第30章 Xとプリマジとわたし(後編)
その日。あみはとみとランチをする予定だったが、どういうわけか、朝早く目が覚めてしまった。
「そうそう。それなら!」
あみはリサイクルショップで買った旧キットのギャンの箱を開けた。すると、中の袋はホッチキス止めで接着剤のチューブが入っている。なんと、復刻ではなく当時もののようだ。
「わぁ、骨董好きな人のやつだけにこれも骨董品だったんだ」
そして、盾のパーツの裏の刻印を見ると1981年とある。
「この子、40年以上も作ってもらう日を待ち続けてたんだ…」
あみはそう思うと、なんだか急にそのキットが愛おしくなった。
「よし、ちゃんと塗装して、接着剤も新しいので綺麗に作ってあげる!」
あみはプラモデル屋に道具を買いに出かけたのだが、その途中、プリマジの前でプリチャンでフォロチケを交換した人を見かけた。あの人は確か…
「あの、はぁるる♪さん?」
「え、そうですが…」
「ご無沙汰してます!以前フォロチケを交換したあみです」
「ああ、そういえば」
「はぁるる♪さんもプリマジスタだったんですか?」
「ええ、まぁ」
「折角ですからデュオしましょう!」
あみは半ば強引にはぁるる♪さんとデュオをしたのだった。
「ありがとうございました!」
そこであみが時計を見て、
「やば!とみとの待ち合わせ、ギリギリだ!」
あみが集合場所に着くと、ちょうどとみも到着したところだった。
「ちょうどだね」
「どこで食べようか」
「暑いし、ざる蕎麦でも食べようか」
二人は蕎麦屋へ行くと臨時休業だった。
「残念」
地下街にある蕎麦屋を諦め、地上に出ると、四つ角に吉野家がある。
「何となく牛丼の気分になった」
と、見ると、その建物が工事中。
「確か信号渡って駅の反対側に松屋あったから、牛めしでリベンジできるか」
「味噌汁も付いてるし」
二人は食券を買い、カウンターに並んで座った。あみは牛めしだったが、とみは気が変わったらしくカルビ焼肉定食を選んでいた。
肉が焼けるまでの雑談。
「そうそう。さっき、久しぶりな人とプリマジしたんだ」
あみはツイッターののタイムラインを繰りながら、
「この人」
「え?サッカー観戦のツイート?」
「まぁ、その次のわたしのツイートもガンプラだし、確かに全然プリマジにかすってないね」
まぁ、そんな事もある。
と、あみととみ、同時にメッセージの通知が来た。
「同時ってことはれみの同報?」
言いながらとみがメッセージを開ける。
「違うみたいね。こくてんさんから、この前の埋め合わせのデュオのお誘いだ」
あみも
「あら、違うわ。白くんからだ」
二人は結局食事だけして解散し、それぞれお誘いの相手に会いに行った。
「初音や八重をエスコートして、結構サマになるようになってね。たまには男のエスコートで踊ってみてはどうかなと思って誘ってみたんだけど」
「で、遠征試合って感じですか」
「この前、フィーアさんのエスコートで踊ってるのを見て、いいなって思ったのでね」
「ふふ、ご指名、光栄です」
あみは少々おどけた調子で返し、二人でステージに向かった。
同時刻。とみはこくてんさんと会っていた。
「この前は協力ありがとうございました」
「いえいえ。お役に立てて、ていうかあみの思いつき企画に協力してもらってこっちこそ感謝ですよ」
「今回はミックスコーデにしてみたんですよ。使い勝手がいいアイテムを色々考えて」
「なるほど。いい感じですね!じゃ、あたしも何か考えますね」
とみは手持ちのコーデをあれこれ組み合わせて、
「こんな感じでどうですか?」
「とっても可愛いですね〜!!!」
「ありがとう!じゃあ、始めましょうか」
そして、あみととみ、二人ともがそれぞれのデュオを楽しんで解散した後、ふとメッセージを確認と、別の場所で同時に同じことを叫んだ。
「げっ、お誘いメッセージの直前にれみから同報来てる?」
同時のは本当にれみからのチームの作戦会議名目の食事会の招集で、立て続けにそれぞれにデュオのお誘いが来ていたのだった。
「なるほどね。それで二人ともなかなか返事がなかったんですね。あと3分遅かったら、私は帰ってましたよ」
メッセージを見て、慌ててれみのところに来た二人から事情を聴き、れみはあきれた様に言った。
「ごめんごめん」
「で、次の私たちのライブだけど、どうしますか?」
あみがスマホを出しながら提案する。
「これ見て」
あみが出したのはリーメルさんのツイートだった。
「これって…」
壊れたヘアアクセの写真だった。
「かなり傷んだ状態で捨てられてたのを修理したら、無性に使いたくなったんだって」
「確か、グミのウエディングコレクションのやつだよね」
「でも、なんとかコーデも手に入れたから、今度使いたいって書いてあるの」
「なるほど。それでゲストに招くってこと?」
「うん!わたしもこの前、メモリージュエルアメジスト揃って使いたいと思ってたし」
「そういえば、くじの時は誕生石のアメジストが出ずに持ってる初音さんをゲストにしたんでしたね。誕生石リベンジですか」
「リーメルさんのも紫系だし、紫限定ライブってのはどうかなと思って」
「いいんじゃない?」
とみは即答であみの提案を飲む。
「でも、4人曲ってないからどうしますか」
「紫のコーデといえば、みか♪さんがよく着てるし、わたしから誘ってみるよ」
こうして、紫ライブの企画がまとまった。
この時あみはプラモ屋に寄ることを忘れていることさえ忘れていた。
リーメルさんは話をすると大喜びで承諾してくれた。みか♪さんも
「みんなで紫コーデ?楽しそうですね!」
すんなりOKしてくれた。
そして、ライブの集合場所。
「じゃ、今日はよろしくお願いします!」
「お願いします!」
「何だか、私が修理したアクセからこんな企画を…」
リーメルさんが言いかけて、
「しれっと八重もおる…」
その場に八重さんがアメジストシンデレラコーデを着て立っている。
「このコーデも要るかなと思って」
「ありがとう!楽しくなりそう!」
「そういえば、リーメルさんのアクセ、どこを修理したか判らないくらい綺麗に直りましたね」
「壊れてたんですか?」
みか♪さんが驚いたように訊く。
「そういえば、わたしも昔、おとめマーガレットブルーのアクセがなくて、ダブったレッドのアクセをリペイントした事あったな」
「そうなの?あみはプラモデルとか作るから、そういうの得意っぽいけど」
とみが横から訊く。
「うん。でも、後でちゃんとしたの手に入ったからもう使ってないけどね」
「そういえば、以前あみさんとおとめマーガレット合わせ、やりましたね」
「あの時もみか♪さんが紫でしたね」
「そうでしたね」
「じゃ、そろそろステージに向かいましょう」
わちゃわちゃしていた状況をれみがまとめる。
さぁ、紫ライブの始まりだ。
今回のフォト
今回のデュオ・チームユニット
はぁるる♪さん&あみ
白くん&あみ
とみ&こくてんさん
あみ&八重さん/れみ&リーメルさん/とみ&みか♪さん
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