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「おい、キスをするぞ」

「……はぁ?」

俺の上にまたがるこの男は誰だろうとか、
鍵かけたよな、変質者?だとか、
なに言ってんだこいつ、頭おかしいんじゃねぇの?とか、
思うことは多々あるが、とりあえず眠い。

バイト先の店で棚卸しが終わって帰ってきたのは終電で、
疲れ果ててシャワーを浴びてそのまま眠ってしまったのは覚えている。

窓から入る月の光がやけに明るくて、
帰り道に見上げた空に大きな満月が浮かんでいたのを思い出した。

その光に照らされた男の顔はえらく整っているくせに、抜き身の刀を彷彿とさせる刺々しさだ。
肌は白いを通り越して血色が悪い。
こいつちゃんと寝てんのか?
それよりすげえ軽いけど飯食ってんのか?
とか思いながらも、やっぱり何よりもまず眠気が勝った。

「だからキスを」

「……あー、おう、後でな」

男の言葉を聞き流しながら目を閉じる。
おい、起きろとか男の声が聞こえるが眠りを妨げる程ではない。

変な夢だよなぁと思いながら意識は闇に溶けた。






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