
 サクラの仲間は、バラ科(Rosaceae)に属する樹木です。バラ科には、約130属、3400種の植物があり、全世界に分布しています。分類学的には、バラ科はバラ亜科、チョウノスケソウ亜科、モモ亜科の3つの亜科に分けられ、日本にはいずれの亜科も分布しています。
 日本には、モモ亜科で主要なグループのサクラ属があります。サクラ属は、落葉性で形状は高木、低木など様々です。特徴としては、葉は互生で、鋸歯があり、托葉があります。また、花は両性花で、がく片と花弁は5枚(5数花)、多数の雄しべがあり、普通、雌しべは、長い花柱となっています。
 果実は、核果で1個の種子があります。果実が食用とされるウメ、モモ、アンズなどは、桜の仲間で、200種が主として北半球の温帯に分布しています。ウメやモモ、スモモとサクラ属(Cerasus)とは果実に縦のくぼみがない、内果皮に細かい毛がない、頂芽があることなどで、分類されています。

(桜の品種について)
 一般的に桜と呼ばれているのは、バラ科サクラ属の落葉性の樹木です。サクラ属は主に北半球の温帯に広く分布しています。
 日本のサクラ亜属(ユスラウメなどを含まない))を細分して「群」として分類すると、ヤマザクラ群、エドヒガン群、マメザクラ群、チョウジザクラ群、ミヤマザクラ群となります。
 日本の山野に咲く主なサクラとしては、ヤマザクラ、オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ、エドヒガンザクラ、マメザクラ、タカネザクラ、チョウジザクラ、ミヤマザクラなどがあります。そして、これらの変種を合わせると、数十種以上が自生し、また、これらの種を基本に育種されている栽培品種は、600種類以上にもなります。全世界にある花を楽しむサクラのほとんどは、日本のものばかりです。
 サクラの品種は、葉の鋸歯の形や、鋸歯の先端の形、葉柄の毛の有無、蜜腺、鱗片、花序の形、萼片の鋸歯の有無やその形、樹形、花期、花弁の色、形、枚数などで分類します。

基本種から

ヤマザクラの影響が見られる桜(栽培品種・サトザクラ)の特徴

ヤマザクラは、開花時期や展葉する若芽の色、花の色など、個体差が大きい。
品種や栽培種は、ヤマザクラから生まれたものも多くあり、概ね次のような特徴が見られます。
葉の形は楕円形または卵状楕円形(個体差が大きい)、裏面は白色を帯びる
先は尾状鋭尖形、葉の縁は単鋸歯と重鋸歯がまじり概ね伏せ気味で低く上向き、先は腺がある。
基部は円形~鈍形、葉柄は無毛で上部に蜜腺がある。小花柄は無毛。


オオヤマザクラの影響が見られる桜(栽培品種・サトザクラ)の特徴

オオヤマザクラは、開花時の展葉の有無、若芽の色、花色の濃いものや薄いものなど、個体差がある。
本種から生まれた品種、栽培種には次のような特徴があります。
葉は大きく裏面は白色を帯びる。形は楕円形または倒卵形、先は尾状鋭尖形~短尾状鋭尖形
葉の縁は粗い(開き気味の)単鋸歯または重鋸歯で低く上向きで先は腺がある。
基部は円形~心形、葉柄は無毛、上部に蜜腺がある。花柄はほとんどなく、小花柄は長く無毛。栽培種には花の色に濃いものが多い


カスミザクラの影響が見られる桜(栽培品種・サトザクラ)の特徴

カスミザクラは、ほぼ全国に分布するサクラ、品種や栽培種には、カスミザクラの影響を受けているものも多くあり、
概ね次のような特徴が見られます。
葉の形は卵状楕円形~倒卵形、先は急尾状鋭尖形、葉の縁は粗い重鋸歯または単鋸歯で先は腺がある
基部は円形~心形、葉柄は開出毛があり上部に蜜腺がある。小花柄は開出毛がある。
カスミザクラには、各部に毛が多いが、栽培種には各部に無毛のものもあり、カスミザクラの関与を決定づけるものではない。


オオシマザクラの影響が見られる桜(栽培品種・サトザクラ)の特徴

オオシマザクラは、単純なオオシマザクラを片親とする品種や栽培種の他、ほとんどのサトザクラの成立に関与している、
日本のサクラの品種生成上、貴重なサクラである。概ね次のような特徴が見られます。
葉の形は大きく、楕円形~倒卵形、先は尾状鋭尖形、葉の縁は重鋸歯で先は細長く糸状、腺は不明瞭
基部は円形~鈍形、葉柄は無毛で上部に蜜腺がある。
小花柄は無毛、萼筒は筒状鐘形で萼片は概ね鋸歯がある。花は大きく、芳香がある


エドヒガンの影響が見られる桜(栽培品種・サトザクラ)の特徴

エドヒガンは、開花時期や花の色、大きさに地域差がある。
品種や栽培種は、エドヒガンと他のサクラによって生じた交雑種も多くあり、概ね次のような特徴が見られます。
葉は倒卵形から長楕円形、鋸歯は単鋸歯で概ね低く、先は腺がある。葉脈は他のサクラと比べても多い
先は尾状鋭尖形、基部は鈍形~くさび形、葉柄は斜上毛があり、上部に蜜腺がある。
萼筒はほとんどが壺形となり、
小花柄は開出毛がある。

マメザクラの影響が見られる桜(栽培品種・サトザクラ)の特徴

マメザクラは種内の多様性が高く、野生の変種が各地にある。
さらにそれらから派生した品種や栽培種は数多くあり、概ね次のような特徴が見られます。
葉の形は、倒卵形から卵形、先は尾状鋭尖形、葉の縁は欠刻状重鋸歯で先は丸く、腺がある。
基部は円形~鈍形、葉柄は斜上毛があり、ほとんどが葉身基部に蜜腺がある葉は小葉のものが多い
小花柄は斜上毛がある。萼筒は筒状鐘形で花は小輪のものが多い。

チョウジザクラの影響が見られる桜(栽培品種・サトザクラ)の特徴

チョウジザクラはなんらかの形で片親にあるいは、品種や栽培種に成立において関与している場合があります。
概ね次のような特徴が見られます。
葉の形は倒卵形~倒楕円形、先は急尾状鋭尖形、葉の縁は欠刻状重鋸歯で先は腺がある。
基部は円形~鈍形、葉柄は開出毛が多く上部に蜜腺がある。小花柄は開出毛がある

シナミザクラの影響が見られる桜(栽培品種・サトザクラ)の特徴

シナミザクラは、中国原産で日本には江戸時代に導入されたサクラ。
開花期が早く、同時期に咲くカンヒザクラとの交雑種は多い。
概ね次のような特徴が見られます。
葉の形は倒卵形~卵状楕円形、先は尾状鋭尖形、葉の縁は開いた重鋸歯または単鋸歯で先は腺がある。
基部は円形~心形、葉脈はくぼみそれ以外は盛り上がる
葉柄は斜上毛があり上部に蜜腺がある。
小花柄には開出毛がある。萼筒は鐘形でカップ形に近い。独特の芳香があり、開花が早い


サトザクラグループに見られる系統別特徴(抜粋)
サトザクラグループには、ヤマザクラ系、オオシマザクラ系、カスミザクラ系
マザクラ系、シラユキ系、ウスズミ系、シバヤマ系、エド系、フクロクジュ系、タカサゴ系などがあります。

フクロクジュ系のサトザクラの特徴

フクロクジュ系のサトザクラは、大輪の大きな花で花弁は波打つように大きくうねる。
萼筒は鐘形で漏斗形に近いものもある。
萼片は長三角形で平坦、縁は全縁。
染色体数は3倍体(2n=24)。

C.jamasakura
C.incisa

タカサゴ系のサトザクラの特徴

タカサゴ系のサトザクラは、各部に毛が多く、チョウジザクラの関与が考えられるサクラ。
チョウジザクラは交雑しても稔性が失われることないため、様々なサクラと複雑に交雑している栽培種も多い。
特徴は、葉柄、花柄、小花柄に開出毛が多く、細かい苞葉も多く、果実がなってもしばらく失われることはない。

C.jamasakura
C.leveilleana
C.speciosa
C.apetala

エド系のサトザクラの特徴

エド系のサトザクラは、開花直後、小花柄は短く塊状に咲くことが多い。
萼筒は鐘形、萼片は三角形で平坦、縁はほぼ全縁、鱗片は小さく、苞葉は無いか、もしくは小さい。
開花からやや遅れて展葉する葉は、裏面は白色を帯び、小ぶり。
各部に毛が見られる栽培種は少ない。古くからある栽培品種群の一つ。

C.leveilleana
C.speciosa