犬と私の一つの約束
10
朦朧とする主を連れて町へ出た
石を投げられた
出て行けと罵られた
他の町でも扱いはそう変わらなかった
主を連れて山へ入った
傷付いた主の手当をした
主はずっと微笑んでいた
飯を作った
薬を作った
主と一緒なら、それで良かった
主はよくうなされた
夜中に泣きながら秀吉様、と口にする
抱きしめて、背を撫でていればまた安らかな寝息を立てる
主が好きだと言ってくれる
幸せそうに笑い、擦り寄ってくる
昔主にしてもらったように、抱きしめた
主を手に掛けた
動かない体を抱きしめて縋りついた
涙が止まらなかった
山の中に主を埋めた
夜になった
朝になった
何度も、夜と朝を往復した
夜になった
たくさんの星が降っていた
主にも見せたいと思った
もう空腹で動くことは出来なかった
主の墓を一撫でして、目を閉じた
(…きっときっと、来世ではお側に)
来世があるかは知らないけれど、
主がそう言っていたから、信じようと思った
『……お慕いしておりました、三成様』
こんな満ち足りた最後を迎えられるとは思っていなかった
幸せで、幸せで、涙が溢れた
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