落ちて溺れて魅せられて
6
壁に寄りかかった背中が痛んで目が覚めた
腕の中には愛しい温度
ちゃんと起きているのか信じられなくて思わず頬をつねった
痛みを感じて夢じゃないと分かり、頬がゆるんだ
良かった、とため息を吐いた
「…三成」
三成の長い睫毛の影が頬に落ちるのを見詰めた
小生の腕の中ですやすやと寝息を立てる三成
ああもう!放したくなくなっちまうだろうが!
「……かん、べ?」
掠れた声で、寝ぼけた瞳で、三成が小生を呼ぶ
甘えるように胸元に顔を埋め、弱い力で着流しを握り締める
それだけで、この胸は甘く苦しく締め付けられる
そんな小生の胸の内を、きっとお前さんは知らんだろう
「おはようさん」
「…ああ」
寝ぼけた顔で目を擦る三成に口付けを落とす
数度瞬き、今度は三成から口付けをされる
「ん…」
「っ、おいおい、そんなに煽られちゃあ止められんぞ?」
「ふっ、なら止めておく」
「…生殺しとは、お前さんは酷い奴だ」
二人で額をつけ笑い合う
まるで恋仲のような甘ったるさが今はこの上なく喜ばしい
「私はもう行く
……夜にまた来る」
「ああ、小生はここから出られやしないんだ
大人しく待っといてやるさ、凶王様よ」
ヘラヘラと軽口を叩きながらも、
遠ざかる背中にどうしようもない喪失感を覚える
三成が見えなくなるまで見送って、深い深いため息を吐く
「…昨日の小生はどうかしてた」
朝まで一緒に居て欲しいなんて、そんなことが許されると思わなかった
それが許されたら、一層手放しがたくなると分かっていたというのに
それでも、どうしたって離れたくなかった
「………畜生、小生は色事には向いてないんだよっ!」
一人で呟く悪態も、聞く者が居なければひどく虚しいのだ
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