ねえ触ってよ 11











夢を見た
佐助が、泣きながら笑っていた
後ろを向いて歩き出す姿に手を伸ばしたけれど、
俺の手が佐助に届くことは無かった

「……佐助」

ずっと、側に居たのか?
お前を待つ俺の側に、お前はずっと居たのか?

「………っ」

頬を伝う冷たさに、喉を焼く熱さに、自分が泣いていることを知る

愛していると言えば笑った
嬉しいと泣いた
死にたくなかったと笑った
泣き笑いの顔で、さよならと言った

「……佐助」

夢でも、現実でも、何だっていい

佐助が会いに来てくれていたことが嬉しい
俺の未来の幸せを願ってくれたことが悲しい

何も気付けなかった自分が情けない

「……すまねぇ」

どんな想いで側に居たのだろう?
どんな想いで俺を見ていたのだろう?

みっともない所ばかりを見せてしまった

約束を守ろうとしてくれた佐助に、
見せたくも無い所ばかりを見せてしまった

「………っ!」

佐助は死んだ

もう二度と、ここに来ることは無いのだ

苦しくて苦しくて、悲しくて、寂しくて、いっそ狂ってしまいたい
それでも、前を向かなきゃならねぇ

死人にそれを教えられるとはな

「…………佐助っ」

それでも、今だけはどうか、
お前のことだけを想って泣かせて欲しい

きっときっと、約束を守ってみせるから

もう居ないお前のことを、今だけは想わせてくれ

本当に、心から愛していたんだ
なあ、佐助
まだこんなにも、お前を愛しているんだ






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