第22章 ひめめとひめめ?

「あれ?二人、色違いペアルック?」
 とみが驚いたように言った。待ち合わせ場所に現れたあみとれみは色は違うがほぼペアルックの私服だったのだ。
「まぁ、一緒に生活したら、パターンも似てくるんですかね」
「一緒?」
 れみの発言にとみが聞き返す。
「わたしとれみは前に住み込みバイトしてたことがあって、寮でルームメイトだったんだよね」
 れみではなくあみが答えた。
「え?二人って一緒に住んでたことあるんだ…まさか、キスとかする仲だったりして?」
 とみの冗談に、あみとれみは
「ふふっ」
 悪戯っぽく笑いながら目配せをする。
「最近、認める法律作るとか話題だけど、ま、まさか…」

 ちゅっ

 二人は同時にとみの両頬に軽くキスをしたのだった。
「わわわーーーっ!何を?」
「その手のネタにはこう返さないと」
「ね!」
 冗談への返しも見事なコンビネーションだった。
「どうしたんですか、とみ?顔が真っ赤ですよ」
「赤くもなるわーっ!」

 相変わらず、変なテンションで盛り上がっていると、声が聞こえてきた。
「ようこそプリンセスガーデンへ!わたしはひめめ!会えてうれしいわ!」
 ひめめの声だった。
「はじまりのプリンセスコレクションに来てくれてどうもありがとう!今日のステージでははじまりのプリンセスコーデがゲットできるわ!フルコーデを集めて素敵なプリマジスタを目指しましょう!」

 三人が声の聞こえたところを覗くと、そこにあったのは…
「え?なんでまた?」
 解放したはずなのになぜか再び水晶化したクリスタル状態のひめめが立っていた。

「あら?」
 横からひょっこりと生身のひめめが出てきた。
「あみでしたっけ。この前一緒にライブしましたね」
「うん…ていうか、これは何?」
「これ、魔法で作った人形!よく出来てるでしょ」
「確かにリアルですが、どうしてこれを?」
「私がクリスタルの中で眠っている間にあった大会…」
「あ、遠くて参加できなかったやつだ」
「会場が少なく、あみ達のように会場に行けなかったり、行けても人数が多くて抽選に外れたりした人も多かったから、今度もう一度やることになったんだけど…」
「ふむふむ」
「当時の雰囲気を出すために、私が直接景品を渡すのじゃなく、クリスタル像から渡せるようにしようと思ってね」
「それで、大会用の台詞を録音してたって事?」
「その通りなの。もし良かったら、今からやる最終テスト付き合ってくれないかしら」
「いいけど、何をすればいいの?」
「私が試しにステージに立つけど、課題曲が三人曲なので、二人一緒にステージに立ってほしいの」
「なるほど。じゃ、たまたまペアルックの私達がバックにつきましょう」
 れみが提案する。

 そして、ステージが終わると、クリスタルひめめが降りてくる。ひな壇プリマジスタと同じTシャツのひめめがクリスタルひめめから景品を受け取るのは何とも不思議な光景だった。ともあれ、最終テストはバッチリだった。
「ありがとう。ぜひ本番にも参加してね!」

 そして、大会当時。
「今回はとみがセンターだね」
「あたしでいいの?」
「私たちはひめめと一度ステージを経験してますからね」
「そうそう。わたし達は引き立て役になるから、とみに任せるよ」
「じゃ、ちょうどフレンドポイントで手に入れたプリンセスハッピーコーデがあるから、それで行こうかな」

 とみがステージに向かおうとすると、あみたちは去年のコーデチェンジ前のピンクの服を着ている。
「久しぶりに着たかも」
「とみがデビューするころには絶滅してたもんね」
「引き立てるって…まさか旧コーデまで用意するとは…」
 冗談のようなコーデの組み合わせでも、一応とみ達は無事景品をゲットできたのだった。

「やはり、私たちが活動出来なくなったら、とみがメインになるから、今回のはいい経験になったんじゃないかな」
「そうですね」
「そういえば、二人は来月くらいに面接とかあるんだっけ?」
「うん。これから少しずつ忙しくなるかもね」
「卒業ライブフェスの告知どうします?やはり、二人の進路が確定してからですよね」
「だね。面接落ちたら活動休止しないわけだし」
「とみ、ちょっとそれ期待してない?」
「正直複雑かな…二人を応援したいけど、一緒にいたいと思うあたしもいるわけで」
「活動休止発表も慎重にしないとね。最近はちょっとしたことで炎上するしね」
「回転寿司屋さんで醤油舐めたりしないよ?」
「そういう明らかにわざと炎上している迷惑動画じゃなくても、今、恋愛リアリティーショーに出てる女優さん、めちゃ炎上してるみたいだし」
「そうなんですか?」
「うん。その人、前半目立たなかったんだけど、終盤近くに焦ってモデルの子の顔をケガさせちゃって炎上してる」
「そうなんだ。とみってその手の番組もチェックしてるんだね」
「普段は見ないんだけど、この前見たドラマで気になった俳優さんが出てたから」
「へぇ、とみの推し?」
「ていうか、最初は昔ブレイクした子役だった女優さんが久しぶりに主演だからなんとなく見てたんだけど」
「あ、知ってる!元「重曹を舐める子役」の女優さん主演のやつで、最終回だけすごく良かったやつだよね!」
「あみ、それ「10秒で泣ける子役」を誰かが聞き間違えたネタです。何でそっちで覚えてるんですか?」
「あ、もしかして、最終回の出てきたストーカーの俳優さん?」
「そうそう。あのドラマの中で、演技が一番だと思った」
「確かに凄かったよね。あの演技。彼氏に殴られた時、本気でスカっとしたし」
「確かに、殴られるのは難しいですよね。ヒーローショーでも、ヒーローがかっこよく見えるように倒されるから、ヒラの戦闘員を一番ベテランの人が演じることがよくあるそうですし」
「話、脱線したけど、炎上しないように告知しないとね」
「だね」

 そんな話をしたせいか、翌日になっても、あみは、どのように一線から綺麗に退けるのかを考えていた。そして、何の気なしに、数年前に入って美味しかったカレーうどんの店に入ろうとすると…
「あれ?定食屋さんに変わってる?」
 あみは、それはそれでいいかと店に入り、チキンカツ定食を注文した。

 あみがチキンカツ定食を食べていると、カウンターの反対側に並んでいた3人組の一人とめが合った。
「あれ?あみさん?」
「初音さん!偶然ですね」
 3人が食べていた定食はチキンカツの代わりに鰺フライ、豚肉炒め、鶏の揚物の3種盛りになっていた。
「わぁ、それもおいしそう!」
 あみが壁のメニューを見ると、一番上の店の名前を冠した定食のようだ。人気メニューが少しずつ楽しめるということのようだ。
「あみさん、この子とは初めましてですよね」
 初音さんの隣で八重さんが言う。その奥にいるのは白くんではなかった。
「リーメルといいます。よろしく」
「私はあみ。よろしくね!」
「あ、そうそう」
 八重さんが初音さんに、
「あみさんに相談してみたら?」
 初音さんは鞄から髪型の載った雑誌を出し、
「プリティーリズムレインボーライブ10周年で、劇中のセブンスコーデが出たじゃないですか」
「うん。わたしは持ってないけど」
「あれが手に入ったから、髪型変えようと思ったんですけど、どっちが似合うと思いますか?」
「んー、そうだなぁ…こっちの髪型が似合いそうかな?」
「ありがとうございます!じゃ、この後髪型セットしてきます!そしたらデュオしましょう!」
「じゃ、わたしは…プリティーリズムって、リアルクローズの私服をコーディネートしてスケートのジャンプで披露するから、手持ちの私服アイテムで…こんなミックスコーデはどうかな?」
「確かにカジュアル系も多いからぴったりかも」
「じゃ、あみさん。初音が髪をセットしている間に私たちとプリマジします?」
「いいですよ。じゃ、今週のコーデまだ買ってないし…って、シチューのネタコーデ?」
「いいじゃないですか。私とリーメルでマナマナ服着て「シチューを囲むマナマナズ」って、なんか楽しそうですよ」
「じゃ、それ、やっちゃいますか」

 うーむ、この様子だと、暫くは告知は考えず、ステージを目いっぱい楽しむって事になりそうかな、と思うあみなのだった。


今回のフォト
                  
今回のデュオ・チームユニット

れみ&ひめめ&あみ


あみ&とみ&れみ


リーメルさん&あみ&八重さん


初音さん&あみ


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