第6章 チーム結成!コーデメイツを解放せよ!

 あみが歩いていると、向こうからとみが歩いて来るのが見えた。
「先輩!おはようございます!」
 とみはあみに気付くと、子犬のようにあみに駈け寄って挨拶をした。
「おはよう。とみちゃん。買い物?」
「大した用事じゃないんですけど、先輩もお買い物ですか?」
「まぁ、食料調達程度だけどね」
 とみはあみを上目使いに見上げながら、
「一緒にお買い物しませんか?」
 あみにとって、いままでにも後輩はいたが、ここまで「ザ・後輩」みたいな典型的な後輩は珍しい。あみの人柄の影響で、すぐに先輩後輩の垣根が崩壊するのだ。とみは小柄なこともあり、特に後輩っぽい。あみはとみのことを素直に可愛いと思った。
「どうしました?あたしの顔に何か付いてます?」
「ん、何でもないよ。一緒に行こうか」
「はいっ!」
 とみはにっこり微笑んであみの横に並んで歩調を合わせる。

 二人はショッピングモールに入った。入口には
「新型コロナワクチン集団接種会場はこちら」と書かれた立て看板があり、その奥には文具や小物を売る店がある。
「こっちの入り口から入るの初めてかも」
「普段は駅のほうから入りますよね」
 とみはそう言いながら、雑貨屋の店先に並んだキーホルダーに目をやる。
「最近は推し活とかって、推しのグッズ身に着けるのも流行ってるよね。とみちゃんの推しの子?」
 あみは、とみが見ているアクリルキーホルダーの写真を指さす。
「推しというよりは、模範…ですかね」
「確か、NHKの歌のコーナーで歌ってる子だよね。去年、スクールアイドルの全国大会で優勝した…リエラ、だっけ」
「はい。Liella!の桜小路きな子さん。この人、一昨年の大会で新設校ながら地区大会2位だった、それも、全国大会ダントツ優勝の学校と競り合ったメンバーの後輩として、真っ先に入部して、先輩のレベルに追いつくために猛特訓した人なんです。あたしも先輩たちに追いつけるよう頑張りたいですから」
「あ、それ、先月のドキュメンタリー番組で見た」
「先輩も見てたんですね!」
「あれ、毎年見てるよ。その前の大会がなかった年の同好会取り上げた時のも見た」
「確か、表情が出せないからって、顔文字の電光掲示板のお面付けてた子がいましたよね」
「ハンデを個性に変えるのもすごい事だよね。衣装は可愛いけど、素顔はどうかと思ったけど…」
「素顔もかわいいんですよね。お面付けるのもったいない」
「昭和の頃はWinkとかいう笑顔が無いのをウリにしたアイドルデュオがいたそうだけど」
「そうなんですか?」
「さて、そろそろ、スーパーの方へ行くか」
「ですね」

 二人はお菓子売り場で足を止めた。
「あっ、ライダーの新作出てる!猫とカボチャ熊買わなきゃ!げっ、鎧なしの方はパンダとコンパチか…けっこう出費痛いなぁ」
「先輩、特撮とかも見るんですね」
「特撮はれみも好きだから、前に主役と狸と牛を買ったんだ」
「あたしもコーデグミを買おうかな…」
「わたしもある程度揃ってるよ。でもグミ一周年コーデがアクセとかボトムスはあるけどシューズやトップスの片方は出てないんだ」

 二人は買い物を終えて店を出る。
「先輩!気になるからグミを開封してみたんですがことごとくグミ一周年です。シューズやトップスも出てます」
「そうなの?えっと、わたしの手持ちは…」
 あみははっとする。
「今持ってないわ。家、すぐそこだから一緒に家へ行こう」

「お邪魔します…」
 あみはとみを家に招き入れた。
「とりあえずお茶出すね」
 あみがお茶を用意する間、とみは部屋をぐるっと見た。テレビの横では緑色の狸型の仮面ライダーと槍を持った赤紫のロボットが戦うように飾ってある。
 棚の上には何故かセブンイレブンのロゴの入ったガンダムの両脇に狐と牛の仮面ライダーが立っている。
「あのロボットが敵なんですか」
「あ、あれは今やってるガンダムのライバルのモビルスーツ、ディランザのプラモデルだよ。ガンダムのパイロットの顔が狸に似てるってネットに書いてあったから、狸型の仮面ライダータイクーンと戦ってるんだ」
「ガンダムは棚の上にいるのに…」
「あ、あれはセブンイレブン限定の昔のガンダムだよ。今のガンダム、エアリアルは売り切れてて、メーカー通販の抽選販売当たってやっと来たんだけど、まだ完成してないから」
「なるほど」
「というわけで、今日のお茶菓子はコレだよ」
 あみが出したのはヤマザキエアリアル。コーンスナックで、今回のはチーズ味だ。
「ほら、期間限定ガンダムパッケージ!」
 ふと、とみが笑った。
「そんなに面白いかな?このパッケージの人があのプラモデルのに乗ってるんだけど」
「いえ、なんか、プリマジ以外の話も夢中で話す先輩、ちょっとカワイイって…あっ、し、失礼しましたっ!」
「別に怒らないって。逆に先輩って壁作らなくていいって判ってくれたかな?わたしもれみも、きな子さんみたいに練習が必要な先輩じゃないからね。さ、お菓子食べよう」
「いただきます。あ、結構チーズ効いてますね。おいしいです」
「ね。軽いからつい食べちゃうよね。この前買ったしお味も良かったんだ」
「へぇ…って、先輩!グミコーデの確認に戻ったんですよね」
「あ、そうだった!えっと…あっ、二色とも揃ってる!お茶終わったらデュオプリマジやりに行こう!もし、食べ物で冷蔵のものあったらうちの冷蔵庫に入れたらいいから」

 二人はプリマジに着くと、そこにあったものを見て、
「何これ…」
 ハート型の宝石のような殻の中に見たことのないコーデメイツが封印されている。
「これはハッピーとラッキーコーデメイツなんだぞ」
「SR以上のコーデを持って来てくれるチム」
 みゃむとチムムが説明してくれる。なんでも大量のワッチャを集めれば解放できるらしい。

 二人はグミ一周年コーデに着替えた。いつものハート型のグミやパッケージなどがデザインされており、背中には一周年ロゴがある。
「わたしはグレープ味」
「あたしがいちご味ですね!」

 二人のプリマジのワッチャでもまだまだ解放には足りないようだ。しかし、全国のプリマジスタがワッチャを送るため、ワッチャのゲージは少しづつ増え続けている。

 そして、次の休み日、あみの部屋。今度はとみだけでなくれみもいる。
「さて、今日は三人でユニットライブできますね」
「うん。それも、今日はスタジオ出演だから、フレンド紹介でやっと二人を呼べる!」
「そういえば、ワッチャを集めてコーデメイツを解放するんですよね」
「そこで、チームコーデでミックスを考えておいたよ」
 あみが示したコーデを見て、
「昭和のグループアイドルみたいだけど、逆に新鮮ですね、先輩!」
「あ、そうそう。とみ」
 あみはとみをはじめて「ちゃん」抜きで呼んだ。
「もう、チームメイトだから、わたし達のことも名前で呼んだらいいよ」
「わかりました、あみ…まだ、ちょっと違和感ありますけど」
「大丈夫、すぐ慣れるし」
「あの、せっかくだから、ユニット名とか、付けたらどうかな?」
 とみが提案する。
「そうですね。三人の頭文字がART、芸術ですから…」
 れみがそう言うと、
「三人だから、とらいあんぐる☆ARTとか?」
「あみにしてはまともなネーミングですね。以前のものを踏襲してとりぷる☆MIとか言い出すかと思いました」
「以前?」
「昔、私達とゆみ、まみって子達の四人で組んだことがあってね、「み」が付くから4−Miってユニットにしたことがあるんです」
「解散しちゃったんですか?」
「話せば長くなるから、また今度教えてあげるよ」
 あみが話を遮った。いきなり異世界に飛ばされた時のことを説明するのは大変だ。

 みゃむ達から声がかかって、あみは一足先にプリマジスタジオのステージに向かった。二人はフレンド紹介で登場だ。
 そして、チームコーデでプリマジ中継を行った。

「どうかな?ワッチャは集まったかな…」
 三人はゲージを見たが、あと少し足りない。
「残念!」
 すると、れみがふっふっふ…と笑う。
「こんなこともあろうかと、チェリークリームコーデを三色用意しておきましたよ」
「じゃ、れみをセンターでもう一曲!」
 とらいあんぐる☆ARTはフォーメーションを変えてもう一曲ライブした。
「あれ?コーデメイツが飛んでこない?」
 普段はひし形のマークに向かってコーデメイツが現れるのに、今回は大きめのひし形マークにコーデメイツがいきなり現れるのだ。
「そういえば、かんたん譜面ってのを間違って押した気がします」
「そうなんだ。余計に難しい気がするけどね」
 そう言いつつ曲が終わった。

 しかし、最後の最後にぱたのがカードをパスしようとしてもカードが来ない。
「あれ?どうしたんだべ?」
 なんと、カードが紙詰まりになって、カード生成システムが壊れてしまったのだ。
 タントちゃん達が飛んできて必死で修理する。

「ごめんなさい。直ったけど、そっきのワッチャが送れなかったから、ライブをもう一度お願いします」
 タントちゃんのリーダーが申し訳なさそうに謝る。
「ううん、もう一曲楽しめてラッキーです!」
 あみはそう言いながら、どこからともなくコーデカードを取り出す。
「ハッピーセーラーコーデ?」
「うん。とみ、小柄だから似合いそうだし、制服お揃いライブはユニットライブのお約束だからね!」
「あの…それって」
「そ。次はとみがセンターの番!」
「えええええええーーーーっ?!」

 相変わらずのあみの無茶振りで、とみがセンターになり、三曲目に入った。マナマナもぱたのからきゃろんにバトンタッチだ。

 そして、曲が終わると…

 ワッチャゲージが満タンになり、宝石の殻が砕け散り、コーデメイツが解放された!

「ね、とみ」
「えっ?」
「センターで偉業をやり切りましたね。おめでとうございます」
 とみの両側からあみとれみが声をかける。

 そして、それはとらいあんぐる☆ARTがチームとして完成した瞬間だった。


今回のフォト
                        
今回のデュオ・チームユニット

とみ&あみ


れみ&あみ&とみ


とみ&れみ&あみ


れみ&とみ&あみ


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