涙一粒 1











暑苦しい、喧しい、猪突猛進

真田に対して思うことはこれ位だ
言葉を選び間違えなければ、容易く駒になる存在
面倒なのはいつも側に居る忍だけだ

そう、思っていた

「毛利殿!こちらが某の美味と思う団子にござります!」

「……ふむ、悪くない」

「この饅頭も大変美味にござりますな!」

「当然だ、我が安芸一番の菓子屋の物よ!」

まさか二人で茶を飲む仲になるなどとは、我の計算には無い
いつもいつもニコニコと能天気に笑う真田に懐かれるなど、
我にとっても思いも寄らないことであるのだ

同じ西軍に属することになり、一人で茶を飲んでいる所に鉢合わせ、
我の食す甘味をじっと見詰めていたかと思うと、それから何故か甘味仲間と認定された
我とて甘味は嫌いではない
だがしかし、こうまで懐かれるとは思ってもいなかった

初めのうちは忍が警戒していちいち側に来ていたが、いつしかそれも無くなった
今では真田が誘っても呆れた顔で忙しいと逃げて行く

『貴様の仕事は主を守ることが第一ではないのか?』

あまりに喧しい真田と二人にされることを腹立たしく思い、忍にそう言ったことがある
驚いた顔をして、ヘラリと笑い、忍はやれやれと肩を竦めた

『しょーがないでしょ、その主があんたを気に入ってんだからさぁ
俺様だってあんたに近付いて欲しくなんかないさ
でもまぁ、あんたも旦那に危害加える気無さそうだし、いっかなーって思ってね』

それだけ言うと、忍は仕事があるとどこかへ行ってしまった

呆れた
苛々と頭を抱えた
それでも、その後我を探しに来た真田の誘いを断ろうとは思わなかった

「毛利殿、餡とみたらしならばどちらが「餡」」

「某は「みたらしであろう?知っておるわ」……」

茶をすすり、燦々と輝く日輪を眺める
ああ、何と言う至福だろう

「真田、我は大福を好む」

「?知っておりますが…」

「明日は我のとっておきの大福をくれてやる」

「おお!楽しみでござる!」

「ふん、せいぜい期待しておけ」

「ならば某は羊羹「ならば煉羊羹にしろ」…」

「某とてっ、毛利殿の好みは把握しております!」

頬を赤く染め、拗ねたように叫ぶ真田に笑ってしまう

悪くない、と思う
嗜好の合う者と、好きな物を語るなど今までに無い経験だ
一人でゆるりと時を過ごすことが至高だと思っていた
それでも、喧しく笑い話す真田とのこんな時間を、好ましく思う

もっと早くに出会えていたら、などとそんなことを考えたりもする

「…貴様の舌は信用に足る
明日の菓子も期待しておるぞ」

「おまかせくだされ!」

ずっと、我一人で構わないと思っていた
だが真田はそんな我の中に容易く滑り込み、ニコニコと笑うのだ

まるで日輪のように、我の内を温かく照らす光となるのだ






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