第32章 金色のプリンセス

「あら?」
 あみがおにぎりの棚の前で立ち止まった。
「あみ、どうしたの?」
 とみが訊く。別にランチの買い出しではないからおにぎりには今は用は無いはずだ。
「よく食べてる唐揚げのおにぎり、ウマ娘バージョンになってる」
「そう言えば、このファミマの入り口にウマ娘ののぼりが立ってましたね」
「このおにぎりの子、オグリキャップがモデルなんだね。昔、叔父さんの家に元ネタの競走馬のぬいぐるみがあったなぁ。クレーンゲームの景品って言ってた」
「それはそうと、お菓子三つ買うとクリアファイル貰えるみたいだよ」
「では、今日のおやつは対象の中から選びますか」
「あっカントリーマアムがある!この前、先輩の山陰土産に貰った白バラコーヒー味のカントリーマアム、すごくおいしかったなぁ」
「じゃ、カントリーマアムにしましょうか」
 そう言いながらカントリーマアムをかごに入れようとするれみにとみが待ったをかける。
「ちょっと高いけど、あたしはチョコまみれカントリーマアムがいい」
「わたしはどっちでもいい、ていうか、どうせ三つ買うなら両方買ってあと一つ何か買おうよ」
「だね。本当なら前に食べたチョコバナナもいいんだけど、さすがにそこまではないか」
「クリアファイル、裏表に一人ずつですが、七人目の裏が全員集合だから、これにしましょうか」
「うん!いちばん賑やかだもんね」

 三人はファミリーマートを出て、あみの部屋へと入って行った。テーブルの隅にガンプラが置いてある。
「随分たくさん作りましたね。色々なガンダム四つが盛り付けてあるんですね」
「へぇ、ガンダムと言っても色々あるんだね。で、なんでこの金色の子だけ変なポーズ?」
「金色だし、額の角みたいなのもないですね」
「あ、それは昨日ゴールデンハートバルーンでプリマジしたら、ザ・金色!って感じだったから、金色つながりでその百式にマイフォトと同じポーズさせて遊んでたんだ」
「百式…あ、確かに肩に漢字で「百」って書いてあるね。あ、これってシャアが乗ってたつだったっけ?」
「うん。クワトロって偽名で味方にいた時に乗ってたよ。でも、ここに飾ってるのは後番組の主役のダブルゼータガンダムだから、その時乗ってたのは別の人だよ」
「このガンダムが居るだけで、乗ってる人が違う設定になるのも面白いですね」
 れみがダブルゼータガンダムの頭を指でなでなでしながら感心したように言う。
「だね。このゼータなんて、前作は主人公が乗ってたけど、この時点では女の人が乗っているんだよ。それから、これ、飛行機みたいに変形するのを再現できるよ」
「えー、すごい!見たい見たい!」
 あみはとみのリクエストに応えて変形させようとするが、一旦バラバラにして組み立てるので意外と時間がかかる。
「あみ、汗かいてますよ。エアコン入れませんか」
「あ、暑いと思ったら入れるの忘れてたね」
 ようやく完成したウェイブライダー(飛行形態のゼータガンダム)をテーブルの真ん中に置いたまま、チョコまみれカントリーマアムを開封すると、周りのチョコが少し溶けていた。
「ははは、こう暑いとね…」
「でも、先週までよりちょっとマシかな。この前なんて熱中症アラートが県内全域に出てたもんね」
「高校野球中継で、ピッチャーが汗かきながら投げてる映像の横に赤枠で「熱中症アラート発表中」とか書いてあって、不要不急の外出を控えて涼しくしてしのぎましょうって出てるの、何だか説得力ないなって思った」
「でも、守備の間はクーラーのあるベンチにいる選手より、ずっと炎天下の応援団が大変だったみたいね」
「最近は盗撮対策で夏でも長袖のチアもいたそうですね」
「盗撮といえば、今度のプリマジの新曲の「gift」って、プリティーリズムではりんねさん横転とか振り付けに入れてたけど、真似するとスカートの中とか狙われるからやめた方がいいよね」
「そもそも、それ以前にあのフロートの上でやるのは危ないと思いますが」
「それもそうか…でも、衣装はどうするかな…りんねさんのコーデの復刻は限定なんだよね。たまたま、ジェニーちゃんのコラボのチケット持ってるからそれにするかな」
「着せ替えのジェニーちゃん?」
「うん。前にリカちゃんのもあったけど、今度のは千鳥格子柄のスカートで、街中で着てても違和感ないやつなんだ」
「そうなんですね。バービーの映画も話題になってるみたいですし、着せ替え人形が一つのブームなんでしょうかね」
「でも、バービーの映画って、原爆発明の映画とのコラ、いわゆるバーベンハイマー画像騒ぎとかで話題だし、ちょっと違うかも」
「確かに…」
 この日はメンバー三人でそんな話をして解散した。

 翌日、あみはチケットでハッシュタグジェニーライブを見に行った。れもん、まつり、みるきが色違いのジェニーコラボの服でステージをしており、物販でれもんが着ている色のコーデが手に入る。
 いざ実物を見ると、人形がモデルのせいか、靴が樹脂の質感だったり、ヘアアクセの宝石が巨大だったりする。もちろん宝石はイミテーションだ。
「この宝石が実物だったら大変だろうな…」
 あみは買ったコーデでgiftを踊った。運試しに限定コースを選んだらシューズが手に入った。
「げ…これは限定で掘れってこと?」
 あみは思わずXで呟いたらMAGI☆Pさんから応援リプが来た。
「あわわ、自ら後へ引けなくしてしまった!」
 とはいえ、今回の限定は運よくあっさりと揃い、無時にりんねコーデでgiftを踊ることが出来た。
 あみが満足そうに楽屋に戻ると、初めて見るプリマジスタが居て、あみの方へ向き直った。
「お疲れ様です。今のプリマジ見てました」
「え?あ、どうも…ありがとうございます」
「あみさん、ですよね」
「はい」
「私はぜんいつといいます。一緒にプリマジしたい人募集中ってのを見かけたので」
 あみは思い出した。そういえば、Xの固定ツイートにそんな事を書いてた気がする。
「それで声かけてくださったんですか!嬉しいです。ぜんいつさん!」
 そういえば、この人の髪色とか、「鬼滅の刃」の雷の呼吸の使い手の剣士、我妻善逸に似てるな…名前が一緒だから合わせてるのか、逆に似てるから芸名にしてるのか、どっちだろうか?
「私も作品再現コーデということで、スイートハニーキラッとコーデの色違いを用意しました」
「ということは、わたしはこのままでいいのかな」
「いいと思いますよ。では、よろしくお願いします」
 思いがけずのオファーを受けてのライブだったが、経験の少ない新イリュージョンのマナマナエンゲージを無事成功させることも出来、お互い満足のいくプリマジとなったのだった。

 翌週、あみは今週のコーデをチェックして、とらいあんぐる☆ARTのメンバーでのプリマジのプランを決めた。
「今回は、以前のディッパーダンクレープのタイアップのコーデの色違いだから、あの2色と合わせて色違いライブにしようと思うんだ」
「いいんじゃないですか」
 そして、エントリーをしようとして、とみがプロフカードを見て表情が変わった。
「げっ…!期限切れてる!」
 とみはプレミアム会員のため、30日で期限が切れるのだ。
「ごめん、今日は見学だけにしておくね」
「じゃ、新旧デュオですかね」
 あみはとりあえずコーデを買って試着してみた。みゃむをイメージしたカラーリングだ。
「そういえば、クレープキャンペーンの時のみゃむちゃん、すごく可愛かったなぁ」
 あみはそう思った時にひらめいた。
「みゃむちゃん!」
「何?どうした?」
「このコーデでセンターお願い!」
「このみゃむ様に不可能はないんだぞ」
「でしょでしょ、ぜひ!」
 みゃむはコーデに着替えた。
「やっぱりカワイイ!」
「そりゃ、みゃむ様のためのコーデみたいなものだから、当たり前なんだぞ!」
「これで私たちが色違いを着れば3色プリマジできますね」
 結果、みゃむはアンコールステージまでこなしたのだった。
 そして、この時、チェックセットアップピンクが揃った。
 あみがコーデを見ていると、初音さんが通りかかった。
「あ、こんにちは。そのコーデ可愛いですよね」
「うん!さっそく使いたいと思ってたところです」
 あみがそう言うと、横から声がした。
「では、バックダンサーとしてコーデメイツはいかがですか?」
 初めて見るプリマジスタだった。
「Synchro-Nizical所属のルミナリアです!よろしく!」
「そのユニット、どこかで聞いたような…」
「MAGI☆Pとメモルミデンがお世話になったと思います」
「あっ、そのグループの方でしたか」
「メンバーというか、いわゆる発起人ってやつです。私たちニジクロは私とMAGI☆Pでメンバーを集めて結成したんです」
「なるほど。コーデメイツということは、今、うちのとみもコーデ持ってるんですけど、会員証更新手続中なんですよね」
「あ、私もコーデありますよ」
 困っているあみに初音さんが助け舟を出す。
「いいですか?」
「コーデメイツ役でお役に立てて何よりです」
 初音さんはにっこり微笑むとコーデの用意を始めた。こうして、あみのRコーデにしては豪華すぎるお披露目ライブとなったのだった。

 やがて、とみの会員更新が終わった。
「おかえり」
「お待たせ!じゃ、さっそくだけど、きらめきのプリンセスコレクションに挑戦しようよ!」
「そうですね。コーデはどうしましょうか?」
「この前のあみの百式のイメージが強いから、全員金色のコーデにしたらどうかなと思うんだけど」
「ゴージャスでいいかも!さっそく挑戦しよう!」
 3人は受付を済ませてスタジオに入ると、ひめめが降りてきた。
「わ〜!ここがプリマジスタジオ!ステキな場所ね!おしゃれプリンセスがたくさんいるわ!」
「ひめめ、ステージに挑戦するね!」
「今日のステージではきらめきのプリンセスコーデがゲットできるわ!フルコーデを集めてわたしと一緒に踊りましょう!!」

 とみがセンターでステージを演じ、無時、きらめきのプリンセスコーデが揃った。
「これで、3つの大会プリンセスコーデが揃いましたね」
「うん…忘れかけてる気もするけど、ファイナルライブのフィナーレで着るんだよね」
「そうだね。まだ日があると思ってたけど、あと1か月ちょっとでわたしたちのユニット、解散なんだよね…」
 コーデゲットは嬉しいはずなのに、なんとなくしんみりした空気になる3人なのだった。


今回のフォト
                                             
今回のソロ・デュオ・チームユニット

あみ


まつり&れもん&みるき


あみ


あみ


あみ&ぜんいつさん


あみ&みゃむ&れみ


初音さん&あみ&ルミナリアさん


あみ&とみ&れみ




参考:金のマイキャラvsガンプラ
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