第5章 交わる道

 れみが休憩所で缶のミルクティーを飲みながらテレビを眺めていると、あみが入ってきた。
「ただいまー」
「おかえりなさい。もう、番組終わってニュースになってますよ」
 あみは自販機で自分のミルクティーを買いながらテレビを一瞥し、
「うーん。このニュース今日見るの3回目だね。最初はおおーってなったけど」
「さすがに朝からずっとやってますからね」
 画面ではサッカーワールドカップ一次リーグでの日本チームの活躍を伝えるニュースが繰り返し流れている。
「スポーツあまり見ないれみでも堂安選手や三苫選手の顔覚えてるくらいだもんね」
「で、どうでした?二回目の出演は?」
 あみはプリマジスタジオに出演して、帰ってきたのだった。
「まぁ、今回はクレアさんのフレンド紹介コーナーで出してもらった後はひな壇にいるだけだったけどね」
「確かに殆どはモブみたいなものでしたね」
「あ、でも楽屋でひな先輩に会ったよ」
「チムムのパートナーだし、陣中見舞いといったところですか」
「うん。それで、次わたしが出る時、フレンド紹介ででてくれることになったんだ。ひな先輩と一緒にいた雑誌モデルのめいさんもフレンドになってくれたし!でも、なかなかれみをフレンド紹介できないなぁ…」
「まぁ、私は別に紹介してもらいたいってわけでもないですけどね」

 収録の前日、あみはウォーミングアップを兼ねてプリマジをしようと出かけたら、喫茶コーナーでラヴィットさん達がお茶しながら話しているのを見かけた。ラヴィットさんの向かいは見覚えのあるメンバーの人だが、横にいるのは初めて見る人だ。なんとなく真剣に話している。
「こんにちは」
「あ、あみさん!」
 ラヴィットさんが微笑んで手を振る。
「何か真剣なお話ですか?」
「今度、Elements☆HeroinesのPV作ろうって打ち合わせをしてたんですよ」
 ラヴィットさんの向かいの、確かオーガマンさんが答える。
「近未来にまつりちゃん達がエレメンツ化して、以前のジェニファーみたいに暴走して、レジェンドプリマジスタがいなくなった世界にプリマジを復活させるべく…みたいな流れでElements☆Heroinesがステージに立つ…みたいなのを考えているんだけど」
 もう一人が説明してくれる。
「おお、かっこいい!えっと…」
「私?私はMAGI☆P。この子たちのプロデュースをしている者です」
「わたしはあみです」
「そういえば、あみさん、オーガマンとは色違いデュオ、まだやってないですよね」
「そうですね」
「まぁ、私は初めはプリマジに乗り気じゃなかったから、他のメンバーに比べてプリマジの回数も少なめなんですよ。だから、機会がなかったですね」
「じゃ、今やってはどうです?他の子達から話は聞いていたんですけど。場合によっては、PVのエキストラ頼んじゃうかもしれませんよ」
「じゃ、折角ですし、やりましょう!ステンドグラスコーデですよね」

「これで、全員と色違いライブ制覇ですね」
「あ、でもMAGI☆Pさんはプリマジはされないんですか?」
「ふっふっふ…」
 MAGI☆Pさんが立ち上がる。
「私とデュオのお誘いですか」
「よろしければ」
「満を持してラスボス登場…と行きたいところだけど、私自身、プリマジを実際に始めたのは最近なんですよね」
 MAGI☆Pさんは苦笑する。
「うちのプロデューサーに稽古つけてやってください」
 ラヴィットさんが笑いながら言う。
「とりあえず、プリマジチェックなら今持ってますが」
「じゃ、わたしはみゃむちゃん達のMC服で合わせようかな」

「お疲れ様でした」
「あ、エキストラ実技面接、どうでした?」
 あみは笑って最初のジョークの返しをする。
「本当にエキストラが必要になったら、声かけさせてもらうかも」
「その時はお願いしますね!それじゃ!」

 あみは楽し気に元の道に戻った。PV、面白いのが出来るといいね。そんな事を考えながら。

 そして、収録の日。
「ひな先輩、めいさん、今日はよろしくお願いします!」
「今日、ランウェイではこれ着てみようと思うんですけど」
「へぇ、ジェニファーのお気に入りの服の色違いじゃん?」
「緑の、わたしが着るとぱっと見、ジャージみたいになっちゃうんですよね」
「でも、ステージの時は衣装変えるよね?」
 めいさんが心配そうな声で訊く。確かに、二人とステージに立つには普段着っぽすぎる。
「もちろんです。グミで集めたワンダーランドピンクコーデにしようと思ってるんですけど」
「随分イメージ変わりそう。あ、そういえば、私、今、雑誌の企画でイメチェンやってみたってのをやるんだけど、今日の放送でそれをお披露目しちゃおうかな」
 めいさん、どんなイメチェンするんだろ?
「アタシだけ、何も変わらないけどいいの?」
「ひな先輩はイメージが固まってるからいいんですよ」
 放送が始まり、プリマジスタ入場が近づいた。そこであみが気付く。あみは三人手前に並んでいるプリマジスタに声をかけた。
「まみ☆さん?」
「あ、あみさんが出るんですね!今回私はモブですけど、がんばってくださいね」

 フレンド紹介ではめいさんもひな先輩と同じくスポーティーなコーデだ。あみがぱっと見ジャージな服の色違いなのである意味バランスが取れている。
 そして、プリマジ中継になると、めいさんはコーデも髪型も変わっていた。
「すごい!この短時間でイメチェンできるんですね!」
「タントちゃん達ががんばってくれるからね」
「ほら、二人とも!観客のみんなが待ってるじゃん。行くよ!」
 ひなの号令で三人はステージに飛び出した。

「ありがとうございました!」
「おつかれさま!」
 あみは先輩たちと別れて楽屋に戻りながら、さっきのライブで手に入れたコーデを眺めていた。
「それ、キルティングハートメロンですよね。あみちゃんに似合いそう!」
 帰り支度の手を止めて、まみ☆さんが話しかけてくる。
「ちょうど揃ったから。あ、まみさんも色違いでご一緒しましたよね」
「はい。みるきちゃんがオリジナルカラーで参加出来たら三人で色違いライブできそうですね」
「それ、素敵だね〜」
 話を聞いていたはにたんはそう言いながらふわふわと飛んで行った。
「まさか…」
 二人は顔を見合わせた。
「暫く待ちましょうか?」
「わたし、飲み物でも買ってきますね」
 二人でお茶しながら待つこと約半時間。予想通りはにたんがみるきを引っ張って戻ってきた。
「お誘いありがとだお。さっそくやるお!」

 なんだか、毎回、出演の後は延長戦してるな…

 あみはそう思いつつ色違いライブでステージに向かうのだった。

 ステージを終えて控室に戻り、解散した時、みるきに電話が入った。
「れもん?え、あみちゃん?今みるきの目の前にいるお?」
 みるきがあみに駆け寄り電話を渡す。
「れもんからだお」

「もしもし、あみですが」
「もしもし、あみ殿、れみ殿と一緒に時間取れないでござるか?」
「取れると思います」
「二人にぜひ会わせたいプリマジスタをスカウトしたのでござる!」
「ちょっと、れみに連絡取ってみますね」

 あみは自分の携帯でれみに連絡を取る。
「うん。ごめんね。ありがとう」

 一時間後、フレンドパークにあみとれみ、流れでついて来たみるきの前にれもんが現れた。
「急に申し訳ないでござる。こちら、拙者がスカウトしてきた新人のとみ殿でござる」
 小柄でよく日焼けしたショートカットの元気そうな女の子だ。
「は…はじめまして!とみと申します。あ、あの…よろしくお願いしますっ!」
 緊張した様子で頭を下げる。
「いや、そんな緊張しなくても…」
 まぁ、レジェンドデュオのミルキーレモンや、何故か照会される先輩を前にすると多少は仕方ないのかもしれないが。
「いや、名前といい、お二人と同じ誕生日といい、運命的なものを感じたでござる。ソロデビューの結果を見たでござるが、あみ殿のもとで磨けば光る原石だと感じたのでござるよ」
 れもんの紹介を聞いて、
「わたしがあみ。こっちがれみ。よろしくね。とみちゃんも2月生まれなんだ」
「あ、はい」
「じゃ、3人で一緒にプリマジしよう!出会った記念に!」
「えっ?」
 とみは思わず素っ頓狂な声を上げた。いきなり先輩たちとのライブ…でも、とみは既にれもんとのデュオを経験している。
「えっと、まつりちゃんとお揃いのフラワーパターンイエローがある程度揃ってるんですけど、ミックスでも大丈夫ですか?」
「あ、それなら3色フルコーデあるよ。とみちゃん、健康的な肌してるから、白のほうが映えるかも。れみは青が気に入ってるし、わたしが黄色で行こうか」

 あみはてきぱきとプリマジの準備を進めていく。
「れみ、とみちゃん、準備はいい?」
「OKです」
「よし、行こう!」

 新たなチームが誕生した瞬間だった。


今回のフォト
                  
今回のゲストさん

クレアさん


れもん


今回のデュオ・チームユニット

オーガマンさん&あみ


MAGI☆Pさん&あみ


ひな&あみ&めいさん


みるき&あみ&まみ☆さん


れみ&あみ&とみ


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