手記 1











北条を出て行く当ても無く歩いていたら、
石田三成に拾われた
小太郎と名前を貰った
大谷吉継と徳川家康に会った
風呂に入れられた
温かい湯が気持ちよかった
柔らかい布で拭いてもらった
とても心地良かった
石田三成と同じ布団で眠った
温かくて安心した
初めての感情ばかりで戸惑う
でも、悪くないと思った


石田三成に散歩に連れ出された
「迷ったら動くな、私が探しに行く」と言っていた
少し微笑んでいるように見えた
何も温かいものに触っていないのに、
その顔を見ていたら温かいと思った
気が付いたら尻尾を振っていた
なんだか体中ふわふわしていた
よく分からない感情が増えていく
どうすればいいか分からない
とりあえず、頭を撫でられるのは気持いいことだと知った


石田三成は仕事が忙しいらしい
机に向かうばかりで構ってくれない
寒いと思った
空気になったような気がした
俺の姿が見えなくなったのかと思った
足元に擦り寄ったら背中を撫でてくれた
良かった、まだ俺は見えているらしい
そのまま目を閉じていたら眠ってしまった
起きたら抱きしめられていた
起こさないように布団を掛けた
隣に潜り込んだらやはり温かかった


櫛を入れてもらった
秀吉様、半兵衛様、刑部、
たくさんの人の話をしてくれた
たくさんたくさん撫でて貰った
優しく抱きしめてもらった
好きだと言ってくれた
好きとは何だろう
よく分からなかった
だが、撫でられるのは好きだ
温かくなる
そういうことなのだろうか?
人の感情はやはりよく分からない


石田三成と俺の関係は何だろう
雇われている訳では無い
そもそも今の俺は犬だ
ならば飼い主と飼い犬ということだろうか
主と呼びたい
だが、俺は忍だ
石田三成はそれを知らない
俺が風魔小太郎だと知ったら驚くだろうか
もう共に眠ることは出来なくなるのだろうか
それは嫌だと思う
何故嫌なのか分からない
一緒に居られるなら犬のままでいいような気がする
何の不便も無い
たくさん話をしてくれる
撫でて、抱きしめて、好きだと言ってくれる
それでいいと思う
今を無くしたくないと思う
俺は間違っているんだろうか?
よく分からない
この感情も、俺には分からない






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