プロローグ
カタカタカタ…
お湯が沸いて、薬缶の蓋が湯気で動き出した。
れみが火を止めて、そのまま換気扇も止める。
「どれにしますか?」
れみが手にしているのは、お湯を注ぐだけのかんたんドリップコーヒーのお買い得パックだ。
「オリジナル、モカ、キリマンジャロ…わたしはモカにしようかな」
あみが一つを選ぶ。
「あたしはオリジナルブレンドにしよう」
ゆみがオリジナルブレンドのパックを取りながら、
「まみはどれでもいいよね」
「だね」
あみも追い打ちをかける。
「ひどーい!我にも選ぶ権利というものが…」
「まぁ、まみは砂糖と牛乳をたくさん入れるから、どんな豆でもコーヒー牛乳になりますしね」
れみがとどめを刺す。
「うぐぅ…反論できないのである…苦いのダメなんだもん…」
ここはあみたちがバイトしているプリズムストーンの休憩室。
「それにしても、ちょっと寂しくなったね」
先月まではここには多い時には9人の仲間がいた。
大物アイドル、リングマリィの二人がブロードウェイ進出したり、デザイナーの虹ノ咲さんがイタリアへ行ったりしたのに触発されたのか、あみの姉のくみがみぃ、まどかと新生D.D.Tなるユニットを結成し、遠征の旅に出て行った。
そして、ゆうき達のバイトしているディアクラウンも、店長が変わり、寮が移転したため、ゆうきとさなえはそちらへ移ったのだった。
「でも、昔はあたしたち四人だけで楽しくやってたんだよね」
ゆみがそう言いながらテレビに目をやる。ニュースをやっている。
「これ、ちょっと怖いよね」
「ああ、クルーズ船で新種の肺炎が広がってるってやつ?」
「うん。気を付けないとね」
そんな話をしていると、次のニュースが入ってきた。
「へぇ、プリ☆チャンランド。遊園地ができるみたいだね」
「どこだろ…って、すぐそこだ!」
「本当だ!楽しみ〜」
しかし、この一見何の何の関係もない二つがまとめて影響するなんて、この時はだれも思っていなかった。
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