外伝・それから Part5 帰ってきた先輩?

「ねぇ、かなはどっちがいい?」
「私は…こっちかな。ていうか、これはまいに似合いそうだし」
「わたしも同意見かな。決まりだね」
 かなとまいはあみに貰った会員証用のオリジナルコーデ二着をどう着るかを話し合っていた。
「じゃ、これで会員証作ってペアライブしようよ」

 二人がライブを終えると、ゆみたちが待っていた。
「あれ?今からライブですか?」
 驚くかなにあいが答える。
「まぁね。二人も晴れてウチの正式メンバーになったことだし、五人で何か企画ライブでもしようと思ってね」
「さっきのプリたまでゲットしたコーデは?」
「このショーパン」
「プリティーリズムの復刻、ショーパンが多いから、ここにあるトップス、アクセ、シューズは共通で、ショーパンだけみんな変えるのはどうかな」
「題して、脚線美祭り…とか、れみなら言いそうである」
「というわけで、れみはいないけど、その脚線美祭りをやってみようか」
「曲は夏祭り?」
「あの曲、まだ使えたっけ?」
「まだ大丈夫みたいよ」

 こうして、新メンバーで色々ライブを企画したり、昔のように活動できるようになった頃。
「でも、まだやっていないことがあるんだよね」
 ゆみが切り出した。まみとあいも頷く。
「何ですか?」
 かながゆみに訊く。
「あたたたち二人、まだゲストさんとのセッションの経験ないでしょ?」
「確かに…」
 二人が加入してから、あまり頻繁にライブしていないこともあるが、身内だけでライブしていた。
「実は、こんなものを見つけたの」
 ゆみが手にしているものは、あみが出すはずだったわちゃわちゃ会の招待状だった。
「ここに、五通の手紙があるんだけど」
「一つだけ違うような…」
 まいが指摘する。確かに招待状に混ざって普通の手紙がある。
「本当だ。差出人は…とうかさん?あたしの面識のない人だなぁ」
 ゆみが手紙を見る。
「私の主催する大ライブ大会に参加表明いただきありがとうございます…って、あみ、申し込んだまま異世界へ帰ったのか…」
 やれやれ、あとで謝らないといけないかな…とゆみは溜息をつきながら、残りの招待状を並べた。
「みっち☆さん、くれあさん、にじのエルザさん、ほにまるさん。いずれもあみがゲストに招いた人たちよ」
「見たことある人もいます」
「二人にはこの四人をゲストにライブしてもらったらと思うんだ。わちゃわちゃ会のかわりにね」

 二人は招待状を持って撮影スタジオのある界隈へ向かった。
「あ、あの人、くれあさんじゃない?」
「だね。よし、行ってみよう」

「あの、すみません」
「えっと、何でしょう?」
 くれあさんは振り返って二人を見る。
「あの、私たち、あみの後輩なんですけど…」
「ああ、あみさんの!」
「わちゃわちゃ会の招待状があるみたいなんですが、彼女は元の世界に帰ったので…」
「らしいですね」
「代わりと言ってはなんですが、私たちと一緒にライブしていただけますか」
「私でよければいいですよ」
「ありがとうございます!」
 二人が頭を下げると、
「あ、ちょっと話が聞こえたんだけど…」
 横から声がかかる。
「あみさんとはこの前ご一緒したから、私あての招待状もあるかもしれないと思って」
「えっと、ほにまるさんですよね。あります!ほにまるさんもぜひご一緒願えませんか?」

「まさか、二人も協力してくれるなんて」
 まいが感動していると、反対方向へ歩いていく人の中にみっち☆さんを見つけた。
 まいは駆け寄って事情を話すと、みっち☆さんは、
「私は今日はコレしに来たんですけどね」
 みっち☆さんはひし形の札のようなものを取り出して言った。確かスイングとかいう、アイドル対決に使うものだったはず。
「そうですか…足止めしてすみませんでした」
 あやまろうとするまいに、
「でも、あみさんの後輩ちゃん達とのライブ、なかなか面白そうだし、参加させてもらいましょうか」
「いいんですか!ありがとうございます」

「こうなったら、最後の一人も探したいよね」
 そういうまいに、かなが、
「さすがに、エルザさんって東京にいるんでしょ?無理かな」
 そう言っていると、他のみんなが
「ツイッターのタイムラインに、エルザさんが神戸でラーメン食べるってツイート流れてるよ」

 そして、ラーメン屋の前。
「神戸に寄ってもあみさんいないし、つぼみちゃんに会えたらくらいに思ってたら、あみさんの後輩に会うとはね」
 エルザさんはそう言って、ライブ参加を快諾してくれた。

 こうして、あみが去った後、初めてのゲストライブが実現したのだった。

 数日後、まいが一人で休憩室にいると、あいが遊びに来た。
「ほい。差し入れ」
 低GIのカカオ分の多いチョコレートだ。
「ライブが減って、最近太り気味だから、太りにくくて肝臓とかにも優しいチョコにしたんだ。ちょっと苦いけど、慣れると美味しいよ」
「チョコ食べないという選択肢はないんだ…」
「あみが居た頃はライブ三昧だったから、お菓子もすごく食べたんだよね」
 二人がそんな話をしていると、
「久しぶり…って、随分人が少ないな…」
 誰かが入ってきた。あいが、
「あっ、確かホロスコープライブで会った…」
「僕はみぃ。覚えててくれたようだね。ゆみとまみはバイト中?」
 ジュエルオーディションの時のあみのチームメイトで、海外でダンスの修行をしていた人物だ。
 そのため、あいも一度しか会ったことがない。
「ええ」
「そちらは、はじめましてかな」
「はい。まいっていいます。友達のかなと二人で最近入りました」
「僕は二年前にここにいたんだけど、海外でコロナによるロックダウンとかあって、なかなか帰国できなくて」
「ということは、わたし達の先輩!」
「ここのメンバーは先輩とか全然気にしてないから、みぃでいいよ。てか、ふと思ったんだけど」
「?」
「この三人、全員英語の一人称だね」
「えっ?あい、まい、みぃ…本当だ」
「いっそ、ユニット組んでライブする?ダンスでお腹をすかせるとお菓子がおいしいよ」
「一人称ユニットライブ!やろうやろう!」

 その頃、空の上。
「どうやら、新たなクイーンを引き継げそうなメンバーが集まりつつあるようだね」
「ええ。この世界のプリズムの煌めきも少しずつ強くなり始めてるわ」
「クイーンの力に頼る時期ももうすぐ終わりかな」

 ソルルとルルナはそんな話をしながら、まいたちのライブを見下ろしていた。


今回のライブシーン
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