外伝・それから Part1 新しい出会い

「はぁ…」
「ゆみ、何回目の溜息よ…」
「まみもキャラ崩壊してるぞ…」

 いつもの休憩室。ゆみとまみは疲れた表情で向き合って座っていた。

 あみ達が元の世界に戻っていき、ここのバイトは二人になり、仕事は増える一方、まだコロナ禍による時短で配信スタジオも早く終わってしまう。
 現在、入荷コーデは過去10年の再販分で新規ではない。ただ、昔のコーデはリアルクローズ系も多く、ミックスしやすいこともあり、当初はゆみもまみも入手したコーデで組み合わせを考えて、一度私服ライブを配信して以来、新規のライブはできていない。
「再生数も悪くはないけど、あみがいた頃よりは少ないね」
「うーん、コメントもついてるけど」
「勝手に「レジェンド現地組」とか呼ばれてるよ」
 パグホール撃退の6人ライブを見て、いつの間にかユニット名が「レジェンド」になっていたのだった。誰が言い出したかは判らないが、いつの間にか定着しているようだ。

 その日、ゆみはつい、配信スタジオに向かっていた。
「知り合いもいないか…」
 その時、ふと目に入ったのは、デビューしようと準備している感じの二人組だった。

「思い出すなぁ。まみとデビューしようとした時のこと…」

 ゆみはほぼ無意識に二人の方へ向かった。
「やり方、わかりますか?」
「え、あ、多分…でも、ちょっと難しそうですね」
「じゃ、手伝おうか?」
「いいんですか?ありがとうございます!」

 そして、無事デビューライブを始めた新人を見て、ゆみは、
「なんか、あのコ達、楽しそう。なんか、そう…どうしてもあの二人を思い出しちゃうね」
 ゆみの瞳の奥で、二人にあみとれみの姿が重なっていた。

「おかげで初ライブ、無事にできました。ありがとうございました!」
「助かりました!」
 お礼を言いに来た二人にゆみは、
「楽しいでしょ?」
「ええ。もっと配信したいですね」
「じゃ、バイト探して、活動資金もためないと」
 二人の台詞を聞いて、ゆみは思わず、
「バイトなら、あたしの所へ来ない?ベテラン二人が抜けてキツいんだぁ…」
「あの…ありがたいお話、ありがとうございます。でも、その前に、失礼なこと訊いていいですか?」
 ツインテのあごにホクロのあるコが訊く。
「いいけど、どんな事?」
「レジェンドのゆみさんに似てるって言われません?」
「え?どうかな?てか、それ、あたし本人の事みたいだし」
「えっ、そうなんですか…って、えええーーーっ?!!!」
 二人の反応を見て、ゆみは笑いながら、
「あたしも初めてあみとれみに会った時は似たようなリアクションだったけど…普通に接してほしいな」
「そうなんですか?」
「そりゃ、うちも単なる、一介の草の根配信サークルだよ」
「一度一緒にライブ配信やってみる?」
「えっ?」
「セーラーボーイとセーラーガールのコーデがあるから、あたしはこれのミックスでセンターやるから、二人は好きな方で…って、名前、聞いてなかったよね?」
「まいです」
「私はかなです」
「よし、じゃ、まい、かな、行くよ!」

 ライブを終えて。
「ゆみさん、ありがとうございました」
「一生の思い出にしますね」

「…え?ちょっと待って!あたし、バイトの勧誘したんだけど?」
「あ、そうでした」
「ということは、また一緒にライブできるんですか?」
「もちろん!」

 こうして、あみたちの居なくなった休憩室メンバーに新しい仲間が加わったのだった。


今回のライブシーン
              
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