第48章 ありがとう、大きく感謝

 今日もあみの部屋にはとみ、れみが来ている。
「今日は二人に特別にお菓子を用意したんだ」
 あみは二人に紙袋を渡す。
「これ、元町の大丸の地下にあるお菓子屋さん?」
「うん」
「わぁ、薔薇の形のゼリーだ!」
「それと、この箱はマカロンですね」
「あと、ペットボトル…これ、そこの角のチェリオのペンギンさんのメロンクリームソーダだね」
「一体どうしたんですか?」
「これまで3人でがんばってきたお礼も兼ねてね。ハート型のグミが見つからなくて、花のゼリーにしたんだけど…」
「あ、そうか。この前のバレンタインライブに合わせたんだね」
「ジュースだけお買い得自販機なのは予算調整じゃなく可愛いパッケージのメロンクリームソーダだからだったんですね」
「あみ、ありがとう。綺麗なゼリー、大切にするね」
 とみのコメントにあみがつっこむ。
「でも、賞味期限までには食べてね」
「それもそうか」
「でね、フィナーレにはサンキューフォーザワッチャプリマジコーデを着て、ゲストさんと交代しながら賑やかライブしようと思うんだけど」
「いいですね。オファーはしたんですか?」
「うん。かなり沢山の参加がOK取れたよ」
 あみは一緒にプリマジでライブした連絡先のわかる全員に加え、メッセージのやりとりをしただけの人にもオファーを出していた。
「さすがに、これまでライブする機会に恵まれなかった人は難しいでしょうね」
「うん。実際に、コーデ交換の話進めたさっちゃんは遠方だから難しいみたいだし、似顔絵描いてくれたひなさんは今体調不良だって。でも、直ったらぜひって言ってくれてる」
「なるほど」
「チームでやってる人たちもメンバーで行ける人は行くとか、あと、しろさんが友達が何か企画していて、今度その友達を紹介してくれるらしいとか」
「ほうほう」
「あと、いなりさんが最後の思い出作りライブ募集中で、そっちのオファーもあったよ」
「にぎやかなフィナーレになりそうですね」

 フィナーレまでまだ1か月近くある。その日、あみは夕食をどこで食べようかと思いながら商店街を歩いていた。ふと、店先のカプセルトイに目がいく。
「ねこ土偶…なんかかわいいな」
 つい、100円玉を出そうとして隣のベンダーを見ると、キン肉マンのマスクやベアクローのようなキン肉マン展の展示物のフィギュアだった。
「みんなで見に行ったの、楽しかったな…こっちにしよう」
 こうして、あみはキン肉マンのマスクを手に入れた。そういえば、新刊が1月に出るんだっけ、と思い出し、そのまま本屋に入るが、新刊が無かった。
「うむ…もう2月も後半だから売り切れちゃったか…明日大阪の大きな本屋さんにでも行くかな」
 あみがそう思いながら何気にXを見ると、遠方だからと諦めていたさっちゃんが大阪に着いてフレンドカードを入れたというポストがあった。

 翌日、大慌てで朝イチで大阪に向かったのだが、さっちゃんとは入れ違いで、フレンドカードも残っていなかった。
「残念…」
 あみはそのまま本屋へ行くも新刊は見つからず、スマホで検索すると、3月に延期の記事があった…
「あちゃー、見ておけば無駄足じゃなかったのに…」
 まぁ、売り切れじゃなく、来月新刊買えるわけだし…と思いつつ鞄を見て気付く。
「あわわ…プリマジカード持ってくるの忘れてる…予備のプロフカード1枚しかない!」
 これなら、運よくさっちゃんとライブしようにも合わせとか出来ないところだった。
 運がいいのか悪いのかわからず、トボトボ歩いていると後ろから声がかかった。
「あみさん?どうしたんですか?表情が暗いですよ?」
「え、あ、ぜんいつさん?」
 ぜんいつさんだった。ひな先輩の制服をアレンジして着こなしている。
「ぜんいつさん、今日のコーデ、すごくかわいい!」
「何があったか知りませんが、気晴らしに一緒にプリマジしますか?」
「ありがとうございます」
 とはいえ、あみはコーデがない。慌ててショップでTシャツを買い、それを着てデュオをした。

 ぜんいつさんのお陰で気分が晴れたあみは、
「れみたちにお土産買って帰るか」
 あみは和菓子屋で見つけたのは団子の餅の中に餡子ではなくみたらしのタレが入った普通の串団子の逆のみたらし小餅だった。デート中の女の子でも彼氏の目を気にせず食べれるのがウリということだった。
「絶対、「あみだったら気にせず食べるよね」などととみに笑い飛ばされるだろうな…」
 そうしてバカな事で笑いあえる機会も、もうすぐ減るんだろうな…
 あみはそう思い、あえてそれを選んだ。

 当然、後にそのままの台詞で笑い飛ばされることになるのだが…

 そして、帰ろうとした時、向こうから歩いてくる二人組の片方と目が合った。
「ゆりさん?」
 しろさんの相方のゆりさんだった。もう一人はしろさんではかった。見た目はかわいいけれど、聞こえた会話の一人称が「おれ」って聞こえたような気が…
「あ、こんにちは。やっぱりあみさんだった」
「ゆりさん、こんにちは。えっと…」
「ひよりん♪なのです♪」
 ひよりん♪さんはぺこりと会釈した。かわいい。さっきの「おれ」は多分聞き間違いなのだろうとあみは自分に言い聞かせた。
「ひよりん♪ちゃん、この人だよ。しろが言ってた企画に乗ってくれるかもって人」
 そういえば、しろさんがそんな事言ってたな…
「ちょうどしろさんに企画の事聞かなきゃって思ってたところです」
「今度、ひよりん♪達、横浜のイベントでせんぱいプリマジスタの二人に会うので、プリマジスタ有志による寄せ書きを送ろうと募集をはじめたんです♪」
「それはいい話!出来る限り協力しますね!」
「ありがとうなのです♪」
「せっかく会えたし、仲間を呼んでみんなでプリマジしません?」
 ゆりさんの提案だが、れみもとみも呼べないが単独ならとあみはOKした。そして一旦解散した。

 OKしたものの、あみはコーデがTシャツだけだった。あみはショップでとりあえずスカートを買って何とかミックスコーデの体裁にして集合場所に戻った。
 ひよりん♪さんともう一人来ている。
「チワワ担当、にじみん♪です」
「神の生まれ変わりのひよりん♪とにじみん♪は天使アイドルユニットなのです♪」
「あ、しろちゃんも来た!」
 しろさんとゆりさんが到着した。
「やまさんもおるで」
 たまたま通りかかったひよりん♪さん達の知り合いが合流してくれたようだった。
 こうして即席メンバーでプリマジをした後、寄せ書きをひよりん♪さんに送ることを約束して、あみは今度こそ帰路についた。

 2月が終わりに近づくと、あみ達の誕生日も近づくのだが、今年は何も企画していなかった。その日、あみはたまたまローソンでクレアさんに会った。
「あれ、あみさん?」
「こんにちは。なんか、天下一品ラーメンコラボのからあげクン見つけたので買おうと思って」
 天下一品のこってりラーメンを食べるからあげクンのニワトリの絵がかわいい。
「ははは、パッケージの裏でお腹いっぱいで横になってるニワトリの絵がある!かわいい」
「でも、ここのラーメン、鶏ガラスープだったような…ニワトリ君、どんな気持ちで食べてるのかなぁ?」
 クレアさんの意表をついた角度でのコメントに思わず吹き出しそうになりながらも、
「そういえば、クレアさんは今日はどうしたんですか?」
「今から京都のイベントに行くんですよ」
(ひよりん♪さんが行くイベント、先に京都であるんだった…)
「あ、私のフレンド枠で一緒に行きます?」
「いいんですか?」
「ちょうど、フレンド枠どうしようかなって思ってたので。でも、あみさんのコーデ、リクエストしてもいいですか?」
「もちろん!連れて行ってもらえるなら、季節外れのウケ狙いのサマーメイドでも何でも着ちゃいます」
「あみさん…私をサマメの人みたいに思ってません?」
「ちょっと…思ってるかも」
「リクエストはハートケープライトブルーですよ。初めてフレカをくれた時のコーデだから、あみさんとの始まりのコーデですから」
「う…すごくいい話!失礼しました!」
 土下座しようとするあみを制止しながら、
「早く行かないとイベント始まっちゃいますよ!」

 イベントを終えて。
「クレアさん。楽しかったです。数日早いけど、素敵なバースデープレゼントをありがとうございました」
「あ、誕生日近いんでしたね。おめでとうございます」
「でも、れみ達も連れてきてあげたかったな…」
「あ、せんぱいプリマジスタのダンスとか、動画撮ってるから送りましょうか?」
「ありがとう!れみ達喜ぶと思います」

 そして、次の日。あみの部屋で3人はみたらし小餅を食べながらクレアさん提供の動画を見ていた。
「さて。これを踏まえて、ひよりん♪さんに託す寄せ書きを書きましょう」
「だね。この後、いなりさんの思い出作り企画の時間に遅れないようにしないとだから、今すぐ書こう!」

 このような調子なので、あみ達は待ち合わせ時間ギリギリにいなりさん達と合流した。
「できる限り、ゴージャスなドレスにしましたよ!」
 と、FOXさんが、はじまりのプリンセスコーデを着て、
「色とか皆さんとかぶらないようにと思って、初めて着たけど…似合ってるかな?」
「すごく映えてますよ!」
「そうかな?じゃ、これでいきましょう」
「あ、わたし、ついエレメンツ系にしちゃったけど、エフェクトが邪魔にならないかな?」
「スマイルはキューブが出るだけだから大丈夫でしょう」
「そういえば、昨日…」
 突然、いなりさんが思い出したように、
「天下一品コラボのからあげクン見つけて食べようとしたら、あみさんがXでポストしてたから、思わず笑っちゃいました」
「お互いラーメン好きだし…丼の「明日も」ネタとかも判りますからね」
「確かに」
「おいしかったのなら、あたしも帰りにローソン行こうかな…」

 こんな調子で始まったゴージャスな5人ライブを終えて楽屋に戻ると…
「えーっ?もしかして…ひなさん?」
「ひな先輩は見当たりませんが」
 れみがそう言うと、
「そうじゃなくて、前に似顔絵描いてくれたひなさん!」
「やっと会えましたね」
「熱は大丈夫?」
「ええ、もう元気ですよ。スマイルエレメンツなら、私も色違い持ってますよ」
「じゃ、念願のデュオライブ、間に合いましたね!」
「はい」
「せっかくだからデュオフレカ作りませんか?」

 そして、あみは可愛い絵柄で撮れたデュオフレカをひなさんと見ながら楽屋に戻ると、
「折角エレメンツ着てるので、今こそあのイリュージョンをやりたいので、ソロでいってきます!」

 そう。あみは今の気持ちをこのイリュージョンに乗せて、思い切り大きな声で叫んだ。
「みんなのおかげ!わたし、最高のプリマジスタになったよーーーーっ!」

今回のフォト
                                
今回のゲストさん

さっちゃん


クレアさん


えりささん


ゆうりさん


今回のソロ・デュオ・チームユニット

あみ&ぜんいつさん


あみ&ひよりん♪さん/ゆりさん&やまさん/しろさん&にじみんさん♪


FOXさん/れみ&あみ/とみ&いなりさん


ひなさん&あみ


あみ


参考:イベント関連画像
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